限界集落と空き家問題の深刻な相関関係が日本を侵食している

あなたが所有する空き家不動産はどこに所在していますか?
もしも都会ではなく、地方都市でもなく、限界集落と呼ばれる地区に空き家不動産を持っている場合、注意が必要です。

というのも限界集落の人口問題は、国土交通省、総務省、農林水産省が連携して取り組んでいる、国の重要課題でもあり、人口問題は土地売却価格にも直結することは言うまでもありません。

もっと言えば、「売れればラッキー」「売れなくて当たり前」となってしまう負動産に最も近い存在、それが限界集落の空き家不動産です。

また、いまは限界集落でなくても、「うちの空き家がある田舎も人が減る一方だ」と感じている空き家不動産の所有者は、行政や民間が取り組んでいる、限界集落とその対策についての基礎知識を持っておいたほうがいいでしょう。

空き家問題と限界集落の問題は、いずれも「人が住まないこと」と「管理が行き届かないこと」の2つの要素が合わさったときに引き起こされます。




限界集落とは?定義と実情

まずは限界集落の定義について見てみます。

一般的に「都会ではない」ことを表す言葉には、「地方」「田舎」「田園風景」などがあり、これらの単語には温かい響きがあります。

しかし「限界集落」という言葉からは、どこか薄ら寒々しいというか、マイナス的なイメージしか浮かばないのではないでしょうか。
実際に限界集落という言葉を肯定的な意味で使用しているケースには、ほとんどであったことはありません。

限界集落の定義

集落とは、農村、漁村、山村の中でも、特に小さなコミュニティのことを意味します。
では限界集落となると、どういった定義になるのでしょうか。

65歳以上人口が50%以上で限界集落となる

限界集落とは、65歳人口が50%以上になった集落のことです。
一般的に65歳以上人口は非生産年齢人口と考えられるので、65歳以上の人が過半数を占めるとその集落は、経済的発展はおろかその維持すら難しい状態に陥ります。

まさに限界集落とは「早晩、消滅しかねない状態であり、ギリギリ集落の体裁を保った状態である」という事を意味しています。

尚、55歳以上人口が50%以上になると「準限界集落」、65歳以上人口が75%以上になると「危機的集落」と呼ぶこともあります。

限界集落の定義は国が定めたものではなく、人口問題や社会学の専門家たちが考えたものですが、一般的に流通している定義です。

国が「限界」を使わないのは該当地域住民への配慮?

国は「限界集落」という言葉は使わずに、「集落」を「一定の土地に数戸以上の社会的なまとまりが形成された、住民生活の基本的な地域単位」(総務省)と定めています。

ただ国も、集落における65歳以上人口の増加には大変注目しています。
国としては、まだ人が住んでいる国土に「限界」と付けることに抵抗があるのでしょう。
いずれにしても、限界集落と上記の国が定める集落は、ほぼ同じ意味といえます。

限界集落は、そこで暮らす人の心の問題であると同時に、経済の問題でもあります。
そこで「経済といえば」の日本経済新聞が限界集落をどのように報道」しているか調べてみました。

  • 住民の50%以上が65歳以上
  • 生活道整備や冠婚葬祭など共同体の維持が限界に近づいている
  • 国土交通省の2006年調査では全国に約8000の限界集落がある
  • 422集落が近く消滅する恐れがある
  • 大都市でも限界集落的に高齢者が集中する団地や住宅地が出現している

日経の限界集落に対する問題意識が見えます。

限界集落の現実

限界集落は人口の高齢化以外にも、交通アクセスが悪いという特徴があります。
船でしかたどり着けない場所にあったり、車が通れず最後は歩かなければならない山間部に限界集落があることもあります。

この交通アクセスの悪さが、限界集落の住民と行政サービスを提供する自治体の双方を困らせています。

また限界集落には、その土地の生産性が極端に低下し、ビジネス界から放置されているという特徴もあります。
農業、漁業、林業の生産性が低いだけではなく、観光資源としての魅力もほとんどないといった状況です。

交通の便が悪くても景観が良ければ人を呼ぶことができますし、温泉があればテレビ番組が取材に訪れることもありますし、その影響で観光客が来ることもあるでしょう。
その土地になんらかの生産性さえあれば、どんなにへき地であっても限界集落にならずに済みます。

限界集落の3つの典型的特徴

  1. 高齢者が多く若者が少ない
  2. 交通の便が悪い
  3. 土地の生産性が極端に低いかゼロに近い

空き家と限界集落の関係

空き家と限界集落の関係をみてみましょう。
都市部で問題になっている空き家問題は、限界集落にとっても非常に由々しき問題になっていることは想像に容易いです。
そこで限界集落の多いエリアと空き家率の高いエリアの相関関係を探ってみます。

次の2つの表は都道府県別の空き家率(A)と、65歳以上人口の割合が高い限界集落市町村と都道府県(B)を示したものです。

65歳以上の人口割合が50%を超えた限界集落は17市町村、9県でした(B)。
その9県のうち、長野、和歌山、高知、当島、群馬の5県は、空き家率が高い都道府県のベスト10に入っています。
さらに残りのうち山口、島根、奈良も全国の平均空き家率13.5%を超えています。

限界集落市町村を持つ都道府県の中で、空き家率の全国平均を超えていなかったのは愛知県だけでした。
限界集落問題と空き家問題は非常に密接なリンク、つまり、限界集落を有している都道府県は空き家率も高いということをしていることが伺えます。

A:都道府県別の年空き家率(2013年)   B:自治体ごと限界集落になっている市町村(2015年)
都道府県 空き家率 市町村 都道府県 65歳以上人口の割合
1 山梨県 22.00% 1 南牧村 群馬県 60.90%
2 長野県 19.80% 2 天龍村 長野県 58.30%
3 和歌山県 18.10% 3 大豊町 高知県 57.40%
4 高知県 17.80% 4 神流町 群馬県 56.80%
5 徳島県 17.50% 5 上勝町 徳島県 55.50%
愛媛県 17.50% 6 川上村 奈良県 55.40%
7 香川県 17.20% 7 大鹿村 長野県 54.40%
8 鹿児島県 17.00% 東吉野村 奈良県 54.40%
9 群馬県 16.60% 9 知夫村 島根県 54.20%
10 栃木県 16.30% 10 仁淀川町 高知県 53.90%
静岡県 16.30% 11 古座川町 和歌山県 52.60%
12 山口県 16.20% 12 東栄町 愛知県 52.50%
13 広島県 15.90% 13 上関町 山口県 52.20%
14 岡山県 15.80% 14 周防大島町 山口県 51.80%
大分県 15.80% 15 神山町 徳島県 51.20%
16 三重県 15.50% 16 北山村 和歌山県 50.80%
17 長崎県 15.40% 17 栄村 長野県 50.10%
18 岐阜県 15.20%
19 石川県 14.80%
大阪府 14.80%
21 島根県 14.70%
22 茨城県 14.60%
23 鳥取県 14.40%
24 熊本県 14.30%
25 北海道 14.10%
26 福井県 13.90%
宮崎県 13.90%
28 青森県 13.80%
岩手県 13.80%
30 奈良県 13.70%
31 新潟県 13.60%
32 京都府 13.30%
33 兵庫県 13.00%
34 滋賀県 12.90%
35 富山県 12.80%
佐賀県 12.80%
37 秋田県 12.70%
千葉県 12.70%
福岡県 12.70%
40 愛知県 12.30%
41 福島県 11.70%
42 神奈川県 11.20%
43 東京都 11.10%
44 埼玉県 10.90%
45 山形県 10.70%
46 沖縄県 10.40%
47 宮城県 9.40%
全国 13.50%

出典

限界集落がもたらす行政上の財政負担と人的負担は莫大

限界集落は今のところは消滅集落には至っていないため一定数の住民がいます。
日本の行政機関は、人が住んでいればそこに行政サービスを提供せざるをえません。

当然、限界集落にも、最低限の行政サービスを提供する必要があるので、財政難に苦しむ自治体は限界集落の存在自体に内心困っている様相が伺えます。

限界集落を支える行政コストの捻出に苦しむ地方自治体

財政が豊かな自治体は国内にほとんどなく、自治体は限界集落に割り当てる予算の捻出にとても苦労しています。

上下水道未整備の大分県の集落では「茶色いお風呂」に入っている

大分県豊後高田市の中黒土集落の住民たちは、長年「お風呂の底が見えない湯船」につかっていました。
上水道が整備されてないため、各家庭で井戸水をタンクにためて、不純物が沈殿してから水をお風呂用に使っていたそうです。

ところが中黒土集落の土壌は元々マンガンという物質が豊富に含まれているため、沈殿した水でも茶色に濁っています。それで風呂の水が茶色になってしまうのでした。
更に住民にはマンガン中毒と思われる関節痛を訴える人が多かったとのこと。

市街地の一般家庭の「水道水」は、川などの水を浄水して「上水管」を経由して家庭に届けていますので、同じように上水管を整備すればよいのですが、そうはいかない事情があります。

ところが、中黒土集落に上水管を整備するのに1億円の費用かかるとの試算が出てしまいました。中黒土集落の人口は11世帯15人で、うち13人が65歳以上の典型的な限界集落です。
中黒土集落を抱える豊後高田市としては、15人のために1億円は出せないと判断したのです。

しかし住民の健康被害が発生している問題なので、同市としてもただ放置できません。

妥協策として、小型浄水設備を中黒土集落に置くことにしました。
費用は800万円で、大分県と豊後高田市が折半したそうです。
さらに、住民が自らこの小型浄水設備の保守管理をすることになりましたので、限界集落に至っていない他の居住区とは大きな行政サービス上の隔たりが生まれてしまっています。

税収が少なければ行政サービスも当然のように縮小してしまうという、限界集落における懐事情の典型例です。

冬は無人になる集落

岐阜県本巣市の越波集落は、74歳の弟と85歳の兄しか住んでいません。
しかも両人とも、市街地に別途自宅を持っています。
つまり「通い集落」をして越波集落を守っているのです。

2人がそうまでして越波集落を守るのは「故郷を地図から消したくないから」です。
通うことが困難を極める冬期は、この集落は無人になってしまうそうです。

60代で仕事を引退…というわけいはいかない

富山県南砺市の西太地区には、10カ所の集落があります。
10カ所の総人口は860人とそれありのボリュームがあるのですが、最も小さい集落には11人しかいないなど限界集落の問題をそれぞれが抱えています。

西太地区では農業が主な産業となっているので住民は農地の管理をしなければなりません。
また、雪が降る地域なので冬場は雪かきを始め様々な苦労が絶えません。

そこで西太地区の有志たちが地域を支えるグループをつくりました。
用水路に整備や雪かきに困っている家庭を、有償で助けるのです。

と、ここまでは協力し合う地域の姿なのですが、このグループの中心メンバーの年齢は全員が60代なのです。
限界集落では60代はまだまだ若手として働かなければならないのです。

日本一の「限界自治体」の村長が考えていること

先ほど自治体ごと限界集落になっている市町村を紹介しましたが、その1位になっている群馬県南牧村の村長、長谷川最定さんが日本経済新聞のインタビューに応えていました。

南牧村は2015年時点で、村民の60.9%が65歳以上という超高齢社会の限界集落です。
1989年には28%にすぎませんでしたので26年で高齢化率が2倍になったのです。

限界集落の土地は、かつては生産性がありました。
だから人が住みついたのです。
しかし時代の流れの中で生産性が失われ、人がいなくなり限界集落になるのです。
南牧村も同じ道をたどっています。

以前は、山間部の水はけの良い畑がコンニャクイモの栽培に適していて、南牧村の特産品だったそうです。
ところがコンニャクイモの品種改良が進んで平地でも栽培できるようになって、南牧村の有意性が失われたのです。

大変残念なことに、南牧村役場の職員の3割は村外に住んでいる状況です。
2010年ごろに村内唯一の医療機関が閉院し、いまは近隣町村の医師が週2回往診に来る状況に陥っています。

村内には3軒の商店がありますが、そう遠くない先に閉店してしまう事が決まっています。
その後は3,000円の散髪に1万5千円のタクシー代をかけて村外に出かけなくてはならくなってしまいます。

長谷川村長は「災害にも耐えられない、ここでは住み続けられない」と話しています。

出典

「黒い水」を飲んでいた限界集落の挑戦
限界集落には最低限のインフラも揃わないまま生活を送っている住民がいる。大分県豊後高田市の中黒土集落もその1つ。マンガンを大量に含む「黒い水」を飲んでいた。集落は住民自らが管理する小型浄水設備の運営に乗り出した。
老いて消えゆく故郷 限界集落「いつまで守れるか…」: 日本経済新聞
落石が転がる細い林道を抜けると、山里の風景が広がった。昨年11月中旬、福井県境に近い岐阜県本巣市にある越波(おっぱ)集落では、自治会長の松葉三郎さん(74)が冬ごもりの支度に追われていた。集落は間もなく深い雪に埋まり、4月まで無人となる。
「消滅する」と言われた村 「ここで暮らせるのはあと10年か」: 日本経済新聞
「日本で最も消滅が近い村」。民間シンクタンクにこう名指しされたのが群馬県南牧村だ。65歳以上の高齢者が村民の58%、75歳以上でも41%を占める。その一方で、若い女性は今後30年間で9割減る。

限界集落の弱みに付け込んで潜り込む犯罪者達

2016年11月、限界集落のイメージを底辺に突き落とす事件が発覚しました。

都会から長野県と静岡県の限界集落に移り住んだ22人の男女が、大麻コミュニティを形成していたことが分かり、厚生労働省の関東信越厚生局麻薬取締部が大麻取締法違反の疑いで逮捕したのです。

22人のうち6組は夫婦で、子供がいる家庭もありました。英語講師をしていた米国籍の男もいました。

彼らは普段はそれぞれが山中の一軒家に住み、定期的に集まって音楽イベントを開いて大麻を吸うなどしていたというのです。

限界集落は行政の監理が行き届かないので「善人の顔をした悪人」たちに住みつかれたら、元の住民たちにはなすすべがありません。

ちなみにオウム事件の舞台となった山梨県上九一色村では、当時全人口1,700人の47%を占める約800人が教団信徒でした。
上九一色村は2006年に市町村合併で消えてしまいました。

出典

大麻所持疑い22人逮捕 移住先の限界集落で乱用か: 日本経済新聞
自宅に大麻を隠し持っていたなどとして、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部や長野県警などは25日までに、大麻取締法違反の疑いで長野県内の限界集落や静岡県に住む27~64歳の男女計22人を逮捕した。
旧上九一色、現場はいま オウム強制捜査22年:朝日新聞デジタル
 山梨県の旧上九一色村富士ケ嶺地区(現・富士河口湖町)にあったオウム真理教の教団施設に強制捜査が入ってから、22日で22年になった。13人が死亡し6千人以上が負傷した地下鉄サリン事件など多くの事件を起…

限界集落の問題は大都会も他人事でいられない

限界集落は田舎だけの問題ではありません。
意外なことに大都会東京にも、この課題に悩まされているエリアがあります。

岩手県知事や総務大臣を歴任し「ミスター地方行政」と呼ばれる増田寛也氏らが2014年、全国の「消滅可能市町村」を発表し大論争が巻き起こりました。

この件では「限界」どころか「消滅の可能性がある」と名指しされた一部の市町村長たちは街のイメージが悪くなると一様に怒りをあらわにしました。

その論争の中でひときわ注目を集めたのは東京都豊島区でした。
東京23区ですら人口減と超高齢社会の大波に飲まれてしまう、という観測はとても大きなインパクトがありました。

2040年、20~39歳の女性が50%の市町村で半減!日本創成会議が描く人口減少ニッポンの壮絶な未来――増田寛也座長に推計の狙いを聞く
2040年に20~39歳の女性の数が49.8%の市区町村で5割以上減る――。日本創成会議の発表したこの推計に大きな衝撃が走った。人口減少問題を放置すれば、どのような未来が待っているのか。日本創成会議・増田寛也客員座長が日本の未来を語った。

消滅可能都市として名指しされた豊島区の取り組み

東京都豊島区は、2040年に20~39歳の若年女性が半減し、人口を維持できないだろうと指摘されました、それが「消滅可能都市」の中身です。

この衝撃的な指摘を受けて豊島区は、消滅可能都市緊急対策本部を設置して、「消滅可能都市の発表を警鐘と受け止め、人口維持と地域活性化に取り組む」と宣言しました。

豊島区はさらに「住みたい街、住み続けたい街」というキャッチフレーズを掲げ、

  1. 女性にやさしい街づくり
  2. 高齢化対応
  3. 地域との共生
  4. アート・カルチャー都市づくり

――の4つの事業を推進することにしました。

「1:女性にやさしい街づくり」では、豊島区役所内に子育てナビゲーターを配置し、区民の子育ての悩みにアドバイスしています。
認可保育園の新設や、貧困の連鎖を予防するためひとり親家庭への支援にも取り組んでいます。

「3:地域との共生」では、JR池袋駅西口の風俗店が並ぶ歓楽街の暴力団を排除すべく、池袋署と協力してパトロールを強化し、刑法犯件数を減らしました。

出典

豊島区、23区で唯一の「消滅可能性都市」脱却へ 東京
■「女性が求める街」に子育てナビゲーター配置/客引き阻止のパトロールあたりが暗くなり、色鮮やかなネオンが輝き始める。大勢の人でにぎわう通りには大音量の歌謡曲が流…
持続発展都市を目指して|豊島区公式ホームページ

限界集落は維持するべきか?限界集落再生のメリットとは

限界集落は、いわば多くの(主に若い世代の)住民に見捨てられた場所です。
しかしその一方で、頑なに住み続けようとする人(主に高齢者)がいる場所でもあります。
そのわずかに残った住民が、もしも、限界集落を完全に手離してしまったらもう二度とそこに人が住むことはほとんどないといってもよいでしょう。

限界集落は日本らしい昔ながらの風景を醸し出し、都市部では失われてしまった郷愁、なによりもその地で生まれ育った人々の「ふるさと」が消えてしまうことがない社会は望ましいものであり、願わくばこれからも存続し続けてほしい…決してそれを否定する方はいないと思います。

次に、限界集落を維持するメリットを見い出して、再生に取り組む人々を紹介します。

自家発電機とバイオトイレで対応

まずは下記3枚の写真をご覧ください。
北方領土を除くと日本最北の有人島である礼文島の宇遠内という集落の写真です。

これはグーグルの衛星写真なのですが、この写真だけでは何の変哲もない、日本全国どこででも見かける「小さな漁村」です。

次に見ていただく写真は、礼文島(礼文町)と稚内の位置関係です。
「稚内」と「礼文町」を結んでいる点線は、フェリーの航路です。
宇遠内が、フェリーが到着する礼文町の中心部から離れていることが分かります。

再び地図を拡大して宇遠内に近づいてみると、この集落の周囲が山に取り囲まれていて、道路がないことが分かります。

ここは「本当の陸の孤島」で、礼文町の中心部から宇遠内に入るには、船で行くか登山道を歩くしかありません。宇遠内の人々は漁船に乗って買い物に出かけます。

宇遠内には電気が通っていますが、台風などに見舞われると簡単に電線が切断され、頻繁に停電に見舞われます。
そこで住民たちは自家発電機を置き、急場をしのぐのです。

下水管も通っていませんし、バキュームカーも宇遠内までは行けません。
以前は排泄物をためておくしかなく、臭気が住民を困らせていました。
ところがいまは、微生物で分解するバイオトイレを導入し臭いはほとんどなくなりました。

そもそも礼文島は豊かな漁場に恵まれているので、ここまで生活環境が整うと「暮らせる」集落になります。
宇遠内は、限界集落ではないのです。

3世帯9人の宇遠内住民のうち、65歳以上は3人しかいないので、高齢化率が33.3%なのです。限界集落の定義は「65歳以上人口が50%以上」なので、宇遠内は限界集落ではありません。

宇遠内から出た20代の男性が妻を連れて里帰りして、その夫婦に子供が産まれたので平均年齢が一気に若返ったのです。

宇遠内の集落は「船」「自家発電機」「バイオトイレ」「豊かな漁場」の4条件を揃えることで、日本らしい風景をいつまでも維持できることを証明したのです。

「限界突破集落」は地方衰退の象徴ではない 限界を突破して生きる集落の知恵と工夫
老朽化したインフラ、貧弱な交通網、自治や冠婚葬祭すらままならない人の少なさ──。「限界集落」と聞いてそんなイメージを抱くに違いない。だが日本には、明らかに「限界」の環境にありながら、共同生活を維持するエリアも存在する。

空き家ビジネスが限界集落を救う

これは「元々その土地に経済的なポテンシャルがあれば」という前提条件は必要ですが、礼文島宇遠内の様子を見ると、莫大なコストをかけなくても限界集落は維持できそうです。

そして空き家を活用すると「コストをかける」どころか、限界集落で利益を生むこともできる事例があるのです。

限界集落問題のソリューションとしての「空き家活用」

引用:http://www.miyazakibrand.jp/brand-list/19-hebesu/

これは宮崎県特産の柑橘系果実で「へべす」といいます。
すだちとかぼすの中間の大きさです。

へべすは知名度のなさと栽培農家の高齢化で、一時は消滅の危機にありました。
ところがこの「限界果物」が「限界集落」の救世主となったのです。

宮崎県日向市の塩見小原地区は、人口20人ほどの集落です。
ここでへべすや野菜をつくっている農家の黒木洋人さんが、空き家として放置されていた古民家を改装してカフェ「森みち」を開き、新鮮野菜を使ったハヤシライスやへべすを使った料理を提供しています。

黒木さんは塩見小原地区の農家の3代目で、農家の跡取りとしての自身の危機と、塩見小原の危機と、へべすの危機を同時に感じて「外の人を呼ぶ」方法を考えたのです。

最近はクラウドファンディングという一般の人からお金を集める仕組みを使い、へべす栽培の拡充にも取り組んでいます。

森みち
森みち、日向市塩見 - 「いいね!」1,012件 - 森みちのfacebookページです。 arneのご予約は 0982666171までおねがいいたします

「空き家」が「古民家」になった途端に人を呼ぶ魅力が生まれた

一般的に「限界集落」も「空き家」も、その言葉からは良い響きは感じられません。
しかし、そこに価値を見い出す人が現れると、両者は「田園風景」や「古民家」と呼ばれるようになり、途端に魅力的なイメージが膨らみます。

さて、唐突ですがここで1つクイズです。

下の表は「アジアからの訪日外国人の行ってみたい日本の観光地」ランキングです。
空欄になっている「2位」には、何が入るか予想できますでしょうか?

1位 温泉
2位
3位 富士山
4位
5位 和風旅館
6位 新幹線
7位 雪景色
8位
9位 紅葉
10位 テーマパーク

答えは「日本的な街並み」です。

外国人は日本独特の景観に強い関心を持っているのです。
それはそうでしょう、農村の田畑の秩序ある風景や、山間部の集落の幽玄な雰囲気、そして礼文島宇遠内のようなありえない場所での人々の営みは、日本人が見ても「日本っていいな」と感じるくらいです。

限界集落は日本独特の景観の代表格といってもよく、島根大学の飯野公央准教授(経済政策)は限界集落であっても「地域の魅力が高まれば、外国人観光客を呼び込むことができる」と述べています。

外国人観光客を呼ぶカギとなるのが、古民家です。
なぜなら限界集落は人が到着しづらい場所にあるので、その雰囲気を存分に味わうには宿泊施設が必要になるからです。

兵庫県篠山市(人口約4万人)の丸山地区は12戸しかなく、そのうち7戸が空き家という空き家率58%の限界集落でした。
この地の魅力に目を付けたのは、空き家活用事業やコンサルタント業務を行っている一般社団法人ノオトでした。

丸山地区の空き家の持ち主から建物を借り受け、贅沢な改装をほどこして3軒の古民家宿をつくったのです。
3軒の宿を総称して「集落丸山」と名付けています。

集落丸山を利用する観光客は、1軒丸ごと借りることになります。
料金は、1棟の借り賃が1泊4万円で、そのほかに宿泊者1人ごとに5千円が必要になります。
4人で1泊すると、朝食付きで6万円(=4万円+5千円×4人)かかる計算になります。

集落丸山は外国人観光客だけでなく日本人客も訪れるようになり、テレビや新聞なども頻繁に取り上げています。

また、観光地になったことで周囲の人々が丸山地区に注目するようになり、集落丸山の開業前に2.1ヘクタールもあった耕作放棄地は、ゼロになりました。
都市部の人たちが丸山地区で農業を始めるようになったからです。

Uターンしてきた丸山地区出身者も現れました。
限界集落が見事に再生されたのです。

丸山地区の再生ポイントをまとめるとこうなります。

  • 限界集落が持つ魅力に気づく
  • 魅力に気づいた人が「空き家」を宿泊施設にしようと決める
  • 内装の改修を徹底し「つまらない空き家」を「魅力ある古民家」に変身させる
  • 宿泊施設があるので観光客は「日本の田舎」を存分に体験できる
  • 観光ビジネスが成立すると派生ビジネスが起きる

出典

古民家「再生」で地方創生、なぜ「限界集落」に観光客が殺到したのか
政府は12月、全国各地の歴史的な資源を活用した街づくりを支援する方針を固めた。古民家を宿泊施設などに改装し、観光客を呼び込むとともに、地域活性化を図るのが狙いで、兵庫県篠山市の丸山地区をモデルに、農家民泊の推進策や古民家活用の支援策を3月末までにまとめる。この方針について、島根大法文学部の飯野公央准教授(経済政策)は「...
NIPPONIA - なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる
NIPPONIAとは「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる。」という想いのもと、歴史的建築物の活用を起点に、その土地の歴史文化資産を尊重した持続可能なビジネスとエリアマネジメントを実践する取り組みです。
古民家の宿 集落丸山【築150年の丹波篠山の宿】
丹波篠山の宿「集落丸山」は古民家の宿です。篠山市で築150年の古民家を宿として改修する事で、丸山という限界集落を再生しました。古きよき暮らしの豊かさを感じるひとときをご堪能ください。MARUYAMA VILLAGE

総務・農林・国交の3省の限界集落への対応方針

人口問題は総務省が、農林水産業の問題は農林水産省が、土地の問題は国土交通省が、それぞれ取り扱います。

限界集落は人口問題と農林水産業の問題と土地の問題をすべて含むので、この3省は限界集落に強い関心を持っています。

総務省の限界集落問題への対応方針

総務省はいま、限界集落を再編する方向で進めています。
同省の再編方法は2つ「1.行政的再編」と「2.機能の再編」で構成されています。

行政的再編と機能の再編

1.「行政的再編」は、近隣の集落を統合・合併させることです。
総務省は近隣する集落のうち、より大きいほうを中心集落、より小さいほうを基礎集落と名付け、基礎集落の住民に中心集落に移転してもらう方法を考えています。

2.「機能の再編」は、小学校の学区単位で集落をとらえ、近隣する集落が広域的組織をつくり集落ごとに機能を分担する方法です。

過疎市町村と限界集落

限界集落と似た言葉に「過疎市町村」があります。
限界集落や限界集落予備軍が多く存在する市町村が過疎市町村になます。

冒頭でご説明したように「限界集落」が法律で定義されていないのに対し「過疎集落」は法律で定義されています。

過疎地域自立促進特別措置法(以下、過疎法)では、次の条件に当てはまる市町村を「過疎市町村」と呼んでいます。

第1条件 ・1960年~1995年の人口減少率が30%以上
・1960年~1995年の人口減少率が25%以上+65歳以上人口が24%以上
・1960年~1995年の人口減少率が25%以上+10歳~30歳未満人口が15%以下
・1970年~1995年の人口減少率が19%以上
のいずれかに当てはまり、
第2条件 ・1996年度~1998年度の財政力指数の平均が0.42以下で、かつ、公営競技収益が13億円以下

その他にも条件設定があるのですが、詳細すぎるのでここでは割愛します。

要するに「人口の減り方がいちじるしく、高齢者が多く、若年層が少なく、自治体の財政状況が悪い場合」に過疎市町村と認定されるのです。

2017年現在、国内には1,718の市町村があり、そのうち過疎市町村は616で全体の36%を占めます。

総務省では過疎市町村マップというデータを作成しています。
下の日本地図のピンクの部分が過疎市町村で、関東地方と沖縄以外はまんべんなくピンクが広がっている様子が分かります。

また総務省は、都道府県ごとの過疎市町村の数を公表しています。
下の表は、都道府県内の市町村に占める過疎市町村の割合が大きい順に並び替えたものです。

過疎市町村の率が高い都道府県ランキング
都道府県内の市町村の数(A) 過疎市町村の数
(B)
過疎市町村の率
(B/A)
1 鹿児島県 43 35 81.4%
2 北海道 179 144 80.4%
3 島根県 19 15 78.9%
4 高知県 34 24 70.6%
5 大分県 18 12 66.7%
6 秋田県 25 16 64.0%
7 岩手県 33 18 54.5%
8 青森県 40 21 52.5%
9 山形県 35 18 51.4%
10 和歌山県 30 15 50.0%
愛媛県 20 10 50.0%
宮崎県 26 13 50.0%
13 熊本県 45 22 48.9%
14 岡山県 27 13 48.1%
15 長崎県 21 10 47.6%
16 徳島県 24 11 45.8%
17 広島県 23 10 43.5%
18 福島県 59 25 42.4%
19 鳥取県 19 8 42.1%
20 沖縄県 41 17 41.5%
21 長野県 77 29 37.7%
22 香川県 17 6 35.3%
23 奈良県 39 13 33.3%
24 山口県 19 6 31.6%
25 新潟県 30 9 30.0%
26 石川県 19 5 26.3%
27 山梨県 27 7 25.9%
28 群馬県 35 9 25.7%
29 福岡県 60 15 25.0%
佐賀県 20 5 25.0%
31 三重県 29 7 24.1%
32 京都府 26 5 19.2%
33 岐阜県 42 7 16.7%
34 東京都 39 6 15.4%
35 宮城県 35 5 14.3%
36 兵庫県 41 5 12.2%
37 福井県 17 2 11.8%
38 静岡県 35 4 11.4%
39 千葉県 54 5 9.3%
40 栃木県 25 2 8.0%
41 富山県 15 1 6.7%
42 愛知県 54 3 5.6%
43 大阪府 43 1 2.3%
44 茨城県 44 1 2.3%
45 埼玉県 63 1 1.6%
46 神奈川県 33 0 0.0%
滋賀県 19 0 0.0%
1,718 616

次の表は、データの中身は同じなのですが、各ブロックごとに並び替えてみました。

都道府県内の過疎市町村の率(ブロック別)
都道府県内の市町村の数 過疎市町村の数 過疎市町村の率 ブロック内の市町村の数 過疎市町村の数 過疎市町村の率
北海道・東北ブロック 北海道 179 144 80.4% 406 247 60.8%
青森県 40 21 52.5%
岩手県 33 18 54.5%
宮城県 35 5 14.3%
秋田県 25 16 64.0%
山形県 35 18 51.4%
福島県 59 25 42.4%
関東ブロック 茨城県 44 1 2.3% 320 31 9.7%
栃木県 25 2 8.0%
群馬県 35 9 25.7%
埼玉県 63 1 1.6%
千葉県 54 5 9.3%
東京都 39 6 15.4%
神奈川県 33 0 0.0%
山梨県 27 7 25.9%
東海・北陸ブロック 静岡県 35 4 11.4% 318 67 21.1%
新潟県 30 9 30.0%
富山県 15 1 6.7%
石川県 19 5 26.3%
福井県 17 2 11.8%
長野県 77 29 37.7%
岐阜県 42 7 16.7%
愛知県 54 3 5.6%
三重県 29 7 24.1%
近畿ブロック 滋賀県 19 0 0.0% 198 39 19.7%
京都府 26 5 19.2%
大阪府 43 1 2.3%
兵庫県 41 5 12.2%
奈良県 39 13 33.3%
和歌山県 30 15 50.0%
中国ブロック 鳥取県 19 8 42.1% 131 63 48.1%
島根県 19 15 78.9%
岡山県 27 13 48.1%
広島県 23 10 43.5%
山口県 19 6 31.6%
徳島県 24 11 45.8%
四国ブロック 香川県 17 6 35.3% 131 55 42.0%
愛媛県 20 10 50.0%
高知県 34 24 70.6%
福岡県 60 15 25.0%
九州・沖縄ブロック 佐賀県 20 5 25.0% 214 114 53.3%
長崎県 21 10 47.6%
熊本県 45 22 48.9%
大分県 18 12 66.7%
宮崎県 26 13 50.0%
鹿児島県 43 35 81.4%
沖縄県 41 17 41.5%
総計 1,718 616 1718 616

過疎集落に空き家不動産を持っているオーナーの方は、ご自身所有物件の土地が限界集落に将来的に該当する可能性があるということになります。

遠方にあるご実家を相続して空き家になったままである場合などは、なかなか足を運ぶことも難しい状況でしょうから、空き家そのものを処分するか、別途活用の方法を見出すかなどの方針を早めに決めるべきです。

でないと、過疎集落が限界集落になってしまってからでは、なかなか空き家をまともな値段で販売する事すらできなくなってしまう可能性もあることでしょう。
国や自治体が空き家のあるエリアの将来をどのように考えているのか、その情報を常に入手しておくことは非常に重要です。

出典

農林水産省の限界集落問題への対応方針

農林水産省が懸念しているのは、限界集落が次々と消滅し、国土保全や水源涵養、良好な景観形成が保てなくなることです。
水源涵養とは、森林の土壌が雨をためて河川に流れる水量を調整したり、雨水を浄化したりする機能のことです。

そこで農林水産省は、集落が衰退する様子や集落が消滅した場合の影響を調査し、集落の管理方法を検討しています。
同省は、限界集落の住民の「あきらめない」意識を支えるには、地方自治体が限界集落を常に見つめ続けることが必要であると考えています。

正直、農水省の考え方は曖昧でよくわからない施策です。ただ死にゆく集落を見守るだけでしょうか…実際のところ、省庁としてもどうしてよいのかわからないというのが実態なのかもしれません。

また、兵庫県丸山地区の宿泊施設「集落丸山」のように集落外部からの目を引きつける工夫も重視しています。

さらに「前向きな撤退」も提唱しています。

集落を完全に放棄するのではなく、集落の住民たちで「将来も農地として利用する土地」と「将来は農地として利用しない土地」を定め、効率的に管理してもらおうという考え方です。

出典

「限界集落における集落機能の実態等に関する調査報告書(農林水産省、2006年度)

国土交通省の限界集落問題への対応方針

国土交通省の調査によると、2010~2014年の5年間に、99市町村で190の集落が消滅しています。
このうち東日本大震災によるものは29集落でした。
それを除くと中部、中国、四国、九州での消滅集落の広がりが目立ちました。
また、2015年からの10年間で、新たに570の集落が消滅すると予測しています。

国土交通省は限界集落問題への対策として

  1. 行政サービスの提供方策を検討する
  2. 人口減少対策としては居住地域をコンパクト化する
  3. 住民や行政をネットワーク化する

必要があると考えています。
また同省は、過疎地域に回帰する若者の動きも把握していく考えです。

富山や青森といった例のように、コンパクトシティへ国全体として移行していく考え方が国土交通省主導の限界集落対策といえます。コンパクトシティについては、別途の記事で述べようと思います。

出典

資料「過疎地域等条件不利地域における集落の現況把握調査報告書」(国土交通省、2015 年)

まとめ – 限界集落になる前に、地方の空き家の処分方針や活用方法を考えておくべきである

あなたの空き家不動産が限界集落や限界集落予備軍にある場合、その売却や貸し出しは困難を極めることがご理解いただけたと思います。

空き家が建っている地域に関する情報は、空き家処分で損をしないためにとても重要です。
省庁や地方自治体の動向を見定める必要があるでしょう。

限界集落はもちろん、過疎地域にある空き家不動産は、売却するにせよ活用するにせよ、かなりの工夫と努力、そして運が必要になります。
該当する方は、先手先手で動き出すことを強くお勧めいたします。

The following two tabs change content below.
空き家隊長

空き家隊長

実家の相続をきっかけに空き家問題に直面。すったもんだの末に何とか売り抜ける。その際に経験したこと、様々な外部のプロに教えて頂いた空き家問題、土地活用問題について記事にしていきます。
スポンサーリンク

土地・家・マンションの無料一括査定サイト40社