深刻化する分譲マンションの空き家問題と物件売却




空き家問題は一軒家だけの社会問題にとどまらない

空き家問題というと、誰も住まなくなった戸建住宅ばかりが注目されがちですが、実は分譲マンションの空き家も、この先大きな社会問題になるであろうことは間違いありません。

都市部の空き家問題は、既にマンションの空き住戸がメインといわれていて、東京都の空き家数81万7,000戸に対して、およそ6割超の51万8,600戸がマンションなどの「非木造」(鉄筋コンクリート造と鉄骨造の合計)の空き住戸だそうです。

現状ではこのうちの8割以上は賃貸用マンションの空き住戸とみられていますが、近い将来には分譲マンションの比率が格段に増えることが予想されます。

国土交通省によると、全国の分譲マンションストックは約644万戸(平成29年末)で、現在も増え続けていると思われます。

この中で、1981年6月より前に建築されたいわゆる旧耐震構造のマンションは約104万戸あるといい、分譲マンション全体の約16%を占めています。

これらのマンションがひとたび空き家になれば、耐震性や耐久性の問題で売却するのも難しくなることが予想されます。

一方、分譲マンション全体の空き家率は2.5%程度でまだそれほど高くはないものの、築年数が古くなるほどこの数値は伸び、築30年以上のマンションの空き家率は10%を超えるといいます。

マンションは時間の経過と共に、建物の老朽化に加えて区分所有者の高齢化が進み、空き家率が増えると管理が行き届かなくなってスラム化に至る懸念があります。

更に相続問題が畳み掛けてくる

また、多くの分譲マンションでは、そろそろ相続が発生する時代に突入するとみられます。

郊外の戸建住宅と同様に都市部のマンションでも、相続人である子供や孫がそこに居住するケースは少ないでしょう。

特にマンションの場合は、子世帯はすでに家を出て、他に家を持っているケースが戸建住宅よりも多いと思います。

相続したマンションをそのまま賃貸に出せれば良いのですが、築年数が古いと、設備が老朽化しているなどの理由で人に貸すにはリフォームが必要だったり、膨大な家財道具があるなどの理由で、そのまま放置しているケースが多いと思われます。

分譲マンションの空き家問題は、今まであまり大きくとり上げられることはありませんでしたが、この先加速度的に大きな社会問題に発展する恐れがあります。

そしてマンションの空き家問題こそ、より深刻な問題を抱えている様に思います。今回は分譲マンションの空き家問題について考えてみましょう。

分譲マンションが抱える深刻な問題

分譲マンションの空き家問題は、マンション特有の居住形態が密接に関係しています。ここでは今後分譲マンションが直面すると思われる課題について考えてみたいと思います。

老朽化したマンションの建て替え問題

分譲マンションの空き家が深刻なのは、区分所有という所有形態にあります。

建物が老朽化したからといって建て替えるにも、全部が自分の資産であることが多い戸建住宅とは異なり、分譲マンションでは同じように区分所有している他の所有者の同意が必要です。

区分所有法では、マンションの建て替え決議が成立するためには、「区分所有者および議決権の4/5以上」の賛成が必要とされていて(単棟の場合)、建て替えの決議がされた場合には、建て替えに反対する所有者に対しては、区分所有権の売り渡し請求をするという流れです。

決議のための総会を開くにしても、空き家になっていれば区分所有者を探し出して議決権の行使(委任を含む)を依頼しなければならず、空き家になった理由が区分所有者の死亡による時は、相続人が対象になるのでさらに面倒です。

こうして数十人から数百人にもおよぶ区分所有者の意見を調整し、建て替え事業を実施するのは非常に困難な様に思えます。

また、築年数の古い物件ほど建物の老朽化が進み、空き家も増加する傾向があります。

所有者も高齢化しているため、たびたび相続が発生します。

相続はされたものの、売却することも賃貸することもできない状態だと、長い間放置されている可能性もあります。

そんな建物を建て替えるといっても、新たに費用負担が必要にでもなれば、建て替え決議が成立する可能性は極めて低いといえるでしょう。

多くの人が居住している分譲マンションでは、各区分所有者の経済状況や家庭環境は様々です。

建物の分譲当時は、購入する人の年齢層や家族構成、経済状況などが似通る傾向があっても、築年数が経過していく中では次第に所有者間に格差が生じていきます。

さらに区分所有権が売買されることによって、新たにニーズの異なる所有者が生まれ、それぞれの家庭の事情もバラバラになります。

意見をひとつにまとめるのはどんどん難しくなってしまいます。

一方で、既存の建物の容積率(法律で定められた、敷地に対して建築することができる建物の床面積の割合)に余裕があって、建て替えによってより床面積が大きい建物が建てられる特殊なケースがあります。

1970年代に建てられた物件が多く、新たな都市計画のもとに設定された容積が建築当時の容積よりも多くなったのは都心部などのごく一部のエリアです。

その場合には床面積の増加分を売却することによって、各戸の費用負担を抑えて建て替えることが可能になります。

余剰分の容積は開発を行うデベロッパー等を通じて外部に売却することで、投資コストが回収でき、計画が進めやすくなります。

実際にこのようなケースでは、マンションの建て替えが行われている事例があります。

しかしこういったケースは稀で、古い物件では逆に容積率が建築当時よりも小さくなってしまう「既存不適格物件」が少なくありません。

既存不適格物件は、建て替えると建物全体の床面積が減少してしまうので、建て替えるメリットよりもデメリットの方が多いといえます。

結局問題が先送りとなってしまい、建物が老朽化してスラム化がさらに進んでいく傾向があります。

区分所有者に資金がなく建て替えできない場合でも、ファンドなどが物件をまるごと買い取って賃貸物件などに再生するという可能性もあります。

ただし、これも区分所有者全員から物件を買い取りできた場合に限られるので、区分所有者の合意形成が前提です。

そうはいうものの、建物の老朽化が進んで空き家だらけになれば、いつかは建て替えや解体が必要になる時が来ます。

解体してしまうのが最も簡単ですが、残っている住人の抵抗にあうのは避けられません。

高齢者の中には、「あと数年生きている間だけ住む場所があれば、あとは関係ない」という意見も当然あるでしょう。

マンションは権利者1人あたりの土地面積が小さく、土地の資産価値はほんのわずかです。

仮に修繕積立金を使って建物を解体できるとしても、住む場所を失い、解体後の土地を売却して僅かなお金を手に入れられるくらいであれば、住み続けることを選択する人も多いと思います。

この様に何を行うにも区分所有者の合意形成が必要になるマンションでは、難問が山積みで、廃墟化していく様子が容易に想像できます。

管理費、修繕積立金の未納問題

分譲マンションでは一般的に、区分所有者が構成する管理組合によって資産価値を維持しています。

その管理組合の運営を財政面で支えているのが管理費であり、建物のメンテナンスや修繕に備えて組合員から毎月徴収するのが修繕積立金です。

ところが近年では、区分所有者の高齢化や死亡後の相続人の放置などによって、管理費や修繕積立金の滞納が目立っているといわれています。

分譲マンションでは、あらかじめ作成しておいた長期修繕計画に基づき、計画的に大規模修繕工事を行うことで資産価値を維持していますが、管理費の未納や修繕積立金の不足があると、必要な管理を行う上でも大規模修繕工事を行う上でも大きな障害となります。

管理や修繕が行き届かなくなると建物の老朽化が進み、次第に住民が転居する様になってしまいます。

空き住戸が増えてマンション価格が下がれば住民層も変わり、マンション内の治安も悪くなります。

こうして次第に空き家が増えていくのが典型的な分譲マンションのスラム化のパターンです。

分譲マンションの空き家問題の特徴

分譲マンションの空き家問題は、戸建住宅の様に一目では空き家かどうかわからないので顕在化することが少ないのですが、マンション内では少しずつ確実に進行し、気付いた時には手の施しようもなくなってしまう可能性があります。

永住するつもりで毎月きちんと管理費や修繕積立金を支払っていた所有者にも、突然経済的負担を負わせる危険性を内包しています。

これまでマンションは比較的売りやすいとされてきました。

ところが現在では、郊外の老朽化したマンションを中心に、都市部でも売却しようにも買い手がつかないことが珍しくありません。

こうしたことからも、空き家となった分譲マンションを所有している場合には、長い間放置しておくのは得策ではありません。

できるだけ早い時期に何らかの対策をすることが必要です。

また、マンションは老朽化して朽ち果ててしまう戸建の空き家とは異なり、構造が丈夫なため自然倒壊することはほぼありません。

したがって周囲に与える危険性は小さいといえますが、いざ解体するとなったにしても、解体には億単位の費用がかかることもめずらしくなく、誰がその費用を負担するのかという問題があります。

分譲マンションの空き家が増加する理由

四谷コーポラス(引用:https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00557/)

日本の分譲マンションの歴史は比較的浅く、国内で最初の分譲マンションは1956年(昭和31年)に日本信販が売り出した「四谷コーポラス」(5階建て全28戸)といわれています。

その後1962年にマンションの基本法である「建物の区分所有等に関する法律」が制定され、1964年に開催された東京オリンピックをきっかけに、住宅都市整備公団(現:住宅・都市開発機構)を主な供給主体とした「団地型」のマンションが数多く建設されました。(第一次マンションブーム)

その後第二次~第六次マンションブームを経て、現在にいたっています。

特に第五次マンションブーム(1986~1989年)ではバブル経済で超高額物件(10億円超)が供給され、第六次マンションブーム(1994年~2002年)では首都圏の新築マンション分譲が8万戸を超える空前の大量供給が8年にわたって続きました。

都心のタワーマンションがブームになったのもちょうどこの頃です。

不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンションの2017年新規供給戸数は35,898戸で、2013年(56,478戸)と比較すると約36%も減少しているものの、前年比0.4%増で4年ぶりの増加になったといいます。

空き家が増える最大の要因は、明らかに住宅の供給過剰といえます。

新築マンションへの住み替えで今までのマンションには住まなくなったからといっても、立地や使い勝手が余程よくなければ、簡単には売却や賃貸することもできません。

近年の建築技術の向上により、マンションの寿命が70年前後に延びているといわれる中で、「本当にそんなに新築マンションが必要なのか」と誰もが思うのではないでしょうか。

現在の住宅総数が総世帯数を大きく上回っているにもかかわらず、このまま新規供給戸数が増え続ければ空き家が増えるのは当然の結果です。

空き家問題が深刻化しているにもかかわらず、新築着工件数がそれほど減らない背景には、日本人の「新築志向」の強さがあります。

住宅ローンの控除や税制優遇など、国もこれまで新築住宅取得を促進する政策を推進してきました。

空き家をこれ以上増やさない様にするためには、一戸建住宅もマンションも中古住宅流通の促進に政策をシフトすることが不可欠でしょう。

タワーマンションの問題点

今後の分譲マンションの空き家問題を考える上では、ここ最近頻繁に取り沙汰されている「タワーマンションへの懸念」については、避けて通ることができない問題です。

タワーマンションに法的な定義づけはない様ですが、一般的には高さ60m以上か建築基準法などの構造基準が異なる20階以上のマンションを超高層マンションと呼んでいるので、それがひとつの目安になりそうです。

日本で最初のタワーマンション(21階建、高さ66m)は1976年に埼玉県で建設されました。

不動産経済研究所のデーターによると、首都圏でタワーマンションが増え始めたのは2000年頃です。

1997年に施行された建築基準法・都市計画法改正にともなう容積率の制限緩和をきっかけに、都市部や再開発予定地に多くのタワーマンションが建設される様になったと思われます。

2007年にピークを迎え、その後は建設される棟数は減少傾向にありますが、今後の計画予定では2019年以降に再度増加するといわれています。

通常のマンションでは見られない眺望(といっても高層階だけですが)や、充実した共用施設、抜群のステータスが魅力的なタワーマンションは、高級マンションの代名詞といえるもので、高い資産価値があるものとして一部の富裕層や海外の投資家からの投資対象にもなっています。

人気のタワーマンションに潜む懸念事項として、専門家から度々指摘されているのは、次の点です。

高額な維持費

充実した共用施設やコンシェルジュサービスなどは、高額な管理費の要因になります。

また、通常のマンションと比較して修繕積立金が高額になるばかりか、実際に大規模修繕が必要になった際には修繕積立金が不足し、修繕費の一次徴収金が発生する可能性が高いともいわれています。

さらに長期修繕計画の甘さから生じる修繕積立金の途中値上がりもあるかもしれません。

初期に建設されたタワーマンションが今後続々と修繕時期を迎えます。

2015年3月には、1998年に埼玉県川口市に竣工した55階建て、高さ185mのタワーマンションの大規模修繕工事が着工しました。

超高層タワーマンションの大規模修繕工事としては、過去に前例がほとんどない工事で、工期は約2年かかったものの、住民の合意形成から工事完成までのプロセスなど、比較的成功した例だと思います。

これから次々と着工することが予想されるタワーマンションの大規模修繕工事では、様々な問題が顕在化する可能性も否定できません。

様々な区分所有者によるトラブル

タワーマンションの区分所有者には、所得の異なる人や外国人投資家など、通常のマンション以上に様々なタイプの人がいます。

管理費・修繕積立金の滞納や修繕計画をめぐる住民同士の対立などが発生する可能性が非常に高いと思います。

この様なトラブルが頻繁に発生すれば、転居して空室が増えることも考えられます。

そして将来建て替えが必要になった時には、区分所有者の合意形成は困難を極めるはずです。

前述した築60年超の「四谷コーポラス」の建て替え決議では、わずか25戸しかないにもかかわらず、建て替えが決定するまでに10年を要したといいます。

建て替え決議の難しさを考えると、タワーマンションは将来ゴーストタウン化する予備軍といえなくもないでしょう。

空き家問題を真剣に考えるのであれば、将来必要になると思われる解体費用を修繕積立金に上乗せしておくなど、新たに建設されるタワーマンションには、早急に空き家対策を講じておくことが必要になるでしょう。

まとめ

今回はマンションの空き家問題についていろいろと見てきました。

「空き家」と聞いてイメージするのは、地方のボロボロになった戸建住宅を想像する方が多いと思いますが、今後は都市部のマンションでも深刻な空き家問題に直面するケースが増えると思います。

現在は若い人達を中心に、中古マンションを購入して自分らしくリノベーションして暮らすのがブームですが、どんなマンションでも需要があるわけではありません。

築年数が古いマンションや利便性に劣るマンション、管理状態の悪いマンションなどにはなかなか需要がなくて、空き家になるケースも目立ってきています。

特に旧耐震基準で建てられたマンションは、耐震補強工事を行うにも区分所有者の決議が必要なため、思う様に改修が進んでいないのが現状です。

こういった物件では、現在の居住者がいなくなればスラム化は避けられないでしょう。

また自らが所有していなくても、ある日突然相続が発生して、空き家問題の当事者になってしまうケースも増えるでしょう。

今のまま人口の減少が進めば、2033年には全ての住宅の1/3が空き家になるという予想もあります。

分譲マンションとて例外ではありません。

中古マンションもそう遠くないうちに、売りたくてもなかなか売れない時代がくると思います。

そして解体が必要になった空き家マンションが増えても、構造的に頑丈なマンションは、戸建住宅の様に行政が強制的に解体させることもできません。

さらに老朽化が進んで危険な状態にでもなれば、最終的には公費を使って解体することにもなりかねないのです。

この様に分譲マンションの空き家問題は、一戸建住宅の空き家問題よりも多くの難しい問題を抱えていて、より根が深いといえます。

老朽化したマンションは、建て替えるにも解体するにも困難なことから目を背けずに、できるだけ早いうちに今後の中古マンションの活用方法を検討しておくことが必要だと思います。

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益子公博

益子公博

住宅会社で20年以上リフォーム事業の責任者経験があり、リフォーム業界、住宅建築業界の裏事情やリフォーム現場には精通。ホームインスペクション(住宅診断)の専門会社を経営、住宅診断、欠陥住宅相談、リフォーム会社への社員研修など実施しています。
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