空き家とは その定義について

不動産業界の最もホットな話題は、銀座の一等地の地価がバブル期の価格を超えたことなんかではなく「空き家問題」なのかもしれません。

空き家問題は今、日本経済の大きなお荷物になり、国と地方自治体がタッグを組んで対策に乗り出すほどです。
しかし行政や税制における「空き家の定義とは?」とあらためて問われると、正確に答えられる人は案外少ないのです。

もしあなたが空き家不動産のオーナーで、空き家のことを「ただ単に今現在人が住んでいない住宅のこと」としか理解していなかったら、節税対策の上で大きな損をするかもしれません(私自身もかつて「住人がいない家=空き家」とシンプルに考えていたことがあります)。

あまり知られていないことですが、私たち一般人が考えて日常的に利用する「人が住んでいない家=空き家」という「日常用語としての空き家」以外に、国が考える空き家、税金における空き家、相続した空き家、社会問題として取りざたされる「行政用語としての空き家」の定義が、きっちりと別に定められているのです。

広く一般的にイメージされ日常的に使われる「空き家」と、税控除などに絡む(国が言うところの)「空き家」の定義が違うため、実際に所得税の控除などを受ける際に「行政が定める空き家の定義を誤解していたので、自分は税金控除を受けられなかった」「高額の税金を払う羽目になってしまった」という声も聞こえます。

実際にあなた自身が税務上の損をする前に、「日常用語としての空き家」と「行政用語としての空き家」それぞれ定義の違いを抑えておくべきでしょう。

ここでは「日常用語としての空き家」は当然ご説明する必要がありませんので、行政や税法上で空き家がどのように定められているのかを中心にご説明いたします。

空き家に関しては売却時などに様々な税法上の優遇策(所得税控除など)が用意されていますが、単に「誰もいない家」全てが対象ではなく、あくまで「行政が定めた定義の空き家」だけが税金控除の対象になっているのです。




日本国(国土交通省)が定める「空き家」とは

まずは、国が空き家をどう定義しているのを見てみましょう。

日本国の定義は2014年にできた「空家等対策の推進に関する特別措置法」、略称「空き家対策特別法」に空き家の定義が載っています。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H26/H26HO127.html

法律の条文を読み解く

この「空き家対策特別法」は、迷惑空き家をどのように処理していくかを定めた法律であり、基本的には罰則条例です。

その第2条で、空き家を次のように定義しています。

  1. 空き家とは建物とそれに附属する工作物である
  2. 居住やその他の使用がなされてないことが「常態」している住宅を空き家という
  3. 空き家が建っている土地や、その土地に生えている立木などは「空家等」としてこの法律で扱う
  4. 政府や都道府県、市区町村が所有したり管理したりしている「空家等」は、この法律が扱う空き家ではない
  5. 「空き家等」とは別に「特定空家等」を定める。特定空家等とは、倒壊の危険、不衛生で有害、景観を損なう結果、周辺住民の生活環境を損なっている空き家のことである

参考:空き家対策特別法第2条の全文

1:この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。

2:この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。

上記の定義をひとつひとつみていきましょう。

まず1項と3項から分かることは、国が頭を悩ませている空き家は、建屋だけではなく付随物が含まれるということです。
空き家の隣に建つ物置や門や塀、さらに空き家が建っている土地そのもの、そしてその土地に生えている立木や看板などを一括して「空家等」としているのです。
日本国は、人が住んでいない住宅建屋だけを処理すれば空き家問題が解決する、とは考えていないということです。

次に4項からは、国は個人や企業などが所有する空き家のみを対象に法整備を行ったことがわかります。
個人だけでなく、法人所有の空き家も法整備対象となっている点は忘れてはいけません。

最後に5項ですが、ここでは国が「普通の空き家」と「特別な特定空家等という空き家」を分けていることが分かります。この「特定空家等」の認定は罰則を含むとても深刻な事態につながる重要な個所なので、後の章で解説します。

「常態」とはどれくらいの期間なのか?

更に2項についてなのですが、建物に人が住んでいない(使用されていない)ことが「常態」である、とはどういうことなのでしょうか。
実はこの「常態」に対する解釈については関係者が混乱し、国が追加説明することになった経緯があります。

常態とは1年間を示すと考えてよい

空き家について一般的な理解では「建物に人が住んでいない場合、それはもう空き家である」となるでしょうが、国は「人が住まなくても、何かしらの形で利用していれば空き家ではない」と考えていることが分かります。

例えば、今流行りの民泊(みんぱく)は、空き家物件をホテルのように観光客に貸し出している方も多数おり、常駐してオーナーがその建物に居住をしているわけではありません。
したがって、民泊のような物件利用をしていれば、それは空き家ではないということになります。

国は「空き家」イコール「現状のまま放置すべきではない迷惑な建物」と考えて罰則付きで対処をしようとしているので、空き家不動産の所有者にとっては国から「空き家ではない」と認定してもらうことは非常に重要なのです。

では、居住もせず、誰かに貸すこともせず、その他の利用も一切しなければすぐにその物件は「空き家」として認定されるかというと、それも違います。
国は、対象の物件において、居住もその他の使用もない状態が「常態化しているときに」空き家と認定するとしています。

そして、国が考えるこの「常態」の期間は1年間です。
この常態=1年という数字は覚えておいてください。

空き家対策特別法には「常態とは1年である」とは書かれていないのですが、この法律の内容を解説した「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」に、次のように書かれてあります。

「『居住その他の使用がなされていない』ことが『常態である』とは、概ね年間を通して建築物等の使用実績がないこと」

当然「年間」の最小単位が「1年間」ですので、この文言は「人が住まず、誰かに貸すわけでもない状態が1年間続いていたら、空き家とみなす」と解釈できるわけです。

したがって「常態=1年間」は、不動産業界では通説となっています。

出典

空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(国土交通省)

電気ガス水道の使用状況が調査される

空き家対策特別法は、迷惑空き家をどう処理するかを定めた罰則を伴う法律なので、この法律で定義する「空き家」に所有物件が当てはまってしまうと、空き家オーナーとしてはとても厄介なことになる可能性があります。

ただ少し悪い知恵空き家オーナーなら、1年に1度程度キャンプのようにその空き家に泊って「空き家状態が常態化していない」と主張するケースも想定できるでしょうが、国はそういった悪意のある空き家オーナーに対抗する決まり事も定めています。

先ほど見た「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(国土交通省)」において、空き家の管理実態把握のための具体的方法が示されています。

ここでは空き家への人の出入りだけでなく、電気、ガス、水道の使用状況が調べられます。
空き家オーナーが「1年のうちに1泊したから空き家ではない」と主張しても、電気・ガス・水道料金が1年間に一度も支払われていなければ、国や、実際に空き家の調査にあたる市区町村は「該当物件は空き家である」として認定することができます。

国が定義する「空き家による害」とは地域住民への悪影響のこと

ところでなぜ、国はそれほどまでに空き家を問題視するのでしょうか。
その答えは「空き家対策特別法」の第1条中ににあります。
(同法第1条の内容を箇条書きにすると下記のようになります)。

  • 空家等は防災、衛生、景観、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしている(A-1)
  • 政府には地域住民の生命と身体と財産を保護する責務がある(A-2)
  • 政府としては空家等を活用したい(B-1)
  • 空家等の施策を総合的・計画的に進めたい(B-2)
  • 空家等を処理または活用することで公共の福祉と地域振興に寄与したい(B-3)

参考:空き家対策特別法第1条の全文

この法律は、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家等に関する施策に関し、国による基本指針の策定、市町村(特別区を含む。第十条第二項を除き、以下同じ。)による空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めることにより、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的とする。

国にとっての空き家は、上記の5項目の性質を持っているといえます。
そしてこの5項目は、「A:地域住民にとって迷惑となる状態の空き家」「B:地域の財産としての空き家」に関しての記述の2つに分けることができます。

特に問題となっているAに属する空き家ですが、日本の空き家は一軒家の木造建築が多いため、人が長く住まなかったり管理が行き届かなかったりすると数十年で朽ち果ててしまいます。

住宅が朽ち果てるということは、住宅が部品ごとに分解され、それが台風の風によって飛ばされれば地域住民に被害を及ぼします。

また朽ち果てた木造住宅には、害虫や害獣が住みつき衛生上の問題を引き起こします。
したがって、無管理状態で地域に有害と認定された空き家に対しては、国が具体的行動(罰則)を伴った対策を打ち出さなければならない事態となってしまいました。

【空き家トピックス】空き家は急増、木造は6割

政府の最新の調査では、国内の2013年の空き家戸数は820万戸で、前回調査の2008年より8.3%も増えています。

総住宅戸数は同じ期間で5.3%しかアップしていないので、「空き家は急増している」といえるでしょう。

2013年 2008年 増加率
総住宅戸数 6,063万戸 5,759万戸 5.3%アップ
総住宅戸数のうち空き家戸数
(空き家率)
820万戸(13.5%) 757万戸(13.1%) 8.3%アップ(0.4ポイントアップ)

空き家に占める木造住宅の割合の統計はないのですが、空き家ではない住宅における「木造住宅or非木造住宅」は以下の通りです。

2013年
空き家ではない住宅戸数
(居住世帯あり住宅数)
5,210万戸
うち木造住宅 3,011万戸(57.8%)
うち非木造 2,199万戸(42.2%)

このデータから、国内の空き家も6割が木造であることが推測できます。

出典「2013年住宅・土地統計調査結果による住宅に関する主な指標」(政府統計の総合窓口e-Stat)

「特定空家等」とは何か?

次に、冒頭にて解説を保留していた「特定空家等」について見てみましょう。
しかし「特定空家等への対策」は国、都道府県、市区町村という日本国内すべての行政機関が関わる一大政策ですので、ここですべてお伝えすることはできません(別途記事でそれらについては詳細をご説明する予定です)。

ここでは「特定空家等」の定義とその概要のみに絞り込んでご紹介します。

特定空家等の特徴1:倒壊危険性、不衛生で有害、景観損なう

まずは特定空家等の定義を見てみます。

空き家対策特別法第2条第2項では、「空き家等」とは別に「特定空家等」を定めています
この特定空家等とは、倒壊の危険、不衛生で有害、景観を損なうことで周辺住民の生活環境を損なうことが確実なもの、と定められています。

参考:空き家対策特別法第2条第2項

この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。

大きな概念として「空き家等」があり、その中の迷惑物件のことを特に「特定空家等」と呼んでいるのです。

つまり、

特定空家等=(1年未使用+電気・ガス・水道未使用)+(危険+有害+景観を損なう)

が特定空家等の条件定義となります。

空き家の定義と範囲

そして、あなたが所有する空き家不動産が行政によって「特定空家等である」と認定されると、以下のようにとても重いペナルティ(罰則)が課せられることになります。

固定資産税が6倍になるペナルティ

特定空家等に認定されると、空き家が建っている土地の固定資産税が6倍になるという重いペナルティがあります。

元来、住宅が建っている土地の固定資産税は、更地の固定資産税の6分の1に抑えられるという優遇策を受けているのですが、特定空家等の土地はその優遇が問答無用で外されるのです。

行政代執行による空き家の強制撤去

固定資産税6倍より重いペナルティは行政代執行による空き家の強制撤去です。

周辺の住民に迷惑をかけている空き家不動産のことを特定空家等と呼ぶので、その原因たる特定空家等を撤去しないと住民の被害は根本的に解決しません。。
そこで市区町村には、特定空家等の所有者に対し、空き家を撤去するよう助言・指導・命令する権限が与えられています。

命令に従わなければ、迷惑空き家の所有者に50万円以下の過料が課せられます。

さらにその命令にも従わない場合、行政は最終的に空き家の強制撤去という強硬手段に打って出ることができます。

東京都板橋区の空き家強制撤去事例

東京都板橋区が空き家対策特別法に基づいて行った、空き家の強制撤去の事例を紹介します。
その住宅は昭和33年に建てられた木造2階建てで、住宅の延べ床面積は約40㎡、土地面積は約170㎡でした。

いわゆるゴミ屋敷の状態で、板橋区は所有者に対し適切な処理を注意していたそうです。
しかし事態が全く好転しないため、板橋区は警察と協力して敷地外にはみだしたゴミを撤去しました。

このころはまだ空き家対策特別法がなかったので、行政の関与はこれが限界でした。

2015年に空き家対策特別法が施行されたことを受け、板橋区はゴミ屋敷の敷地に、侵入者防止用の囲いを設置しました。
さらに板橋区はそのゴミ屋敷を特定空家等に認定し、所有者に対し空き家撤去の指導・勧告・命令をしましたが、所有者はこれに従いませんでした。

板橋区はとうとう行政代執行という形で、強制的に空き家を撤去しました。
撤去にかかった費用は不明ですが、板橋区はその費用の全額を所有者に請求しています

出典

空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく行政代執行について | 板橋区
板橋区では、平成29年1月17日(火)から「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づく行政代執行を実施します。 場所:東京都板橋区成増四丁目17番16号 日時:平成29年1月17日午前10時開始 午前12時終了予定 内容:当該建物の全部除却および敷地内残置物の全部撤去 ※天候等...

これだけで十分、行政の特定空家等の対策に対する本気度がうかがえるのですが、これに加えてもうひとつ「おまけのペナルティ」があります。

ここではそこまで紹介しませんでしたが、実はこの事例は板橋区のホームページに紹介されていて、住所が「番地」「番号」まで詳細に記されているのです。

これはかなり厳しい「罰」といえるでしょう。

相続した空き家の定義

次に紹介するテーマは、特定空家等に限定した話ではありません。
空き家不動産を相続した人、もしくは、空き家不動産を相続することが確実な人は、「相続した空き家」の定義を知っておかないと、本来支払わなくてもよい所得税を支払うことになりかねません。

相続対策に真剣にならなければならない人ほど「相続した空き家」の定義を知っておくべきでしょう(しかも、相続税の適用範囲拡大化でその対象となる人は以前より大幅に増えています)。

国が言うところの「一度でも住んだら空き家ではない」という言葉の意味は何か?

相続した空き家不動産を売却し、売却益が出た場合、所得税を支払わなければなりません。
しかし、相続した住宅が空き家の場合、所得税がゼロ円になる可能性があるのです。

まずは、あなたが相続した空き家不動産、または、あなたが相続しそうな空き家不動産が、以下の条件に当てはまるかチェックしてください。

  1. □その空き家は昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された
  2. □その空き家は区分所有建物登記がされた建物ではない
  3. □その空き家不動産を2016年4月1日から2019年12月31日までに売却する
  4. □相続の開始の直前に、被相続人(相続してくれた親など)が1人で住んでいた

すべての条件をクリアした場合、所得税が大幅に減るか、ゼロ円になる可能性があります。
ただしチェック項目1、2、3をクリアできたとしても、項目4が非常にひっかかりやすい条件になっており、実際に税向上対象となるネックになっているケースが散見します。

税控除対象にならない事例1

例えば、相続された空き家不動産が父親名義になっていて、その父親が亡くなったあと名義変更せずに配偶者である母親が住んでいたとします。
その母親が亡くなって、子供がその空き家不動産を相続した場合は項目4に該当しなくなります。

なぜならこのケースでは、父から子供に(母親を飛ばして)空き家不動産が直接に相続されたことになってしまうからです。
しかし実際に「相続の開始の直前にその住宅に1人で住んでいた」のは母親です。
したがって項目4が成立しなくなるのです。

税控除対象にならない事例2

また別の例として、父親名義の住宅に、父親と子供1人の計2人で同居していたとします。
その父親が亡くなって子供がその家を相続した場合、やはり項目4をクリアできません。
被相続人の他に子供が同居をして住んでいたため、「被相続人が1人で住んでいた」という条件にに当てはまらないからです。

税控除対象にならない事例3

父親名義の住宅に父親が1人で住んでいて、その父親が亡くなったので子供がその空き家不動産を相続したとします。

その空き家不動産を、相続したときから売却するまでの間に、子供が一時的にでも誰かに他人に貸したりしてしまった場合も項目4に該当しないことになってしまうのです。

税金控除を受けるためには、子供は相続したときから売却のまでの間、完全未使用の空き家状態で維持をしておかなければならないのです。

さて、こうした諸条件と難関をクリアできると、空き家不動産を売却して利益が出たときには所得税が大幅に減額されるかゼロ円になる可能性が出てきます。

空き家不動産売却時の所得税がゼロ円になる仕組み

相続した空き家不動産を売却したときに、所得税が大幅に減額される仕組みを「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
空き家不動産の売却額から3,000万円を差し引いた金額に所得税をかけるようにしてくれる制度です。

売却額そのものに税金をかけるのではなく、売却額から経費など一定金額を引いた金額(つまり利益)に税金をかけるしくみを「控除」といいます。

控除には税金を減額する大きな効果があります。

つまり、相続した空き家不動産が3,000万円で売れて、その空き家が先ほど見た条件に当てはまれば、売却額から3,000万円を控除してもらえるので、所得税の「計算上の売却額」はゼロ円となり、所得税そのものを支払わなくてもよくなるのです。

「相続した空き家」の定義を知っておくことが、如何に節税対策、相続対策にとっても重要なことである理由をご理解いただけたでしょうか。

出典

国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁

地域の問題としての「空き家」の定義

画像はイメージです

政府は迷惑空き家を「特定空家等」と定義しているわけですが、ご覧いただいた通り特定空家等に指定された空き家は、誰が見ても一瞬で迷惑物件であると分かる相当ひどい状態です。

しかし、近所に空き家を抱える地域住民は、そこまでひどい状態でなくても、十分迷惑を被っていることがあります。

ここでは政府では定義しきれない「地域の問題としての迷惑空き家」について考えてみます。

「10年間放置の空き家。ジャングル化で超迷惑! なのに持ち主は知らん顔で...」(静岡県・30代女性) - くらし - Jタウンネット
近年各地で深刻化しているのが、「空き家」問題だ。長期間放置された空き家は、火災や倒壊などの事故、また不審者の温床になるなどすることが懸念される一方、当然近隣住民、また自治体などの一存では取り壊すことも...

資産価値が減り、住みたくない街になる

空き家のガラス窓に何枚も貼られた、不動産会社の「入居者募集」のポスター。
電柱にくくりつけられた中古住宅の「オープンハウス」の案内板。
かつてはスナックや居酒屋が軒を連ねた場末の「飲食店街」跡。
開かなくなって久しい商店街の「シャッター」。
生きているのか亡くなっているのかも分からない「空き家の所有者」。

こうした空き家の爪痕は、地域経済に直接的な打撃を与えるものではありません。
しかし近隣住民にとってはとても感じが悪い邪魔モノです。

雰囲気が暗くなり、地域の活気を確実にスポイルしていきます。
住んでいて楽しい街には程遠い景観を醸し出す大きな悪因になります。

空き家が増えた地域に住んでいる人が「できればこの地域から離れたい」と思い、その地域の外にいる人が「あの地域には住みたくない」と思えば、その地域の不動産の地価はどんどん下がっていきます。

家を建て替えようと考えて現在住んでいる住宅を不動産会社に査定してもらい、その結果、予想をはるかに下回る金額しか提示されなかった場合、資金不足から建て替えを断念せざるをえませんので、その空き家密集地域から転出する事すらできなくなる悪循環。

他人の空き家は他人事で済まされない、というのが街づくりの共通認識です。
近隣住民の家計にも間接的にじわりじわりと影響を及ぼします。

空き家不動産が多い地域に賃貸物件があれば、賃料相場は下がっていきます。
そうなると賃貸物件の大家は「借りてくれるなら誰でもいい」となるでしょう。
当然、地域住人の質そのものにも間接的に影響を与えます。

空き家不動産の存在は、地域住民の「民度(みんど)」にも大きく関わっています。

空き家問題について、地域住民が自分達でできること

横浜市役所に26年勤務した経験がある、相模女子大学人間社会学部・松下啓一教授は、「空き家問題は所有者の自己責任の問題」と述べています。

松下教授はさらに、現代の空き家問題は「市民間で自主的解決」できるものではなく、「行政は従前の行政手法とは異なる新たな政策を繰り出す必要がある」と言います。

松下教授は、空き家の近隣住民が取り組める対策として、空き家になりそうな建物を早期に発見する情報入手ルートの確立を挙げています。
町内会の人脈や冠婚葬祭などのつながりを利用して、住民同士が居住者不在情報を共有するだけでも、行政が動き出したときに役立つといいます。

このように地域が結束していれば、例えば空き家の所有者が空き家を行政に寄付した場合、その空き家を地域の活動拠点や学童保育所などに転用できる可能性が広がります。
まずは空き家問題について「ご近所さん」と話すことから始める必要がありそうです。

出典

「空き家対策からまちづくりを考える」(松下啓一・相模女子大学人間社会学部教授、2013年)

空き家問題の現状

総務省は5年ごとに「住宅・土地統計調査」を行い、現在は2013年のものが最新データになっています。

ここから、現状の空き家問題をみていきます。

人口減なのに総住宅数が増加、空き家が増えるのは当然

2013年の国内における総住宅数は6,063万戸で、2008年から304万戸増え、上昇率は5.3%となっています。

一方、2013年の空き家戸数は820万戸で、2008年比63万戸増、上昇率は8.2%でした。総住宅数の増加スピードを超える速さで空き家が増えているのです。

国内の人口が減り続けているのに、総住宅数が増えているのですから、空き家が増えるのは当然といえば当然です。

2008年 2013年 上昇率
総住宅数 5,759万戸 6,063万戸 5.3%
うち空き家数 757万戸 820万戸 8.2%
総住宅数に占める空き家数の割合 13.1% 13.5% 0.4ポイント

出典

統計局ホームページ/空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について
総務省統計局、統計研究研修所の共同運営によるサイトです。国勢の基本に関する統計の企画・作成・提供、国及び地方公共団体の統計職員に専門的な研修を行っています。

ほとんどの空き家は一戸建て

次に、空き家の建て方別のデータを見てみましょう。

2013年の国内820万戸の空き家のうち、36.6%は一戸建てでした。
しかも一戸建ての空き家は2008年から20.0%も増えているのです。

一方でアパートやマンションなどの共同住宅の空き家は、同期間に1.9%しか増えていません。空き家問題とは、一戸建て空き家問題なのです。

ちなみに長屋建てとは、2つ以上の住宅が1棟に建てられたもので、各住宅が壁を共通にしているものです。
テラスハウスは長屋建てです。

  2008年 2013年 上昇率
空き家の総数 757万戸 820万戸 8.2%
うち一戸建て(総数に占める割合) 250万戸(33.0%) 300万戸(36.6%) 20.0%
うち長屋建て(総数に占める割合) 42万戸(5.5%) 46万戸(5.6%) 9.5%
うち共同住宅(総数に占める割合) 462万戸(61.0%) 471万戸(57.4%) 1.9%
うちその他(総数に占める割合) 3万戸(0.5%) 3万戸(0.4%) 15.4%

アパートブーム建設ブームで空き家は更に増える

しかも今後は空き家がまだまだ増える、という見方があります。

空き家が増える要因その1は、アパートの空室率が上昇していることです。
2015年の税改正で相続税が増税され、アパート経営で節税する動きが活発になったため、アパートの建設ラッシュが進んでいます。

アパートが増えれば周辺の空き家の借り手が減り、借り手が減れば空き家の賃料を下げるしかありません。賃料が下がれば、空き家不動産の所有者は空き家を売ろうにも売れない状況に陥り、空き家は時間の経過とともに迷惑空き家になっていきます。

しかも、最近はサブリース問題(家賃保証問題)で注目を浴びているアパート建設業者から「相続税対策をしませんか?」と土地所有者がアパート建設を持ちかけられるケースが問題視されはじめていますが、時すでに遅し、埼玉県羽生市のような地方都市では「気づけば畑の周囲はアパート建設だらけ。その結果は空室だらけ」という事例もあります。

アパート建築が止まらない ~人口減少社会でなぜ~ - NHK クローズアップ現代+
2015年5月11日(月)放送。全国で深刻化する「空き家問題」。とりわけアパートなどの賃貸住宅は5戸に1戸が空き部屋となる一方、新規の建築は増え続けている。そのおよそ半数を占めているのが、住宅メーカーや不動産会社が提案するサブリース形式のアパート。会社は、空き部屋があっても「30年家賃保証」するとして、土地を持って...

「2022年問題」で空き家が増える

空き家が増える要因その2は、生産緑地制度が2022年に終了することです。

生産緑地とは、市街化区域内にある、自治体が指定した土地です。
生産緑地に指定されると、固定資産税が農地並みに安くなるのです。

ところが生産緑地制度は1992年から30年間限定の制度でした。つまり2022年には制度の効力がなくなるのです。

生産緑地制度の効力がなくなると、生産緑地の所有者が支払う固定資産税は2022年以降跳ね上がることになるので、大量の生産緑地が売りに出される可能性があります。

生産緑地は、住宅を建てることができる市街化区域内にあるので、この土地をマンションデベロッパーやアパート建設業者が狙っているのです。

新築物件が増えるということは、空き家が増えるということに他なりません。
空き家が増えるということは、あなたが所有する空き家の価値が下がるということです。

出典

2022年問題への対応遅れが空き家増やす|売れる営業|日経BizGate
 本格的な人口減少時代の到来によって、不動産市場が大きく変わろうとしています。「不動産格差」は既に全国各地で顕在化していますが、時間の経過ととともにますます開き続けるでしょう。資産化する「富動産」から、マイナス資産となる「負動産」まで、&

家計のお荷物としての「空き家」

これまで様々な角度から空き家不動産を見てきましたが、あなたにとって最も重要な空き家の定義は、ここで見る「家計のお荷物としての空き家不動産」かもしれません。

実際に空き家を無駄に維持し続けることで、あなたの家計にはどれくらいの負担がかぶさってくるのかを考えてみましょう。

不動産業界にはいま「不動産格差」という言葉があります。
良い不動産と良くない不動産の2極分化が進んでいるのです。
「富動産と負動産」といったジョークもあって、不動産業界の専門家は、空き家不動産は「負動産」になる可能性が高いと指摘しています。

空き家は早く売った方がいい4つの理由

空き家に知見が深い不動産コンサルタントの方々は「所有している空き家を査定してもらい、あまりの安い金額に『売りたくない』と思う所有者もいると思うが、いまが最高価格と考えたほうがよい」と警鐘を鳴らしています。

空き家を早く売る理由1:空き家は朽ちる

この記事の前半で見た通り、あなたの空き家不動産が今後老朽化して市区町村から特定空家等に指定されてしまうと、建屋を撤去しなければならなくなります。
行政代執行による強制撤去でも、解体費用はあなたに請求されるでしょう。
固定資産税も6倍に跳ね上がります。

撤去費用を払うくらいなら、安くても売れるうちに売ってしまったほうがよい、というのが多くの不動産コンサルタントが共通して打ち出す見解です。

空き家を早く売る理由2:相場急落のリスク

生産緑地制度の終了により、アパートやマンションが今後建てやすくなることもご理解いただけたと思いますが、新しいモノができると古いモノの価値は急激に下がるのは経済原理です。

自動車でも新型車が発表された途端に、前の型の中古車価格は急落します。
同じことが不動産市場でも起きるのです。

あなたの空き家不動産の近くにアパートが建ったら、あなたの空き家不動産の価格は確実に急落するでしょう。

空き家を早く売る理由3:維持管理にかかる無駄なお金と時間

空き家維持には時間とお金をかけた管理が必要です。
最低でも月1回は空き家に通い、換気と水道管の通水を行わなければなりません。
不動産会社や警備会社が、空き家の見回りサービス事業を展開していますが、これも当然委託料金が発生します。

なぜこのようなビジネスが成立するかというと、それはお金を支払ってでも空き家を維持したいと考えるオーナーがまだまだ多く存在するからです。
(彼らの多くは経済的理由よりも「生まれ育った実家を売るのは忍びない」という情緒的理由により空き家を維持し続けているといわれます)。

空き家管理の費用は、あなたの家計帳簿では「お金を生まないお金」に仕分けできます。
教育費や生命保険料やレジャー費用は支払う人の幸せにつながりますが、空き家管理料は家計の中で最も無駄な経費といえるでしょう。

空き家を早く売る理由4:「古民家再生」は例外中の例外

テレビのニュース番組などで、ほとんど廃屋だった空き家が、カフェや工房や宿泊施設に生まれ変わった事例を見たことがあると思います。

しかしそのような劇的な転換を図ることができる空き家は、立地が抜群に良かったり、特殊な工法で建てられていたり、実は有名建築家がつくっていたりしたものです。
端的に行ってしまえば、例外中の例外であるラッキーな空き家活用事例です。

そもそも、世間の注目をあびるような築100年の歴史的古民家であなたは生まれ育ったのでしょうか?多くの方はハウスメーカーや住宅販売会社から購入した「30~40年前に建てたごく普通の家」であるはずです。

もちろん、あなたの空き家不動産が注目物件にならないとは限りません。
そこでぜひ一度、空き家不動産の鑑定をプロに依頼すべきです。
複数の不動産会社に頼むことで、客観的な情報に基づいて「本当にあなたの空き家不動産は維持活用できる道筋があるのかどうか」を判断してもらえるでしょう。

まだ売らなくてもよい空き家とは?

上記のように、空き家不動産の売却は早ければ早いほどよいというのは原則ですが、例外的に売り急がないほうがよいケースもあります。
それはあなたの空き家不動産が、市区町村が定める「都市機能誘導区域」「居住誘導区域」に建っている場合です。

都市再生特別措置法は、市区町村に対し、都市機能の充実を図るため立地適正化計画を作成するよう指示しています。

どの市区町村も人口減少が避けられないため、生活インフラを維持・整備する予算をますます削減していかなければなりません。

そこで街の機能を一定地域に集中させようとしているのです。
コンパクトシティという考え方です(富山県の事例が有名ですね)。

日経BizGate

そこで、公共施設や病院、商業施設などを集中させる都市機能誘導区域と、住民を集中して住まわせる居住誘導区域を定めることにしたのです。

国土交通省は、立地適正化計画の推進を図る市区町村に補助金を交付して支援しています。
立地適正化計画は、政府の税金が投入される事業なので、都市機能誘導区域と居住誘導区域にある空き家不動産は、今後利用価値が高まる可能性があります。

この区域にあるあなたの空き家不動産は、今後の値上がりが期待できる数少ない物件ともいえるのです。

値上がりする可能性があるかどうかについても、不動産会社の営業マンに確認することをおすすめします。

出典

都市計画:立地適正化計画に係る予算・金融上の支援措置 - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

「2016札幌市立地適正化計画【概要版】」(札幌市)

まとめ:売りどきかどうかを教えてくれるアドバイザーを見つけよう

ひとことで「空き家」と言いますが、私たち住民が日常的に使っている空き家という言葉と、国が税金控除対象や管理運営責任を問う罰則適用時に使う際の意味などに、随分と乖離があることが実感できたかと思います。

特に空き家不動産の当事者であるならば、空き家の定義をしっかり知っておくことは、維持管理するにせよ売るにせよ、空き家不動産を賢く活用したり相続対策をしたりする際の重要な要素になってくることを自覚しておきましょう。

また、後半で述べたように、今の時代は空き家の売りどきを間違えると、後々相当後悔することになりかねません。

空き家の売却値段は今が最高値ということを、常々忘れないようにしたいものです。

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空き家隊長

空き家隊長

実家の相続をきっかけに空き家問題に直面。すったもんだの末に何とか売り抜ける。その際に経験したこと、様々な外部のプロに教えて頂いた空き家問題、土地活用問題について記事にしていきます。
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