話題のホームインスペクションは空き家売却にも有効か?




空き家を高く売るため、ホームインスペクションをフル活用してみる

皆さんは「ホームインスペクション」をご存知でしょうか。

「ホームインスペクション」という仕事は、もとは欧米で生まれました。
日本語では「住宅診断」「住宅調査」などと訳されます。

すでに完成している住宅や何年も人が住んでいた住宅について、建物のコンディションや不具合の有無などを専門家(ホームインスペクター)が実際に現地で調査し、その住宅の価値を判断するための情報を依頼者に提供したり、長く住み続けるために必要なアドバイスを行うためのものです。

中古住宅流通のシェアが全体の8割近くを占める欧米では、住宅を購入する際のホームインスペクションが不可欠で、古くから盛んにおこなわれています。(新築偏重の日本の中古住宅流通のシェアは、わずか13%程度といわれています。)

売買が検討されている建物の状態を調べ、購入を検討している人はホームインスペクターが発行するレポートを参考にして住宅の購入判断をします。

国内においても以前から中古住宅の売買の際に「ホームインスペクション」が行われるケースは時々ありましたが、2018年4月1日に「ホームインスペクション」についての改正宅建業法が施行され、今後ホームインスペクションがより広く認知される様になることが期待されています。

この改正により全ての宅建事業者に対して、中古住宅取引の際にホームインスペクションについての説明を、取引の当事者に対して行うことが義務付けされる様になりました。

買主がより安心して中古住宅を購入できる様にして、中古住宅流通を活性化させようというのが国の目論見です。

しかし「ホームインスペクション」は、何も中古住宅の取引時にだけ必要なわけではありません。

空き家を有効活用したりできるだけ高い値段でする場合にもホームインスペクションは非常に役に立ちます。

国内の空き家は820万戸以上あるといわれていますが、これらの中にはすでに老朽化が進んで放置されている継続利用困難なものも多数含まれていると思われます。

空き家の有効活用を検討する際には、継続利用が可能な建物なのか、継続利用するための費用は最低いくら位かかるのか、他に利用方法はないのか、などの信用できる判断材料が不可欠です。

その際、不動産業者やリフォーム会社、住宅会社に相談しても、それぞれの会社にとって都合の良い提案しか得られない可能性が高いと思います。

最適な判断を下すためには、中立的立場の第三者の専門家からの情報提供が必要です。
そんな場合に、ホームインスペクションが有益だと思います。

そこで今回は「ホームインスペクション」についてご紹介したいと思います。

ホームインスペクションって何をするの?

ホームインスペクションの目的は住宅のコンディションを把握すること

ひとくちに住宅診断といっても、建物の調査・診断には目的によって様々な種類があり、調査方法や費用も異なります。

従来からよくある建物調査は、建築士などの建物診断を専門に行っている人たちが、建物の違法性や構造安全性を調査し、主に欠陥住宅紛争などで責任の所在を明らかにし、法廷で争うための「鑑定」と呼ばれる仕事が多くて費用も高額でした。

一方、ホームインスペクションは主に建物の経年劣化の具合を調査するもので、「鑑定」の仕事とは根本的に異なるものです。

(社)日本建築学会発行の『建築物の調査・診断指針(案)・同解説』(2008年発刊)では、建築物の経年劣化に対する調査・劣化診断・修繕の手順として、「一次劣化調査」、「二次劣化調査」、「三次劣化調査」というように、段階を経ることが望ましいとしています。

二次から三次になるにしたがい調査が精密になるため、破壊試験や足場設置などが含まれて、費用も高額になります。

わかりやすく医療に例えてみると、住宅の経年劣化に対する調査は

  • メンテナンスのための点検・・・・・・・・・保健師
  • 住宅のコンディションを把握・・・・・・・・町医者
  • 詳細な調査(耐震診断、雨漏り調査等)・・・・総合病院
  • 大規模調査、部位別詳細調査・・・・・・・・大学病院

という感じに分けられます。

この中でホームインスペクターは「町医者」にあたり、ホームインスペクションは住まいの健康診断となる一次診断という位置づけです。

三次診断となる精密診断の費用が数十万円以上かかるのに対して、比較的手頃な費用(5~6万円程度が多い)で、目視・触診・問診によって可能な限りの劣化事象を把握し、診断します。

比較的短時間(2~3時間程度)で調査が可能な範囲、手頃な費用というのがポイントです。

一次診断のホームインスペクションで決してすべてがわかるというものではないものの、専門家(ホームインスペクター)によるチェックをきちんと受けることで、以下の点で有効になります。

  • 自宅もしくは所有する住まいの維持管理のためのチェック(定期点検)
  • 住宅の機能向上のためのチェック(リフォーム前の調査)
  • トラブル解決のためのチェック(不具合の原因調査)
  • 購入を決断するための調査(建物のコンディションの把握)

これらがホームインスペクションの目的ですが、対象物件を空き家に置き換えてみても、全ての項目が該当します。

空き家の現在のコンディションを把握し、有効活用するためのリフォーム前の調査を行い、不具合があればその原因を調査するのです。

ホームインスペクションは、「空き家」の建物調査としても有効だということがわかると思います。

ホームインスペクションで使用する機材は?

建物調査で使用される機材には様々な種類がありますが、サーモグラフィーやファイバースコープなどの特殊な機材、高額な機材を使用すれば調査費用も高額になってしまいます。

ホームインスペクションは、調査費用を抑えるために主に目視で調査・診断を実施しますが、よりわかりやすく正確な診断をおこなうために、補助的に機材を使用します。

その代表的なものは、次の様なものです。

  • レーザーレベル…建物の傾きや床の水平の度合いを計測します。
  • 水平器…床や柱の傾斜、排水管の勾配などを確認します。
  • 木材含水率計…木材に含まれる水分量を計測します。
  • クラックスケール…外壁やコンクリートのひび割れ幅を計測します。
  • 鉄筋探知機…基礎に鉄筋が入っているかどうかなどを確認します。
  • 打診棒…モルタル仕上げやタイルの浮きや剥がれの有無を調査します。
  • 点検鏡…壁の下側やドアの上部などの見えにくい部分、奥深いところは鏡を使って確認します。
  • 双眼鏡…屋根や外壁を目視で確認する際に使用します。
  • デジタルカメラ…調査部位を撮影し、報告書に添付して依頼者に提出します。

その他、コンベックス(スケール)、脚立、懐中電灯などを使用して、数値が計測できるものは計測して記録します。

ホームインスペクションではどこを調査するの?

それではホームインスペクションでは住宅のどこを調査するのでしょうか。

戸建住宅のホームインスペクションの基本的な診断・調査項目は大きくA外周りの状態、B室内の状態、C床下の状態、D小屋裏・天井裏の状態、E設備の状態として、6つの項目に分けることができます。

NPO法人日本ホームインスペクターズ協会のホームインスペクションマニュアルによると、それぞれの項目で確認する部分は下記の通りです。

A.外周りの状態

基礎、外壁仕上げ、屋根、軒裏、雨樋、外部に取り付けられている金物等、バルコニー等、外部階段

B.室内の状態

壁、柱および梁のうち屋内に面する部分、床、天井、階段、開口部

C.床下の状態

土台および床組、基礎および床下面

D.小屋裏・天井裏の状態

小屋裏、各階間の天井裏、下屋の小屋裏

E.設備の状態

給水設備、給湯設備、排水設備、換気設備、火災報知器、その他

となっています。

要するに、住宅内外部の目視可能な範囲については、ほとんど全てが診断・調査の対象になっています。

ホームインスペクションでは何がわかるの?

ホームインスペクションには限られた診断範囲や時間の中から多くの情報を依頼者に提供し、総合的な判断の一助となる情報提供が求められます。

ホームインスペクションでは建物の状態を隅々まで確認することによって、様々な情報を得ることができます。

ホームインスペクターはこれらの情報をわかりやすく報告書にまとめて依頼者に提出します。

ホームインスペクションでは具体的にどんなことがわかるのか、その代表的な例をご紹介しておきましょう。

現在の建物のコンディション

基礎のひび割れの有無や、屋根や外壁などの劣化状況(塗膜の劣化やひび割れ、錆びの発生など)、水回り機器の水漏れ、排水管の詰まり、バルコニー防水の状態、屋根裏や天井の雨漏り跡の有無、床下のシロアリ被害や木材の腐食の有無、配管の漏水跡の有無、建物の傾斜の有無、換気扇の作動不良、建具・サッシの建付け不良、照明器具の点灯不良等の不具合がわかります。

同時に建物の不同沈下の可能性の有無や、雨漏りの可能性の有無など、不具合の原因と思われることや、不具合個所が建物に与える影響などがわかります。

また、見つかった不具合を全て修理できれば何の問題もないのですが、依頼者には補修費用の負担がかかります。

早急に修繕が必要な緊急性の高い不具合、経過観察が必要な不具合、近い将来修繕が必要になるであろう不具合、そのままにしておいても当面は問題がないものなどを判別することができます。

修繕した場合の金額の目安

ホームインスペクションの目的は、単に建物のコンディションを調べることだけではありません。

ホームインスペクターは、発見された不具合や問題箇所を修理する場合の最低限の費用や、修繕方法を提示します。

今後予想される修繕工事の時期と内容

診断結果をもとに、今後どれ位の時期に修繕やメンテナンスが必要になるのか、どの様な修繕工事を行えば良いのかなど、今後の修繕計画を立てる上で有益な情報を得ることが可能になります。

リフォームを行う場合の注意点や金額の目安

修繕とは別に計画しているリフォームがある場合には、工事の可否や注意すべき点、リフォームに併せて行っておいた方が良い工事、リフォーム費用の目安など、ホームインスペクションの結果を踏まえて具体的なアドバイスを受けることができます。

ホームインスペクションから得られるこれらの情報は、今後空き家に自分で住む場合はもちろんのこと、賃貸や売却を行う上でも有益なものになります。

リフォームや将来のメンテナンス計画の参考になるばかりでなく、空き家の活用方法の判断材料として、また賃借人や買主とのトラブル防止のため等、ホームインスペクションが役立ちます。

ホームインスペクションの問題点

空き家を有効に活用するためにも有益なホームインスペクションですが、ホームインスペクションで住まいに関する全ての問題点がわかるわけではないことはすでにお話しました。

では、ホームインスペクションでわからないことにはどんなことがあるのでしょうか。

ホームインスペクションでわからないことは?

ホームインスペクションでは、依頼者が見ることができる室内外の点検に加えて、普段あまり目にすることがない天井や床の点検口から目視できる範囲の床下や小屋裏までを基本的な調査範囲としています。

しかしあくまでも病院でいうところの健康診断で、目視を中心とした非破壊調査なので、発見できる不具合には限度があり、全てがわかるわけではありません。

目視を基本とする診断では、室内外から見ることができない壁の内部や、点検口のない天井裏や床下は調査することができません。

また、足場をかけることもないので、建物の立地や周囲の状況によっては、外壁の一部や屋根が見えない場合もあります。

こうしたことを依頼者もよく理解しておくことが必要です。

また、初めからホームインスペクションの調査対象外となっている項目もあるので注意が必要です。

次にあげる項目は調査の対象外となります。

  • 劣化事象等が建物の構造的な欠陥によるものか否かや、欠陥とした場合の要因を断定すること
  • 耐震性や省エネ性等の住宅性能の程度を判定すること
  • 現行の建築基準法関係規定への違反の有無を判定すること
  • 設計図書との照合をすること

などです。

不具合の原因を推測することはできても、断定することはできません。
また、瑕疵の有無を判定したり、瑕疵がないことを保証するものではありません。
(瑕疵がある可能性が高いか低いかを判定するにとどまります)

また、調査時点からの時間経過による変化がないことを保証するものでもないので、注意が必要です。

健康診断を受診した人が診断結果について医師から説明を受け、必要とあれば精密検査を勧められるのと同様に、雨漏り調査や耐震診断、シロアリ調査などの二次診断を勧められる場合もあります。

その場合には、専門的な調査機器を使用したり、足場を掛けて水かけを行ったり、部分的に解体を行って調査する必要があるケースもあります。

ホームインスペクションは誰が行うの?

実はホームインスペクションを行うために必要な資格というものはありません。

したがって極端な話をすると、ホームインスペクションは誰でもできるということになります。(ただし、宅建業法上のインスペクションは既存住宅状況調査技術者に限られます)

しかし依頼主からの信用がないと実際に仕事を依頼されることはないので、建築士などの建築系国家資格者やホームインスペクションの民間資格者が行っているのが一般的です。

インスペクションの資格には

  • NPO法人日本ホームインスペクターズ協会公認ホームインスペクター
  • 建築士会インスペクター
  • 既存住宅状況調査技術者

などがあります。

また一部では、ホームインスペクションは「一級建築士に依頼するのが最も望ましい」などと言われていますが、対象が木造住宅の場合には、木造住宅を普段からメインに取り扱っている二級建築士の方が適している場合もあります。

また一級建築士の中には、ビルなどの設計をメインに行っていると、住宅現場にはほとんど行ったことがないという人も珍しくありません。

こうした場合には、修繕工事や修繕費用のアドバイス、将来の修繕計画やリフォームについての相談などはほとんど期待できません。

ホームインスペクションの調査自体は、建築を専門的におこなってきた人にとっては、実はそんなに難しい内容ではありません。

むしろ、調査で見つかった不具合に対しての適切な修繕方法の提案や、今後起こりうる不具合や修繕に対するアドバイスの方が経験がなければ難しい仕事なのです。

ホームインスペクションを依頼する際には、保有資格だけで決めるのではなく、ホームインスペクションの実務経験や修繕・リフォーム工事の経験が豊富なインスペクターに依頼する様にして欲しいと思います。

まとめ – ホームインスペクションを活用して空き家不動産の客観的な価値を確認しよう

我が国では人口が減少傾向にあるにもかかわらず、新築住宅の供給は止まりません。そんな中で、誰にも活用されない空き家が増加していくのは当然のことです。

空き家問題がこれほど社会問題になっていながら、抜本的な対策が行われずにいます。

空き家の所有者にとっては、空き家問題に対して何とか手を打ちたくてもどうしていいのかわからないというのが正直な気持ちでしょう。

しかし、何もしないで放置しておくだけでは、建物の老朽化が進んでいくだけではなく、固定資産税や都市計画税といったコストがかかり、家計も圧迫されてしまいます。

一方で、空き家は築年数が古いものが多く、これを貸すにしても売却するにしても所有者には大きなリスクが伴います。

運よく借り手や買い手が見つかったとしても、借主からクレームが出たり、買主から瑕疵担保責任を求められることもあります。

空き家を有効活用しようと思ったら、建物のコンディションを正確に把握して、必要に応じて事前に補修工事等の対策を行っておく必要があります。

そのためにホームインスペクションを行い、専門家からのアドバイスを得て対応しておけば未然にトラブルを防ぐことができます。

また、近年ではDIYリフォームが人気です。

空き家を有効活用するためにDIYでリフォームしようとする際にも、事前に専門家によるホームインスペクションを実施しておけば安心です。

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最低限修理しておくべき箇所や修繕費用がわかれば、自分でリフォーム計画を立てる上でも役に立ちます。工事に着手してから予想外のことが発生する可能性も低くなるでしょう。

さらに自分でできることと、業者に依頼すべきこともわかります。自分でリフォームする場合の施工方法や必要な道具、資材などのアドバイスを受けることも可能です。

我が国での中古住宅の流通が欧米諸国と比べて極端に低い理由のひとつには、リフォームしてもしなくても価格の下落ベースが変わらないことがあります。

建物の資産価値は、築年数のみで判断されてしまうためです。

しかしホームインスペクションが今後益々普及する様になれば、少しづつ改善していく可能性があります。

適正なメンテナンスをすれば価格に反映されて資産価値が維持されるのが本来の姿です。

そういう意味でも、今後の我が国の中古住宅市場を変えるためには、古くなった空き家を放置せずに積極的に有効活用することが望まれます。

そのために不可欠なのがホームインスペクションです。

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益子公博

益子公博

住宅会社で20年以上リフォーム事業の責任者経験があり、リフォーム業界、住宅建築業界の裏事情やリフォーム現場には精通。ホームインスペクション(住宅診断)の専門会社を経営、住宅診断、欠陥住宅相談、リフォーム会社への社員研修など実施しています。
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