空き家をバリアフリー・介護リフォームする方へのアドバイス




住まいのバリアフリー化が高齢化社会日本には必須事項

我が国では、すでに3世帯に1世帯は高齢者が居住しているといわれています。これからの住宅は、新築でもリフォームでも、高齢者が住むことを前提に考える必要があります。

一方、家庭内の不慮の事故死は交通事故死よりも多く、特に高齢者の比率が高いことが知られています。

死に至らない事故まで含めて考えると、住環境で改善すべき予防対策の重要さを改めて感じます。

家庭における事故を防ぐためには、住まいの中のバリアフリー化が有効です。

バリアフリー住宅とは「障害物のない家」という意味ですが、車いすや松葉杖でも家中を自由に動き回ることができ、年をとっても安心して暮らせる家の事です。

また、将来家の誰かに介護が必要になった時に、高齢者や被介護者にとって暮らしやすい家、介護者にとって介護しやすい家にしておくことが必要です。

「バリアフリー化」とか「介護リフォーム」というと、一般的には加齢や事故などにより「身体障害を持ってしまった人のための特別な住宅改造」と思われがちですが、ここでは将来への「備え」も含めて「バリアフリー・介護リフォーム」と呼ぶことにします。

バリアフリーリフォームは、手摺の取り付けや段差スロープの設置などわずか数千円でできるものから、水回りのレイアウト変更や階段昇降機・ホームエレベーターの設置まで様々なメニューがあります。

しかし正しい知識がないと、かえって使いにくくなってしまったり、危険になってしまう事もあるので要注意です。

今回は「バリアフリー・介護リフォーム」の基礎知識やリフォームのポイントなどについてご紹介します。

10年後のバリアフリーの必要性を見据えて

将来への「備え」といっても、現在あまり使わない手摺をつけてもかえって邪魔になるだけで、何の役にもたちません。計画性のないリフォームはお金の無駄遣いになるだけです。

大切なのは、将来必要になった時に「簡単に」「大掛かりにならずに」「あまりお金をかけずに」改造できる状態にしておくことです。

いざという時に大改造になってしまい、費用や工期、仮住まいの手配や引っ越しなど、一度に多くのことが必要になると、高齢者にとっては改造に踏み切るのがつい億劫になって、「面倒だからもういい・・」となりがちです。

いざという時には、施設に入ることを考えている方にとっても、できれば住み慣れた自宅介護が望ましいと思っているのではないでしょうか。

大切なのは、高齢化しても我が家で安心して暮らせる様に、やれる時に準備しておくという事です。

家のリフォームに併せて、計画的に進めていくのが理想です。
たとえば

  • トイレは介助や車いすの利用ができる様に、入口の段差を解消し、できるだけ広く(1坪以上の広さが望ましい)しておく
  • 将来手摺が必要になった時にも簡単に設置できるように、壁に下地などを入れておく
  • 脱衣所や浴室、トイレなどでは、ヒートショックを防ぐための配慮を行っておく
  • 日常生活が同一階で過ごせる様に、寝室と洗面・トイレ・キッチンなどの配置を検討しておく
  • ライフスタイルの変化に対応できる可変性のある間取りにしておく。

などです。

現時点では、バリアフリー性向上のためだけのリフォームはほとんど不要でも、模様替えや設備の更新、構造補強など別の目的でリフォームする時などに、「バリアフリーへの備え」を併せて検討することが重要です。

次項からは部屋ごとのバリアフリー・介護リフォームのポイントについてご紹介したいと思います。部屋のリフォームをする際に、参考にしていただきたいと思います。

部屋ごとのバリアフリー・介護リフォームの必須箇所

1.玄関ポーチ

道路から玄関までのアプローチは、高齢者や被介護者が安全でラクに外出できる様に段差を減らし、できるだけ平坦にしておく事が大切です。

どうしても段差ができてしまう時は、緩やかなスロープか緩い階段にして、床の仕上げ材は雨の日でも滑りにくいものに変えます。

伝い歩きしやすい様に手摺を設置するか、将来手摺を設置できるようにスペースを残しておくと良いでしょう。

大きな段差がある場合には、将来「段差解消機」を設置できるスペース(90cm×90cm程度)を経路のどこかに確保しておければベストです。

1m以内の段差であれば、段差解消機の使用が可能です。

また、玄関からの出入りが困難な場合には、掃き出し窓のある部屋からの出入りを検討しましょう。

室内から段差なく連続するデッキやスロープを設置し、庭から道路に出られる様に計画します。駐車場ともつなげられればより便利です。

さらに夜間には足元照明があるとより安全です。

すぐには必要でない場合でも、あとから簡単に設置できるように近くに屋外用の防水コンセントを設置しておけば、そこから電源を取り出すことができます。

2.玄関

玄関は、履物の着脱がしやすいことと、ラクに出入りできることが基本です。

加齢によって足腰が弱ってくると、つかまり立ちや座ることができればラクなので、手摺や簡単な腰掛があると便利です。

自然に腰を下ろせる椅子やからだのバランスをとるための手摺があれば、靴の着脱もスムーズにできます。
適切な位置に手摺や腰掛が設置できる様に検討しましょう。

また玄関の土間部分(たたき)は車いすの使用を考えると、できれば1.6m×1.6m程度(1坪)のスペースが欲しいものです。

土間部分の床も、滑りにくい材質のものに変えます。

土間部分と室内の廊下との段差は15cm程度が使いやすく、車いすでの介助による昇降も何とか可能なので、それ以上の段差がある場合には、式台や簡易スロープなどを設置すると良いでしょう。

さらには、玄関ドアが開けやすいことが大切です。玄関ドアは大型の把手が付いた引き戸が便利です。

握力が弱くなると、ノブを回転させることによってドアが開くようになるタイプのドアノブでは、開閉が困難になります。

また、玄関廻りにガラスを使う場合には、地震時の避難も考慮に入れ、割れにくい網入りガラスなどに変えておくと安心です。

3.廊下・階段

廊下は後で手摺を付けたり、車いすでの通行を考えると、できるだけ広くしておきたいものです。

車いすでの通行には有効幅85cm、角部では向きを変えられる様に90cmの幅が欲しいものです。

しかし標準的な在来工法の木造住宅では、廊下の有効幅は78cm程度しかないので、リフォームでは柱の移動や撤去が必要になり、工事が大がかりになりがちです。

廊下の間仕切り壁をなくして、廊下そのものを部屋の一部にしたり、リビング、寝室と水回りをできるだけ短い距離で移動できる様に配置を見直すなどの対策も検討すると良いでしょう。

また、廊下に中途半端な段差があると、つまずいて転倒する恐れがあり非常に危険です。

古い家では、廊下と各部屋との間に3cm程度の段差がある事が多いので、廊下をフローリングに張り替える際などには段差を解消しておきましょう。

床仕上げ材には、当然滑りにくいものを使用します。

さらに当面は廊下に手摺を設置する必要がなくても、耐震補強を兼ねて壁の下地に構造用合板を貼っておくと、後からでも容易に手摺が取り付けられて重宝します。

ついでに足元照明を設置しておくと便利です。

階段は高齢者にとって転落などの危険が伴う場所です。

手摺の設置や階段を架け替えて勾配を緩やかにする、階段昇降機を設置するなどで対応しますが、工事が大がかりになったり、階段幅が狭くなって他の家族が使いにくくなる弊害もあります。

高齢者ができるだけ階段を使わないで暮らせる間取りに変更するなどの工夫も検討しましょう。

3.リビング、ダイニング

リビング、ダイニングは一日の中でも多くの時間を過ごす場所で、家族との関わりを持つ重要な場所です。高齢者にとっても過ごしやすく、快適な空間である事が要求されます。

寝室や水回りなどに移動しやすくすると共に、直接庭に出られるように掃き出し窓を設置して屋内外の段差をできるだけ解消しておくと、将来のために有効です。

掃き出し窓には握りやすい把手を付けておくと良いでしょう。

現在使用している窓に簡単に後付けできる大型のハンドルや、テコの原理で窓の開け閉めをサポートできる後付け可能なハンドルなどもあります。

また部屋の入口は段差をなくし、できるだけ開口を広くしておくと良いでしょう。
ここも握りやすい形状の大型の把手を備えた引き戸にしておくと便利です。

さらにヒートショックによる事故防止対策として、室内の温熱環境への配慮も不可欠です。

断熱材の充填や複層ガラスへの交換、内窓の設置などと共に、換気設備などを設けて快適な環境を整えましょう。

視力や身体機能が低下した高齢者にとっては、照明器具の明るさやコンセントの高さなども意外と重要になります。

照明を明るくしたり、腰をかがめずに済むように、コンセントを高めに設置しておくと良いでしょう。

5.寝室

高齢者の寝室の基本は洋室+ベッドになります。畳敷きの寝室は布団の上げ下げがあるため、高齢者には不適です。

また、高齢になるに従いベッドにいる時間が長くなりがちです。

部屋の入口の段差解消、引き戸の採用、ヒートショック対策や換気、照明、コンセント設備の改善などはリビング、ダイニングと同様に不可欠になります。

寝室は少し広めに計画し、できればトイレは寝室から直接利用できる様にしておくと、介護が必要になった時に安心です。

他の家族と2ウェイで利用できる様に、位置を工夫する方法もあります。

2階に寝室があってこの先も変更する予定がない場合には、将来2階にもトイレが設置できる様、既存の押し入れなどにあらかじめ先行配管をしておくと良いでしょう。

一戸建て住宅であれば、他のリフォームと同時に工事すればそんなに難しい工事は必要がないケースがほとんどです。

また、ベッドの上から照明の切り替えや点灯・消灯ができる様に、リモコン付の照明器具を設置しておくと良いでしょう。

6.トイレ

トイレには加齢後の自立を支える重要な役割があります。

高齢者や被介護者が一人でも使いやすい様にする事が大切ですが、介護者がサポートするケースも想定しておく必要があります。

まず出入りしやすい様にドアの開閉が容易で、トイレの中と外の段差がない様にする事が重要です。

ドアは引き戸が便利で、車いす利用を考慮した場合、出入り口の幅は有効内法寸法で75cm以上が目安になります。

トイレ内部の寸法は介助を想定すると、横幅120cm、奥行き160cm以上は必要です。幅を広げる場合は、片側を介助スペース等に利用できる様にします。

空いている方は当面は手洗いカウンターなどを設置し、後で外せるようにしておくと良いでしょう。

トイレだけではあまり広いスペースが確保できない場合には、洗面脱衣室などと一体空間にすれば比較的容易に介助スペースを確保できます。

高齢者用トイレは、できるだけ寝室の近くに設置するのが基本です。

また、トイレに入ってから便座に腰掛けるまでの動作がスムーズにできる様に、手摺があると便利です。

すぐには必要なくても、将来簡単に手摺が取り付けできる様、壁に下地を入れておく事を忘れない様にしましょう。

高齢になると、排泄行為に時間がかかり、回数も増えます。ヒートショック対策の上で、暖房装置や温水洗浄機能付き暖房便座は必需品です。すぐに設置しない場合でも、トイレ内にコンセントは必ず設置しておきましょう。

また、スリッパを履かなくても冷たくなく、滑りにくくて掃除がしやすい床材にします。換気設備や通報ベルなども併せて設置を検討しておくと良いでしょう。

7.洗面脱衣室

洗面脱衣室もトイレ同様、出入り口の幅を広く取り、段差を解消して中を広めにしておくことが重要です。開閉しやすい引き戸の採用や滑りにくい床仕上げ材、手摺などが必要になります。

また洗面脱衣室は裸になる場所なので、ヒートショックによる事故が発生しやすい場所です。

断熱改修やヒーターなどの暖房装置も検討しておきましょう。

8.浴室

浴室は将来、加齢により身体機能が低下したり、身体が部分的に不自由になっても、できるだけ一人で入浴できるようにしておきたいものです。

浴室の大きさは、できれば1坪(内法寸法で1.6m×1.6m)以上確保しておきましょう。

洗面脱衣室、トイレと一体的に考えたり、バランス釜を屋外設置式の給湯器付風呂釜に変えて、浴室内を広くするのも効果的です。

また、洗面脱衣室との床段差を解消し、入口の扉を3枚引き戸にすると、車いすでの使用もラクになります。

浴室の床を滑りにくくする事、浴槽のまたぎ高さを40cm程度に抑える事、洗い場での移動や浴槽内への出入りなどを補助する手摺を設置する事などが浴室バリアフリーリフォームの定番メニューです。

洗い場から浴槽の縁までの高さは、高すぎても低すぎても危険なので、特に注意したいところです。

その他、浴槽の縁に腰掛けられるスペースがあると健常者でも使いやすいでしょう。

水栓器具の使いやすさや、やけど防止対策なども高齢者にとっては重要です。通報ベルなども設置できるようにしておくと良いでしょう。ヒートショック対策には、浴室暖房機能付きの換気扇が有効です。

以上のことはユニットバスでも全て対応することが可能ですが、障害を持った場合には障害の程度や症状などで更に改修が必要になる場合もあります。

また、自宅で入浴するつもりだったのが、訪問入浴サービスやデイサービスを利用することになるかもしれません。

浴室バリアフリーリフォームに関しては、フレキシブルな対応が望まれます。

浴室寸法と出入り口の幅、洗面脱衣室・トイレとの位置関係などは変更しなくても良い様に、最低限の備えをしておけば良いでしょう。

国や地方自治体の助成制度

2000年に介護保険制度がスタートし、介護リフォーム時に補助金の支給が受けられる様になりました。要支援1~2、要介護1~5のいずれかに認定されている介護保険の被保険者が受給の対象です。

補助金の支給は、被保険者1人につき改修費用20万円までと決められていて、そのうち1割が自己負担となります。(最大で18万円が支給されます)

その他にも、バリアフリーリフォームの投資型減税やローン型減税、住宅ローン減税など、バリアフリーリフォームに対する国の支援策が相次いで創設され、利用者の認知度も高まっている様です。

介護保険においては、

  • 手摺の取り付け
  • 段差の解消
  • 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
  • 引戸等への扉の取替え
  • 洋式便器等への便器取替え
  • その他上記の住宅改修に付帯して必要となる工事

が居宅介護住宅改修費の支給対象の工事です(前項でご紹介したほとんどの工事が補助金支給の対象になります)

しかし、リフォーム工事の事業者が全てこのような制度を活用して、消費者に対して積極的に提案しているかというと、必ずしもそうではないと思います。

介護リフォームを検討する上では、自らが知っておいた方が良いでしょう。

なお各自治体では、介護保険の補助金とは別に、住宅改修に対する助成金を支給しているところもあるので、各市町村に確認してみることをお奨めします。

まとめ

バリアフリーリフォームは、介護が必要になった時に行うだけではなく、今はバリアフリーを目的にリフォームする必要がない場合でも、将来を見据えて他のリフォームに組み込んでおく事が大切です。

たとえば、耐震改修と同時に行うケースや水回り改修と同時に行うケースなどが考えられます。

耐震改修では、耐力壁を増やすために壁に構造用合板を貼ったり、壁の新設や撤去などを行いますが、これに併せて将来手摺を設置するための下地を入れておいたり、通路や部屋の入口の幅を広げておいたりすれば合理的です。

壁のボードを剥がした際には、断熱改修を行っておくこともできます。

また水回りの改修を行う際に、同時に床段差の解消やドアの交換などを行っておく事も可能です。

配管交換や配管の新設なども絡むので、トイレ、洗面脱衣室、浴室のレイアウト変更や2階トイレの増設など、一体的にまとめて工事を行った方が割安で無駄がありません。

一度にリフォームする方が合理的で費用の節約にもなるのです。

よほど緊急を要する場合は別ですが、バリアフリーリフォームは将来に備えてできるところから少しずつ手を加えておけば、いざという時にも慌てずに対応でき、事故の予防にもつながります。

そうはいうものの、将来の全てを見据えて今から完璧に備えておく事は難しいものです。
最低限必要となるであろう事を、確実に漏れなく検討しておく事が大切なのです。

また、DIYバリアフリーリフォーム商品として、敷居など床の段差を解消するミニスロープや浴室の床の段差を解消するためのスノコなどがあります。

ただし動かない様にきちんと固定しないとかえって危険なので、取り付けには注意が必要です。

さて、今回はバリアフリー・介護リフォームのポイントをご紹介させていただきました。

10年後の必要性を見据えて備えておく事で、親の介護が必要になった場合だけでなく、自分の老後にも自宅で快適な生活がおくれる様になります。

被介護者がいて、すぐにでもリフォームが必要な場合のみでなく、普段から将来慌てることがない様に、家の中のバリアフリー化に目を向けておく事が大切だと思います。

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益子公博

益子公博

住宅会社で20年以上リフォーム事業の責任者経験があり、リフォーム業界、住宅建築業界の裏事情やリフォーム現場には精通。ホームインスペクション(住宅診断)の専門会社を経営、住宅診断、欠陥住宅相談、リフォーム会社への社員研修など実施しています。
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