親名義や家族名義の空き家を売却する方法は?

まず素朴な疑問ですが、諸事情により親名義や家族名義の空き家(空き家に限らず、土地等の不動産と言い換えても良いでしょうが…)を売却する事はできるのでしょうか?

いきなり結論から言えば、いくら親族でも、親や家族名義の空き家を含めた不動産を勝手に売ることは基本的には出来ません。

民法により不動産を売る権利は所有者に限られているからです。
しかし、現実的な状況次第によっては(やむかたなく)親や家族名義の空き家を処分する方法が全くないといいきれないもの現実です。

親名義や家族名義のまま売ることが許されるケースは、委任状による代理と成年後見人による代理のみであり、成年後見人による代理は、売却が親のために必要な場合だけに限定されています。

基本、売却する前には、まず不動産の名義変更を先にしなくてはならず、不動産相続なら複数の相続人でトラブルが発生する可能性が高くなるうえ、もし相続前なら高い贈与税が発生することは知っておいて下さい。

しかしながら最近では親の空き家や土地を子が「私的事情が重なり、やむを得ず売却したい」という話は良く聞くようになりました。

戸建やマンションに限らず、空き家不動産を売りたい事情は様々考えられますが、多いのは次の四つのパターンではないかと推測されます。

  1. 子が親の空き家や土地を相続した(または、今後相続する予定)
  2. 親の代理で売りたい
  3. (認知症などで)親が自分で売却判断を出来なくなった
  4. 贈与を目的で売りたい

まずは、この1~4のケースについて、空き家や土地を売却するまでの流れを見ていきたいと思います。




1.親から相続した空き家や土地を売る場合

親がもし亡くなって相続が発生すると、現預金等だけでなくて親が所有していた空き家や土地等の不動産も相続人に相続されます。

親の配偶者も亡くなっている(つまり両親ともなくなった)とすれば、相続人は子だけになるため、子が複数の時は、子の人数に応じて公平に相続権を持ちます。

このタイミングで空き家や土地等の不動産を売る前に、必ずしなくてはいけない重要な事が、空き家や土地等の不動産の名義を相続人に変更しておく手続きです。なぜなら亡くなった親の名義では売却が出来ないからです。

冒頭に書きましたように、不動産を売る権利は所有者に限られているからなのです。

そうですよね、不動産の売却は、買主が所有者である売主と売買契約を締結するのであるので、売主であう親が亡くなっていては、契約締結のしようがありませんからね。

したがって、空き家や土地等の不動産の売却の前に生存している相続人の誰かに名義変更が必要となるわけです。

相続登記と呼ばれること手続きは、法務局(全国に支局や出張所などがあります)に行って、登記申請書を提出することで行われます。登記申請書と逢わせて下記の証明書や書類の提出が必要です。

  1. 亡くなった親の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 新たに名義人となる相続人の戸籍謄本と印鑑証明書
  3. 相続人全員の住民票
  4. (遺産分割協議があった場合には)遺産分割協議書

法務局への提出の際には併せて、登録免許税という手数料が必要になります。

登録免許税とは、建物と土地それぞれの評価額(相続される建物・土地の価値を一定の基準で求めた金額)に対して0.4%の課税で、仮に評価額500万円の土地なら、2万円の費用が必要となります。

相続登記申請するという事は、権利の移転を公表することですので、税務署等にも相続の事実を知らしめる事になる訳です。そのため相続税の申請が必要となってきます。

相続税に関して知っておくべき最低限のこと

ここで少し相続税に関して少し説明しておきます。

相続税は、基本的に次の金額を超える場合、発生する税金です。

相続に関しては、1980年に配偶者の法定相続分を3分の1から2分の1に引き上げる改正があって以降約38年間大きな見直しはされていませんが、相続税に関しては、その時々の税制改正によって変更されて来ました。

従来では

親の全財産 > 5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数

でした。

例えば、法定相続人が子供だけの場合には、子供1人ならば5,000万円+1,000万円=6,000万円、子供が2人ならば5,000万円+1,000万円×2人=7,000万円と各々1,000万円ずつ増えていく計算だった訳です。

しかしながら、2015年1月1日施工の税制改正によって、相続税の基礎控除額が引き下げられ、逆に最高税率は従来の最高50%だったものが最高55%(法定相続分に応じる取得額が6億円超以上の場合)に引き上げられました

親の全財産 > 3,000万円+600万円×法定相続人の人数

に変更となりました。

つまり、基礎控除額が40%もの減額となってしまった訳です。

尚、法定相続人とは、法律で決まっている相続人のことで、亡くなった人の配偶者は常に法定相続人となり、その他は

  1. 直系卑属(子や孫)
  2. 直系尊属(父母や祖父母)
  3. 兄妹姉妹

の順番で優先的に決められる事になります。

例えば、法定相続人が子供だけの場合には、子供1人ならば3,000万円+600万円=3,600万円、子供が2人ならば3,000万円+600万円×2人=4,200万円と各々600万円ずつ増えていく計算となります。

相続人が何人で相続するのか計算して、前述の

親の全財産 > 3,000万円+600万円×法定相続人の人数

という計算式よりも、空き家や土地等の不動産を含めた財産が少なければ、相続税を納める必要はないでしょうが、税金のことですので親の全財産を把握しておく事をおすすめします。

非嫡出子でも相続権は持っている

尚、余談になるかもしれませんが、子供には、法律上の婚姻関係のない男女から生まれた非嫡出子も含まれることになっており、嫡出の子供と同等の相続権を持つ、とされています。

また相続人が直系卑属(子や孫)だけや直系尊属(父母や祖父母)位までなら相続の面で揉めることも可能性は少ないといえますが、相続人の範囲が兄妹姉妹位まで及ぶと面倒で相続トラブルに発展する可能性が多くなるようです。

現金ならばいくらで各々分けるかで解決しますが、相続するのが空き家や土地等の不動産売却は、相続人全員の一致で行われなければなりませんので本当に面倒です。

一人でも反対すると相続不動産は売却ができなくなり、相続処理が長期化し面倒なので、相続後に行われる遺産分割の話し合いで、誰か一人を代表者として空き家や土地等の不動産の名義人になってもらい、売却後の現金を相続人皆で分ける方法が良く使われます。
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2.親名義の不動産を代理で売る場合

親本人に空き家や土地等の不動産を売りたい意思があったとしても、療養中などの理由で、実際の手続きが出来ない状況は、高齢になればなるほど起きやすくなってきます。

療養の長期化で要介護度が上がってしまうなどの理由で空き家や土地等の不動産を売って、介護費用に充当したい場合も出てくるでしょう。

そのような時に、子供が親の代わりに空き家や土地等の不動産を売ることは可能でしょうか?

結論は可能ではありますが、書類と印鑑証明が必要となります。
ではどういった書類が必要か見ていきましょう。

療養中などで親の代わりに子が不動産売却をする際、必要となる書類

まず、子供が親の代わりに空き家や土地等の不動産を売るには、親が署名のうえ実印を押印した「委任状」親の印鑑証明書を添付して、親の空き家や土地等の不動産を購入希望する買主と売買契約を締結するのが普通です。

そうしないと、売買契約に親本人の意思があるのか、買主が確認出来ないからです。

親に代わって売却の意思を示す子供(代理人」という位置付けです)が、親本人と同じ権限を持っているのか、一部の権限しか持っていないのかは、委任状の内容次第です。

便宜上、子供が親を代理するなら、全てを子供に任せてしまう、つまり全権委任が多いのではないかと思われます。

しかしながら、親の空き家や土地等の不動産を購入希望する買主の立場からすると、親本人からの委任状があっても、偽造の疑いは無くならず、親本人に直接売却の意思を確認したいと言われるかもしれません。

また、親子関係が確かであるかどうか、戸籍謄本を持参してきてもらったり、運転免許証等で本人証明を当然確認されます。

弁護士を代理人として委任状を作成すべき

ちなみに、親子だからといって無条件に委任状が信用されるようなことは少なく、高いお金が動く不動産取引の場では万が一にも騙されたくない買主側は、お金を払ってでも専門家を雇うなどして、かなり慎重に確認して手続きを進めようとするはずです。

ですから、売主が正規の売主であるという一つの方法として、子供ではなく例えば弁護士を代理人に選任するなどすると、親の空き家や土地等の不動産を購入希望する買主も信用しやすくなります。

司法書士による、不動産売却の当事者意思確認に関する義務

また、不動産取引の最終残代金をやり取りする場、所謂、決済の場を仕切ったり、決済後即日法務局に登記申請手続きを行う司法書士には、取引や登記の公平性・確実性を担保するために、売主・買主各々当事者本人の意思を確認する義務を負っています。

ですから子供が親に無断で親の空き家や土地等の不動産を売ろうとしても、手続き上もし疑問を抱けば、司法書士が歯止めをかけますし、その役割を担うため国家資格を与えられているのが司法書士なのです。

もし本人の意思が反映されず権限のない代理(無権代理、といいます)で締結された契約は、本人が追認(後から認めること)をしなければ、本人に効力が発生しません。

さらに、子供が代理権を持っていないと知った買主は、契約をさかのぼって取り消すことが出来ます。

従って、子供が勝手に親の空き家や土地等の不動産を売ろうとして、仮に不動産の売買契約を締結したとしても、残代金決済の段階で司法書士が親に確認すれば売却の意思がないと気付けますし、事実を知って危機を感じた親の空き家や土地等の不動産を購入希望する買主は契約の取り消しを求めることが可能なので、司法書士等を雇うなどの正当な手続きが必ず必要です。

3.親が判断出来ない事情がある場合

冒頭から述べている通り、親の空き家や土地等の不動産であっても、親が生きている限り親の所有物であり、身内を含めて本人以外の人が勝手に売ることが出来ないのは大前提です。

ところが、急に意識不明の重体や認知症などで、親が売る意思を示せない状態になってしまうと、それらの大前提どうなってしまうのでしょうか?

委任状の作成ができない場合…成年後見人制度

前項で親の代わりに親の空き家や土地等の不動産を売る方法として、代理が可能であることは説明しました。

しかし、代理には委任状が必要で、委任する意思も示せない親では、委任状が正しく本人の意思を反映しておらず無効に扱われる恐れが多くなります。

自らの意思を示すことが出来ない人に対して、保護的な役割を持たせる成年後見人(せいねんこうけんにん、と読みます)であれば、親の空き家や土地等の不動産を売却することが可能になります。

成年後見人は、家庭裁判所に選任される必要があり、手続きは家庭裁判所で行います。但し、成年後見人に選任されても、何でも自由に財産を処分できるものではなく、親に必要な費用(例えば介護費用や療養費など)でなければ、財産の売却は家庭裁判所からは許されません。

成年後見人は本人に代わって財産を管理出来る権限を持っていますが、財産を使う時は必ず本人のためであることを条件とします。

また、現に親の住んでいる家の売却には、別途家庭裁判所の許可を必要としますので、もし売却が必要になっても、親が住んでいない土地があれば、家庭裁判所も、そちらから売却を進めること指導することになるでしょう。

子供が成年後見人になることは珍しくはない…が

親が認知症や精神障害を発症させて、成年後見人が必要になった時、子供が成年後見人になることはめずらしい事ではありません。

または、配偶者が健常者ならば、配偶者が成年後見人になることもよくある事です。これは、後見制度の設立意義から考えても、身近な親族によって支えていく方が本人のためにもよいと考えられているからです。

しかし、成年後見人は、家庭裁判所によって選任される都合上、親族だけで自由に決められるものではなく、弁護士等の親族以外から選任される場合もあります。

家庭裁判所に選任してもらうための申し立てでは、候補者を提出するので、もちろん親族である子供が自ら候補者になることも、親族等の協議で候補者を決めることも可能です。

それでも家庭裁判所子供本人や親族が望んだ候補者を選ぶとは限らず、望んだ候補者以外が選ばれても子供本人や親族は不服を申し立てる事も許されてはいないのです。

何故このような仕組みになっているのかは、成年後見人に代表権が与えられているからで、止むを得ない事情で自らの意思を示すことが親などの本人を保護する目的だからです。

親の空き家や土地等の不動産を売る目的で成年後見人になるということは、親の空き家や土地等の不動産という財産を不当に手に入れたい場合と区別が付きにくいので、子供本人や親族が望んだ候補者を選ぶことに対しては家庭裁判所も子供本人や親族を選ぶことに対して慎重にならざる得ないのも分からなくはありません。

4.贈与を目的に売る場合

これは、例えば親の住んでいない家や土地を想定していると考えるとわかりやすいのではないでしょうか?

親の空き家や土地等の不動産を子供に名義変更すると、もちろん、それは親から子供への「贈与」とみなされます。

贈与の対象がお金だけではなく親の空き家や土地等の不動産であっても、贈与であることには変わりはないので、お金、不動産のどちらが先でも大きな金額になると、高い税率で贈与税がかかります。

実際の贈与の手続きとしては、名義変更するだけですから、親子で法務局に出向いて(実務としては、名義変更するだけと言っても何度も法務局に出向かないといけないため司法書士に依頼することが多いでしょうが…)必要な登記をすれば完了です。

その際に贈与での名義変更ですから、登録免許税が物件評価額の2%かかります。(司法書士に依頼する場合には司法書士に報酬の支払いが必要な事は言うまでもありません)。

ちなみに相続の場合では登録免許税が物件評価額の0.4%で済みます。

贈与税率は、相続税率よりも遥かに高く、相続がもし近い時期にあるのであろう場合には、税金の負担額をよく考えて、贈与にするのか相続にするのか決めておく必要があります。

そして最終的に登記完了後、家や土地の価値に応じて贈与税を支払うことになります。

ここまで見てくると、贈与前に家や土地を売って現金を親から子供に渡す方が良いのか、子供の名義にしてから子供に家や土地を売却する方が良いのか、つまりどちらが得になるのか気になるのではないでしょうか?

実際には支払う贈与税額は贈与を受けた金額によっても変わってきます。

贈与前に家や土地を売って現金を親から子供に渡す場合には、子供が贈与金額に応じた贈与税を納めるのは言うまでもありませんが、子供の名義にしてから子供に家や土地を売却する場合には、子供がその家や土地を売却によって利益を得れば譲渡所得税(所得税と住民税)を負担しなければならなくなりますので注意が必要です。

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まとめ –

親の空き家や土地等の不動産を売る場合をケース別に見てきましたが、何度も申し上げますが、基本、空き家や土地等の不動産を売ることが出来るのは所有者に限定されます。

親名義のままで親の空き家や土地等の不動産を売ることが許されているのは、委任状による代理と成年後見人による代理だけであり、成年後見人による代理は、売却が親のために必要な場合だけに限定されています。

したがって繰り返しになりますが、子供が親の空き家や土地等の不動産を売る場合、何よりもまず先だって、不動産の名義変更を先にしなくてはならないことを忘れてはなりません。

それが相続起因の名義変更ならば、複数の相続人でトラブルの可能性が多く、しかも、相続前の名義変更である場合は高い贈与税が発生することは理解しておいて下さい。

つまり、親の空き家や土地等の不動産を売りたい場合には

  1. 相続した場合の家や土地はまず名義変更してから
  2. 親の代わりに売る場合は、委任状が必要となる
  3. 成年後見人は親に代わって売却出来る
  4. 生前の名義変更は贈与に該当する

この4つは最低限押さえておいて下さい。

余談ですが

余談の追加となりますが、最近テレビで話題になった話題について、少し触れながら説明を加えたいと思います。

今年5月テレビ報道で取り上げられた価値のない山林が放置されていて、誰も管理が出来ない状況下で竹等が伸びるなどで危険を感じた隣接の方々が恐怖している、といった報道がありました。

あの件もは財産の一部だけ相続放棄できない」というルールから問題が発生した、と言えます。誰も価値の低いもしくは、価値のない財産は放棄したいものですが、それの相続を放棄すると、それ以外の価値の高い財産も放棄しないといけなくなるのが現状の相続です。

つまり、相続財産は一部分だけを選んで放棄することはできないのです。

したがって相続財産が多数ある方は、成年後見人が必要となる前にご自身で相続に関して配偶者を含めた家族が後で揉めないようにしておくことが大切になります。

結局、総務省で5年に1度の割合で全国を対象に「住宅・土地統計調査」で今話題となっている820万戸に上る空き家問題でも原因のひとつとして挙げられるのは、“現状で何もせず問題を先送りにしていること”です。

相続も同じで現状で何もせず問題を先送りしたことで、問題解決を残された人々の押し付けている、と言えば言い過ぎでしょうか?

配偶者や残された子供、孫達に“親名義や家族名義の空き家を売却できるの?”と悩んで、対応で苦労させることがないように、親世代と子供世代との親の存命中に計画的な相続に関する対話が必要なのかもしれません。

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空き家隊長

空き家隊長

実家の相続をきっかけに空き家問題に直面。すったもんだの末に何とか売り抜ける。その際に経験したこと、様々な外部のプロに教えて頂いた空き家問題、土地活用問題について記事にしていきます。
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