空き家不動産が増加する背景と空き家問題対策の今

空き家増加問題の背景として、日本は高齢化と人口減少が同時に起きているから、空き家が増えるのは当然――と思っていませんか。

高齢者が亡くなればそれまで住んでいた家が空き家になりますし、人口が減れば誰も住まなくなる家が増えます。
しかしそれだけが理由で空き家が増えているわけではないのです。

日本国内および個人個人の経済情勢と経済事情や、日本人独特の住宅への考え方そのものが、空き家を増やしている原因となっています。

さらに言うと、あなたのような空き家オーナーが所有している不動産が「売れない」「貸せない」のは、国の制度そのものにも欠陥がある可能性があります。
今回は空き家が増え続けるその背景と、最新の空き家問題対策を紹介します。




過去の住宅政策がすべて裏目に出てしまった状況である

問題になる空き家の最も大きな特徴は、建屋そのものが古く利用価値が薄いということです。
空き家問題が社会問題として注目され始めたのはここ5~6年のことですが(当原稿執筆時は2017年10月)、空き家問題の根幹は過去の住宅政策にあります。

その昔、将来的に空き家問題へとつながる可能性を予見できず、闇雲に住宅を建て増やすことだけに専念してきた国の政策と、それに乗っかって成長を遂げてきた住宅関連業界の歴史こそが、今現在私たちが直面している空き家問題に直結しています。

更に、日本不動産史最大の事件であるバブル経済も、空き家問題を2重に複雑にしています。あの不条理な好景気は、空き家戸数を爆発的に増やす潜在的エネルギーだったともいえます。

持家取得政策という過去の亡霊が、空き家問題へと姿をかえてよみがえった

空き家問題はモンスターがある日突然と出現したというより、過去の亡霊が現れたようなものです。60年という長い年月をかけて、ゆっくりと社会問題に成長しました。

1955年から1973年にかけて、日本は高度経済成長という空前の好景気にわきました。
現在の中国ですらGDPの成長率は7%程度なのに、高度経済成長期の日本の成長率は20%を超えることもありました。

この時期、日本政府は持ち家取得政策を打ち出しました。
政府系の金融機関が住宅を買う人(主にサラリーマン)に対して極端な低利で融資を行い、住宅ローンを使うと減税の対象になりました。

日本国が経済活性化策の1つとして「たくさん働いて、たくさん給料をもらって、良い家を買おう」と国民を鼓舞したのです。

そのため市場では一気に大量の住宅が必要になったので、建物としての耐久性は十分ではないものの、とにかく数を供給するために沢山の戸建て住宅が建築されました。
また、当時は現代のような(過去と比較すると)比較的に優れた工法や耐久性のある建材も存在していませんでした。

記憶にある方も多いでしょうが、このころの日本の住宅は欧米から「ウサギ小屋」と揶揄されていた時代です。
建物の質が悪いだけでなく、とにかく旺盛な住宅需要を満たすために、狭い土地に誰もが無理やり住宅を建てていった時代です。

しかし当時の私たち日本人はそれで満足していましたし、それが当たり前のことでした。
なぜなら、不動産価値があるのは住宅ではなく土地であるため、建屋そのものの価値(ここでは特に経年耐久性)について、深く考える人はほとんどいなかったはずです。

銀行からローンを組んでお金を借り、土地さえ手に入れておけばそれだけで十分資産になる(しかも土地価格は上がり続けることが当時の常識でした)時代だったので、住宅そのものは20~30年ぐらいもてばよかったのです。
20年後は値段が上がった土地を売って、更に別の家も買えるだろうとまで、不動産の専門家ですら楽観していた時代です。

国に背中を押されて乱立した住宅メーカーは、イージービルドの建売住宅を次々つくることで儲かりましたし、住宅を買う人もマイホームさえ手に入れれば「(サラリーマンとして)人生の成功者」に名を連ねることができた時代でしたので、安い住宅の大量供給を歓迎しました。

売る側にとっても買う側にとっても、親子代々長い間住むことができるような耐久性の高い(しかし高額な)住宅よりも、「安い使い捨て住宅」のほうが万事都合が良かったのです。

このように日本の近代住宅は、後世に残すという意識でそもそも建てられていません。
その結果、60年後の2回目の東京オリンピックに沸く日本において、「住めない空き家」「住みたくない空き家」という亡霊になって過去の政策結果が姿を現したというわけです。

高度経済成長の終わり、そしてバブル崩壊で空き家問題の拡大が決定的となった

ところが高度経済成長に陰りが見え始めると、国民に経済的余裕がなくなり住宅や土地を買えなくなってしまいます。

そこで政府は住宅業界保護のため、別途に国民の住宅購買意欲を上げる政策を打ち出します。
住宅が建っている土地の固定資産税を値下げしたのです

高度経済成長期の最終年となる昭和48年(1973年)に、住宅が建つ土地の固定資産税を、更地の2分の1にしました。
その結果、国民は「土地を持っているだけでは損、土地に住宅を建てれば税金が安くなる」と考えるようになりました。

当時の政府は翌年の1974年には2分の1を4分の1にして、さらに住宅付きの土地の固定資産税減税に拍車をかけました。

それから10年後にバブル景気が到来します。
(一般的にバブル期は1986年から1991年までとされています。)

さて、いまの40代以上の方であれば「土地神話」という言葉はご存知のはずです。

土地は時間とともに必ず値上がりするので、社会人になって給料をもらったらしっかり貯金をし、そのお金を頭金にしてローンを組んで土地を買えば、生涯安泰である――という考え方です。これが1990年代初頭までの日本の常識でした。

バブル経済当時は株式の価格も急上昇し続けて、1989年12月末に38915円の最高値を記録しています。株で儲けた人がその利益で土地を買って、先の固定資産税減税策に刺激されたこともあり、次々と住宅を建てていきました。

ところが1991年にバブルが崩壊すると、土地の値段はみるみるうちに下がっていきました。
ついこの間までは「1日でも早く買わなければ損をする」といって土地を買っていた人々が、今度は「1日でも早く売らないと損をする」といって土地を売り始めたのです。

土地の価格が下がるということは、土地の所有者の資産額が減るということなので、株式を保有する余裕もなくなってきます。
自然、株を手放す人も増えて株価が急落し、企業業績も落ち込みます。
日本経済の一大事だったのは言うまでもありません。

そこで当時の政府は、バブルが崩壊した年の3年後の1994年に、住宅が建つ土地の固定資産税をとうとう更地の6分の1にまで下げたのです。

政府が国民に向かって「どうか土地付きの住宅を手放さないでください」というメッセージを送ったようなものです。

極論すると、政府が「減税するから住宅を手放さないで」と言ったので、空き家になっても手放さない(手放せない)人が多く存在しており、これが空き家問題の大きな原因の1つとなっています。

空き家対策特別措置法の現実的な適用範囲は如何ほどか?

このような経緯で、どんな状態の家でも、かつてそこに人が住んでさえすれば、その家が建つ土地の固定資産税はいまだに更地の6分の1の金額に抑えられています。

この固定資産税減税6分の1の特例制度が、朽ちた家が撤去されない状況をつくりだしている原因であるにも関わらず、この制度は基本的に存続してます。

確かに2015年に、この固定資産税減税6分の1制度が少し変わりました。
空き家対策特別措置法の誕生により、危険性が高く有害な迷惑空き家を「特定空家等」と行政が認定すると、その特定空家等が建っている土地においては固定資産税減税6分の1特例が使えないようにする新制度が始まったのです。

この空き家対策特別措置法によって、特定空家等のオーナーは、これまでの6倍の固定資産税を支払わなければならなくなります(行政の勧告、命令等に従わない場合は特定空き家等の強制解体による撤去も行われます)。

しかし、特定空家等の認定は簡単ではありません。
国や自治体が国民の財産を「害」と認定するわけですから、その審査は慎重に進めなければならないのが実際のところです。

市町村は、特定空家等になりそうな空き家を見つけると、その所有者に改善を指導します。
その指導に従って所有者が空き家を改善すれば、特定空家等に指定されません。

行政から厳しく指導されて長期間無視をし続けるというのは、並大抵の神経でできることではありません(稀にこういった行政指導を全く意に介さない強者がいることも確かですが…)。
したがって、特定空家等に認定されるまで空き家トラブルがもつれ込み、実際に固定資産税が6倍に戻されてしまうのは、とても稀なケースになりそうです。

このように減税特例の廃止が適用される事実上の範囲と効果を考えてみると、空き家対策特別措置法による、特定空家等の固定資産税を6倍にする仕組み自体は、空き家対策の決定打というよりも、空き家対策の「スタートライン」に過ぎないと認識すべきでしょう。

出典

「『特定空家等に対する措置』に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」(国土交通省)

名古屋市が空き家対策は800年以上かかる?

特定空家等を指定して減税特例を取消し、更には特定空き家等の強制解体までに及ぶ空き家対策特別措置法。
この制度がなぜ空き家対策の決定版になりえないのかは、名古屋市の事例を見れば分かります。

名古屋市は2015年度に、市民から通報があった1,116軒の住宅を調査し、うち205件を特定空家等に認定しました。
名古屋市の住宅総数は2013年に126万戸あり、そのうち空き家は17万戸もあります。
17万戸の空き家を年205件のペースで調査認定すると、829年かかります

もちろん名古屋市の17万戸の空き家の中には、まだまだ機能的に使える空き家も多数含まれているでしょう。
しかし空き家は無管理状態のまま長期間放置しておくと、経年劣化により荒れ果てた末に、必ず近隣住民にとっての迷惑空き家へと変貌します。

さて、調査認定に829年かかるという数字も空恐ろしいものがあるのですが、更にもうひとつ恐ろしい事実があります。
それは、新たな空き家がこれからも増え続けるだろうという現実です。

次章で空き家が増殖している状況を見てみます。

新たな空き家は今後も増殖する、これだけの証拠

今回の記事を書くに当たって調査をしてみたところ、国の最新の空き家に関するデータは2013年のもので、その時点で国内には820万戸の空き家が存在し、すべての住宅に占める空き家の率は13.5%でした。

いずれも過去最高の数字です。

そこで焦った政府は特定空家等制度(空き家対策特別措置法)を成立させたわけですが、迷惑空き家のペナルティは固定資産税が6倍になるだけではありません。

何度か触れているように、特定空家等の所有者が、自治体の自己撤去命令に従わなかった場合、自治体が強制的に迷惑空き家を撤去してその撤去費用を所有者に請求することができるのです。

一見すると相当に効力がありそうな制度ですが、市民の個人資産である住宅を特定空家等に認定するには長いプロセスと様々な適用条件という高い壁があり、「国内の迷惑空き家が次々片付いていく」というイメージとは程遠いというのが現状です。

行政がこのように空き家対策にモタモタ(?)している間に、新たな空き家が生まれ、まだまだ増え続けていくことが確実であることが以下のデータからわかっています。

迷惑空き家の予備軍たる「その他空き家」が50.5%増加

空き家の総数は、2003年の659万戸から2013年に820万戸にと24.4%も増加しました。
さらに個々の空き家の質を注意深く見ると、さらに恐ろしさが増してきます。

空き家の中には、将来値上がりが期待できる空き家も確かに存在していますし、住宅メーカーが新築したばかり住宅(販売可能性が高い住宅ですね)も、買い手が付くまでは空き家に数えられます。

このように一口に空き家といってもここでは様々な状態と環境の物件が存在しており、正確に空き家の状態を考えてみると、次の4種類に分別することができます。

  1. 二次的住宅:別荘や、普段住んでいる住宅とは別にたまに寝泊りするために使っている住宅
  2. 賃貸用住宅:新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
  3. 売却用住宅:新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
  4. その他住宅:現在は人が住んでいない住宅、取り壊す予定の住宅

この4つの視点から、先ほどの統計数字の内訳を見てみましょう。

空き家総数 内訳
二次的住宅の空き家 賃貸用住宅の空き家 売却用住宅の空き家 その他住宅の空き家(総数に占める割合)
2003年 659万戸 50万戸 367万戸 30万戸 212万戸(32.2%)
2013年 820万戸 41万戸 429万戸 31万戸 319万戸(38.9%)
増加率 24.4% -18.0% 16.9% 3.3% 50.5%

空き家総数が2003年から2013年間の10年間に24.4%増えているのに対し、その他住宅の空き家は50.5%も増えているのです。

二次的住宅・賃貸用住宅・売却用住宅の空き家は、当面は問題にならないのはいうまでもないでしょう。
その他住宅の空き家こそが、特定空家等または迷惑空き家予備軍になりえる住宅といえるのがお分かりになるでしょう。

さらに、その年の空き家総数に占める「その他住宅の空き家」の割合は、2003年の32.2%から2013年には38.9%にまで上昇しています。

空き家問題の急拡大ぶりが、統計数値からも分かります。

空き家の戸数増加は地方よりも都会が中心

空き家問題がなぜ社会的に重大な問題として目されているかというと、空き家を撤去するには非常に大きなお金が必要になるからです。

空き家の撤去にお金がかからなければ、おそらくはこれほどの問題にはありません。
行政で躊躇なく特定空き家に認定してしまい、バンバン解体すればいいですし、そもそも空き家オーナー自身が「お金がかからないならば」、もっと自分で解体解決しているケースが多いはずです。

空き家の解体単価は坪数にもよりますが、100万円~300万円といったところでしょうか。
マスコミでは「東京の空き家率が上昇して大変だ」などと騒いでいますが、空き家率よりも空き家の数上昇のほうが、空き家問題に暗い影を落とすということです。

だから住宅数が多い大都市での空き家問題は非常に深刻です。

空き家率とは、住宅総数に占める空き家の割合です。

例えば、空き家率が高い都道府県上位5つは次の通りです。

 順位  都道府県 空家率 空家数
1位 山梨県 22.0% 92,900戸
2位 長野県 19.8% 194,000戸
3位 和歌山県 18.1% 86,000戸
4位 高知県 17.8% 69,800戸
5位 徳島県 17.5% 64,000戸
合計 506,700戸

上位5県ともいわゆる「地方」と呼ばれる自治体であり、地方ほど空き家率が高くなることが分かります。

いずれの空き家率も全国平均の13.5%を大きく上回りますが、5県の空家数を合わせても51万件ほどです。

そこで次に、空家数が多い都道府県上位5つを並べてみます。

順位 都道府県 空家率 空家数
1位 東京都 11.1% 817,100戸
2位 大阪府 14.8% 678,800戸
3位 神奈川県 11.2% 486,700戸
4位 愛知県 12.3% 422,000戸
5位 北海道 14.1% 388,200戸
合計 2,792,800戸

見事なほど都会が並びました。
北海道も札幌市という190万人都市を抱えます。

空き家の撤去費用は、都会のほうが高く、地方のほうが安いイメージを持っているかもしれませんが、例えば名古屋の会社は、全国一律料金で住宅の解体を請け負っているところもあります。従ってここでは、解体コストには都会と地方の差はない、として考えてみます。

そうなると、約50万戸の空き家を抱える神奈川県がすべての空き家を処分しようとした場合、その処分予算は、山梨県と長野県と和歌山県と高知県と徳島県の空き家処分予算を合わせた金額が必要になる、というわけです。

神奈川県の処分費用=山梨県+長野県+和歌山県+高知県+徳島県の処分費用

繰り返しますが、き家問題はお金の問題です
ということは、空き家処分にお金がかかる都会ほど、空き家問題が深刻になるのがはっきりしているというわけです。

世帯数の増加よりも住宅供給増加スピードが上回る

さて、日本の世帯は核家族化が進んでいます。
これは1軒の住宅に住む家族の人数が減る現象ですので、より多くの住宅が必要になるということを意味しています。

しかしこの核家族化効果も、空き家問題の前には焼け石に水状態のようです。

1968年の1世帯当たりの住宅戸数は1.01戸でした。ところがこの数はじわりとですが年々増え続け、2013年には1.16戸にまで達しました。

いま「焼け石に水」と表現しましたが、それでも1968年から2013年の間に世帯数は2倍以上に膨れ上がっているのです。
それにも関わらず、住宅供給のスピードが世帯数の増加を上回っているため、空き家問題も加速しているのです。

区分 1968年 1993年 1998年 2003年 2008年 2013年
総世帯数 千世帯 25,320 41,159 44,360 47,255 49,973 52,453
住宅総数 千戸 25,591 45,879 50,246 53,891 57,586 60,629
一世帯当たりの住宅戸数 1.01 1.11 1.13 1.14 1.15 1.16

日本人の住宅観:新築住宅が増え、滅失住宅が減っている

ヨーロッパの人たちもアメリカ人も、築100年を超えるような古い家をリフォームしたり、古い家の味わいを楽しんだりしている文化があることはよく知られています。

しかし日本人は、古い家を自分で修理しながら長く楽しむというよりも、新しい家に住みたいという気持ちがとても強い住宅観を持っています。
そんな日本で新築住宅が増え続ければ、古くなった家から順番に見向きされなくなってしまい、結果として更に空き家が増えていくのは当然といえるでしょう。

ところで建屋の解体などをして住宅が減った数のことを「滅失戸数」といいますが、これだけ空き家問題が騒がれているのに、滅失戸数の数が増えていません。

ここから見える事として、今の日本は空き家が増える局面と、空き家が減らない局面を同時に迎えているということです。

その数の推移は以下の通りです。

年度 新設住宅
着工戸数(千戸)
滅失戸数(千戸) 差し引き(千戸)
1997 1,341 233 1,108
1998 1,180 215 965
1999 1,226 220 1,006
2000 1,213 199 1,014
2001 1,173 176 997
2002 1,146 163 983
2003 1,174 160 1,014
2004 1,193 174 1,019
2005 1,249 151 1,098
2006 1,285 144 1,141
2007 1,036 131 905
2008 1,039 127 912
2009 775 112 663
2010 819 137 682
2011 841 115 726
2012 893 125 768
2013 987 127 860
2014 880 109 771
2015 921 111 810
合計 20,371 2,929 17,442

新しくできる住宅の戸数である新設住宅着工戸数は、リーマンショックの翌年の2009年に激減したものの、2014年4月に消費税が8%に上がった以降も堅調に推移しています。

一方の滅失戸数はなかなか増えません。

1997年から2015年までの18年で国内の住宅は、2,037万戸も増え293万戸しか減っていません。

都合、日本には1,744万戸もの住宅が18年のうちに増えてしまったのです。

尚、滅失戸数がいまだに増えないのは先に説明しました「空き家対策特別措置法」の影響が大きいでしょう。

空き家オーナーに「固定資産税6分の1」と「固定資産税6倍+空き家解体費用」の選択肢を示せば、当然前者を選ぶ人の方が多いはずです。
空き家が朽ちてきても「行政から何か言われるまでは、しばらく何もしないでおこう。今すぐ解体費用を出すなどバカバカしいし、税金が今すぐ6倍になるのも嫌だ」という心理が空き家所有者に働いても無理がありません。

また、囲繞地や旗状地のように、袋小路の先にあるような空き家の場合、一度解体してしまったらその更地に再度家を建てられなくなる可能性があります。

住宅を建ててよい場所の条件は、建築基準法で定められているのですが、そのひとつに「接道義務」というものがあります。

幅4m以上の道路に、住宅用の土地が2m以上接していないとならないのです。
これは災害が起きたときに消防車が駆けつけられなかったり、避難できなかったりすることを防ぐための法律で定められた取決めです。

接道義務の効力は過去にさかのぼらないため、接道義務が制定される前に建てられた住宅を壊す必要はありません。
しかしその家を解体して同じ場所に家を建てることはできないのです。

これでは接道問題を抱えた空き家を所有するオーナーにとって「空き家を解体(滅失)させよう」という気持ちはさらさら起きないでしょう。

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未だに整わない空き家再生リフォームの環境

さて、朽ちた空き家を再度誰かが住めるように活用するためには、リフォームがどうしても欠かせません。
行政でも具体的に「耐震対策」などを施すことが、特定空き家等の認定を免れるための1条件であることを明示していますから。

空き家の数を減らすには、不動産オーナーが空き家リフォームをしやすい環境をつくる必要がありますが、どうも現状はなかなかそうなっていないようです。

ネックになるのはリフォーム会社の体質です。
リフォーム会社の強引な営業や(時に詐欺といった犯罪レベルまで踏み込むような)不誠実な業務実態については、何年も前からマスコミでも盛んに喧伝されてきたことはご存じでかとおもいます。

国民生活センターによると、マスコミの悪徳リフォーム取材が少なくなった今現在ですら、「雨漏りしている」「震災の影響で家が傾いている」と本当かどうかも疑わしい脅し文句まじりのセールストークを駆使して、強引にリフォーム工事をする業者が後を絶たないそうです。

同センターへの2016年のリフォーム関連の相談は6,580件でした。

もちろん良心的なリフォーム会社は確かに存在しており、そういった企業ほど業界の汚名を払しょくすべく地域の信頼を得ていますが、リフォーム業界全体に対しては「悪徳リフォーム」という言葉が象徴するように、良い印象を持っていない人が少なくないのではないでしょうか。

リフォーム業界そのものに嫌悪感がある状態のままでは「古い家だけどリフォームすればまだまだ住めそうだ」と考える人はなかなか増えません。
残念ですが中小零細企業が中心のリフォーム業界では、こういった評判の悪い業界体質を一掃するような全体的な動きを取れることが事実上不可能です。

悪徳リフォーム会社は荒稼ぎをした後にすぐ会社をたたみ、所在地を変えてまた新たな会社を立ち上げて荒稼ぎを繰り返す…という、典型的な悪徳零細組織の営業スタイルです。
同じ業界の誰かが「もうこんなこと止めよう」といったところで、半年もしないうちに彼らの姿は見えなくなってしまいます。

また、リフォーム用のローンそのものも使い勝手が悪く、新築住宅を買うときの住宅ローンより金利が高いのが実情です。

三菱東京UFJ銀行でも、新築の住宅ローンは年率0.625~1.05%となっていますが、リフォームローンは年率1.99~2.875%となっています。

しかも新築住宅のローンですと最大35年ローンが組めますが、中古住宅の場合はその物件に何年住むことができるかを査定され、その範囲内でしかローンを組めません。

要はリフォームローンは利用者にとって使い勝手が相当に悪いのです。

仮に金融機関が「その中古住宅には10年しか住めないでしょう」と判断すれば、10年でローンを組むしか選択肢がなくなります。
それでは月々の返済額が多くなるため、リフォームそのものを断念する人も多く出てくるのは当たり前すぎる結果かと思いますが、どうでしょうか。

高齢者住宅から更に新たな空き家が生まれる

介護業界では、超高齢社会は多死社会であるとみなしています。
高齢者の介護について考えるとき、「その少し先」のお看取りについても同時に考えなければならないからです。

そして人が亡くなるということは、その方が(単身で)住んでいた家が空き家になってしまうことをも意味します。

日本では高齢者が増えているだけでなく、高齢者世帯も増えています。

高齢者世帯とは、65歳以上の人がひとりで暮らしているか、65歳以上の夫婦だけで暮らしている世帯のことです。

以下の表を見てください。

世帯構造別、世帯類型別世帯数及び平均世帯人員の年次推移
世帯総数(千世帯) 高齢者世帯(世帯総数に占める割合) 母子世帯 父子世帯 その他の世帯
1989年 39,417
(100%)
3,057
(7.8%)
554
(1.4%)
100
(0.3%)
35,707
(90.6%)
2010年 48,638
(100%)
10,207
(21.0%)
708
(1.5%)
77
(0.2%)
37,646
(77.4%)
2016年 49,945
(100%)
13,271
(26.6%)
712
(1.4%)
91
(0.2%)
35,871
(71.8%)

世帯総数が増えていることは、先ほど見ました。
ここでは高齢者世帯が、世帯総数に占める割合に注目してください。

1989年の高齢者世帯は7.8%にすぎませんでしたが、2016年には26.6%にまで上がっています。町内に100件の住宅があったとしたら、27件は高齢者だけが住んでいるお宅なのです

少しお年寄りの方がには申し訳ない気持ちはあるのですが、ここでは以下のようなシミュレーションをしてみたいと思います。

ある町内に100世帯、100戸の住宅があったとします。
国内の空き家率の平均は13.5%ですので、この町内の空き家は14戸です。
ということは、86戸に人が住んでいるわけです。

そしてこの86戸の26.6%にあたる23戸が高齢者世帯なわけです。

もしすべての高齢者の住宅が、高齢者の死後に空き家になってしまったら、この町内には37戸の空き家が近い将来発生することになります。

現在でも空き家が売れなくて困っているのですから、この高齢者宅が将来、簡単に誰かに売れるとはあまり考えにくいでしょう。

さらに、周囲に空き家が増えていく街に住み続けようという人は多くありません。
上記の表の若い世帯がこの町内から外に引っ越していけば、更に空き家が生まれます。

まさに悪循環です。

また若い世帯もいずれは高齢者世帯になります。
このようにして、この街の空き家化は、加速度的に進んでいくのです。

高齢者宅の空き家問題は、まだあります。

介護サービスを備えた「サービス付き高齢者向け住宅」が急増しています。
サービス付き高齢者向け住宅は2017年8月に218,851戸に達し、2012年の約7万件から3倍になってることがわかっています。

高齢者用の住宅が増えているということは、高齢者が自身の持ち家を手離したり、それまで住んでいた借家を出たりして、そこに移り住むということを意味します。

サービス付き高齢者向け住宅が好況の陰で、空き家、空アパート、空マンションが増えるということが起こっているといえるです。

故郷に戻らない人々が更に空き家を生み出す

先ほどみましたように、空き家問題を撤去費用の観点で見ると、空き家の絶対数が多い「都会の問題」でした。

しかし空き家問題を地域コミュニティの存続という観点から角度を変えてながめると、空家率が高い「地方の問題」である側面も新たに見えてきます。

例えば空家率トップの山梨県の空家率は22.0%となっています。
ほぼ4軒に1軒は空き家という状態です。

空家率トップ5はすべて地方 (参考)空家数の多さトップ5はすべて都会(北海道にも190万都市札幌がある)
  空家率 空家数 空家率 空家数
1 山梨県 22.0% 92,900戸 東京都 11.1% 817,100戸
2 長野県 19.8% 194,000戸 大阪府 14.8% 678,800戸
3 和歌山県 18.1% 86,000戸 神奈川県 11.2% 486,700戸
4 高知県 17.8% 69,800戸 愛知県 12.3% 422,000戸
5 徳島県 17.5% 64,000戸 北海道 14.1% 388,200戸
合計 506,700戸 合計 2,792,800戸

地方の空家率が上昇するのは、故郷を出た若者が故郷に戻ってこないからです。
若者が出身地域にUターンしてくれれば、親や祖父母の家を相続し、そこに住むことを決心する子供らもいるでしょうから、空き家となり果てる住居数も抑えられるでしょう。

Uターン件数とは、出生県から県外に移動した人が、再び出生県に戻った人の数です。

国立社会保障・人口問題研究所の2011年の調査によると、出生県を出る人の割合は38.6%に達し、そのうちの34.5%しか出生県に戻っていません。

調査対象の総数(a) 県外に移動した人の数(b) b/a 出生県に戻った人(c)(Uターンした人) c/b
26,216人 10,115人 38.6% 3,487人 34.5%

ある県の人口が100人だとすると、39人が県外に出て、戻ってくるのは13人(=39人×34.5%)ということになります。

100人の人口が74人になるので、36%減です。
つまり地方の人口は「若者の都会の流出」という事象だけで36%も減るということです。
空き家問題はこれからも地方で深刻化するはずです。

放置空き家は近い将来に必ず「迷惑空き家」になる

管理を放置された空家はそう遠くない将来に必ず迷惑空き家になります。
なぜ「必ず」と言い切れるのかというと、地域の迷惑にならないような空き家は自然と買手や借り手がつくからです(需要と供給に適合できる「生きた物件」と言えます)。

そして、家は放置して管理を怠ると必ず朽ち果てていきます。

住宅の敵は、よどんだ空気と湿気です。
人が住んでいると、住宅の出入りだけで定期的な換気ができますが、長年密閉状態の家では外気の変化によって室内に結露が生じ、常にじめじめした状態になり、カビが生え害虫が住みつき害獣もやってきます。

シロアリに住みつかれたら木造住宅の基礎がもろくなり、地震や台風のダメージをうけやすくなります。屋根や外壁が崩れ、飛散すれば人的被害も起きます。

誰も崩れかけた空き家に近づきたくないので、監視の目が弱くなり、絶好の不法侵入ポイント、不法占拠ポイントとなっていきます。

これがさらに空き家を「雰囲気の悪い物件」にして買い手や借り手を遠ざけていき、不審火や不審者がうろつくような曰くあり物件へと退化させていきます。

当然、不動産価値は更にダダ下がることになり、にっちもさっちもいかなくなった物件に費用をつぎ込んで再生するのもバカらしくなった所有者は更に空き家の現実から目をそむけ、数年後には地域住民や行政も認める立派な「特定空き家等」が完成します。

結局、今後の「空き家問題への対策」はどうするのがよいのか?

迷惑空き家対策として国が「特定空家等」制度(※空き家対策特別措置法)を導入したことは紹介した通りですが、この制度の2本柱は「固定資産税を6倍にする(減税の特例を元に戻す)」と「強制撤去」であり、一定の効果は見込めても即効性や決定打となる対策効果は怪しいと先に下記ました。

税金(固定資産税)を上げる、といってもそれまで6分の1だった空き家の土地の固定資産税を更地と同じ対応にするだけですし、強制撤去は事務手続きが煩雑な上に作業が大がかりで、撤去にかかった費用も必ず所有者から回収できるかどうかはわかりません(無い袖は振れないのです)。

そこで空家対策として期待されるのが、空き家のビジネス化と地域の地道な努力です。

空き家問題対策、専門家の提言

空き家に関する著書がある、富士通総研上席主任研究員の米山秀隆さんは、空き家対策には中古住宅を取得することが有利になる仕組みづくりが必要であると訴えています。

深刻化する日本の「空き家」問題―その背景と解決策
日本の住戸の空き家率が上昇し続けている。人口減少局面を迎えた日本における「空き家」問題に対応するには、空き家の利活用や、中古住宅取得促進策の拡充が急務だ。

現状の空き家は、売る人にも買う人にも魅力がないのが欠点です。
空き家を魅力的にするにはリフォームを含めて管理手入れが欠かせませんが、買う人がいない状況であるのに、所有者はコストをかけてわざわざ空き家を手入れしないでしょう。
そして、手入れすらされていない管理不在住宅を買いたいと思う人は少ないはずです。

やはり悪循環が形成されているのです。

実は住宅のメンテナンスを記録し、その記録を中古住宅市場できちんと評価する制度がありますが、知名度はありません。
米山さんは、この仕組みの拡充が必要であると考えています。

報道発表資料:「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」の策定について - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

また、住宅ローン減税を、新築物件よりも中古物件のほうに手厚くする必要もあります。
これに加えて、現在ではまだ市区町村の独自政策である改修費(リフォーム)補助を、国レベルの制度に格上げすることで、住宅需要を空き家市場に向けることができます。

行政ができることは多いと米山さんは指摘しています。

公営住宅といえば「団地」が主流ですが、昭和に建てられた団地がいま次々と老朽化して、これも大きな問題になっています。

老朽化した団地を建て替えるのではなく、空き家に移り住んでもらった「住宅弱者」に行政が家賃補助をすれば、空き家の活用と団地問題の解決が同時に進みます。

専門家が考える空き家対策

  • 売り手にも買い手にも魅力がない「空き家悪循環」を断ち切る
  • 住宅メンテナンス記録を中古住宅市場でしっかり評価する
  • 中古住宅向けローン減税制度を新築住宅向けより有利にする
  • 改修費補助を国レベルの制度に格上げする
  • 公営住宅を団地から空き家に切り替える
  • 団地から空き家に移った「住宅弱者」に家賃補助を行う

企業が空き家問題対策をビジネス化

曰く、「ピンチ」と「被害」と「困った」は、いつもビジネスの種になります。
その三拍子がそろった空き家問題にビジネスチャンスを見出そうとする企業が現れています。

地域に散らばっている空き家の1軒1軒を「ホテルの一室」とみなす宿泊ビジネスを考えたのは、大阪のベンチャー企業です。

空き家が「ホテル」に変身 大阪、特区民泊を活用
大阪のベンチャー6社は15日から、大阪市の西九条で空き家を客室に再生してホテルのように運営する取り組みを始める。中古住宅リノベーション(改修)のクジラ(大阪市)が中心に長屋などを改装して、大阪市の特

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに近い西九条エリアの空き家を買い取って改修し、「民泊(みんぱく)」の要領で貸し出します。

この「空き家ホテル」を借りたい客はまず、フロント施設に行きチェックインをします。客はそこで鍵を受け取り、空き家ホテルに向かい泊ります。

ホテルや旅館などの宿泊ビジネスを手掛けるには、従来は旅館業法の厳しい規制をクリアしなければなりませんが、手軽に民泊ビジネスに参入できる住宅宿泊事業法が2017年に制定されました。
こうした法整備は空き家ビジネスの追い風になりそうです。

鉄道会社も空き家ビジネスに関心を示しています。
交通インフラ企業である鉄道会社にとって、私鉄沿線に空き家が増えれば鉄道利用客が減るので、空き家ビジネスへの参入は本業に関わるものといえます。

阪急電鉄と阪神電鉄を運営する阪急阪神ホールディングスの阪急不動産は、住宅改修企業と業務提携をして、空き家賃貸ビジネスに乗り出しました。

まず阪急不動産が空き家オーナーを募ります。
次に住宅改修企業が、空き家をリフォームしていきます。
その後、阪急不動産は入居者を募り、貸し出します。

空き家オーナーとしては、不動産大手と住宅改修企業がバックにつくわけなので、とても安心できるという訳です。

阪急不動産にとっては賃貸住宅ビジネスの拡充につながるだけでなく、賃貸を通じて借り手とつながることができれば、その後に分譲マンションの提案などができるようになります。

阪急、沿線の空き家再生 リノベ大手と提携し賃貸に
阪急阪神ホールディングス(HD)傘下の阪急不動産は、住宅リノベーション会社のハプティック(東京・渋谷)と業務提携する。阪急不動産が空き家のオーナーを募り、ハプティックが物件を改修して専用サイトを通じ

まとめ 行政と企業の情報にはアンテナを張っておく

このように、空き家問題への対策はマクロレベルでは国が音頭を取りつつ、大企業などが参画することによって大きなビジネスに育てる仕掛けへのチャレンジが続けられています。

一方、ひとりの空き家不動産オーナーのあなたとしても、マクロレベルでのチャレンジ方針の決定(要は自分の空き家不動産を今後どうするのか?)を行わなければならない時が来るでしょう。

その時に賢い判断をするためにも、まずは空き家問題の全体背景を見ることで、この問題の根深さを知ることができますし、空き家不動産の所有者だけでは端的な解決が難しいことを理解できるかと思います。

繰り返しですが、行政は空き家問題を深刻にとらえていますし、企業も動き出しています。
空き家所有者個人として損をしないためには、空き家を活用するにせよ、売却するにせよ、こうした外部情報を日々とらえておくことが、対策の第一歩となることは間違いありません。

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空き家隊長

空き家隊長

実家の相続をきっかけに空き家問題に直面。すったもんだの末に何とか売り抜ける。その際に経験したこと、様々な外部のプロに教えて頂いた空き家問題、土地活用問題について記事にしていきます。
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