空き家リフォームのメリットとデメリット




はじめに

空き家が増えて社会問題となっています。

「日本の空き家は820万戸」「空き家率は13.5%」などといわれていますが、本当に日本にはそんなに空き家が多いのでしょうか?

東京オリンピックが開かれる2020年には、全国の空き家は1,000万戸に達し、空き家率は15%に上るとされています。

そこで詳しく調べてみると、実はこの820万戸の中には、賃貸用の住宅(429万戸)、売却用の住宅(31万戸)、別荘などの二次的住宅(41万戸)が含まれていて、社会問題となっている活用されていない空き家は、318万戸になる事がわかりました。

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賃貸用や売却用の住宅は、近い将来、誰かが住む事が予想され、管理も行われているので、社会問題となっている空き家とは少し意味合いが異なります。

また、「別荘」なども誰かが定期的に管理していれば「空き家」とは違います。

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私たちがイメージする、管理が行き届いていない個人宅の空き家は、820万戸でなく318万戸だったのです。こうした空き家は、昭和33年位から増え続け、最近10年間で24%も増加しているそうです。

また、空き家の所在地のほとんどが、地方のいわゆる農山漁村地域ではなく、市街地またはその周辺部にあるといったデーターもあります。

空き家が社会問題となる背景には、空き家には様々なリスクがあるからです。
その代表的なものをまとめると、次の通りになります。

  1. 経年劣化による老朽化
  2. 地震、台風、大雪などによる倒壊や破損と、それによる近隣への影響
  3. 周辺環境の悪化や市場性の低下
  4. 部外者の侵入などによる防犯上の問題及び犯罪の温床となる危険性

一方、空き家を適切に管理するためには、年間30万円程度の維持費がかかるといわれています。その内訳は、清掃、草刈、庭木の剪定、点検、修繕、設備の更新、除雪などです。

空き家の持ち主の一番の悩みは、「空き家を何とかしたい」という事に尽きると思います。しかし、空き家を何とかしたいと思っていても、何もできない理由も様々でしょう。

  • 何をするにもとにかくお金がかかりそう
  • 家財や荷物の整理、処分が面倒
  • 遺品の処分ができない
  • 将来的には自分で住む可能性がある
  • 何か面倒な事に巻き込まれそう・・・
  • 自分が所有者だと近所の人に知られたくない
  • 相続が未了
  • 所有者が複数いて、意見がまとまらない
  • 何をしたらよいのかわからない
  • 遠方に住んでいる

など、「時間がない」、「お金や手間をかけても割に合うかどうかわからない」、「知らなくても良かった事がわかると、修繕費などの余分な出費が増えそう」などの不安から、積極的に行動できないで放置しているケースが多い事が想像できます。

それでもご近所の迷惑にならない様、細々と管理を続けている方も少なくありません。

「風通しの実施」「敷地内の雑草取り」「郵便物の整理」「雨漏りや水漏れの確認」などですが、空き家に対して根本的に手を加えて市場価値を取り戻そうと、積極的に行動する例はごく稀の様です。

空き家についての日常管理はさすがに約8割の方が自分自身、または家族や親せき、あるいは地元の管理会社などに委託して行っているそうですが、13%の方は特に何もせずに放置していることが明らかになっているようです。

しかし、人が住まない家は傷みが激しくなり、経年劣化の度合いは居住している家屋と比べると大きくなります。

たとえこの程度の管理を続けていても、ただ問題を先送りしているだけで、問題の解決にはなりません。つまり、いつかは何らかの活用方法を考えて実践しなければならないのです。

しかし、空き家を活用するといっても、選択肢はそう多くはありません。
大きくは「自分で住む」か「売る」か「貸す」かです。

土地や建物の持っている価値を今以上に高めて活用するか、その価値を売却してお金に替える事のいずれかになります。

ところが自分で住むには不都合なばかりか、この様な土地や建物に対してのニーズがどこにも存在しないケースが多いのが問題なのです。

「空き家を活用しよう!」という風潮は、近頃国内のいたるところで耳にします。

単に住居として賃貸するだけでなく、民泊施設として利用したり、古民家をカフェなどの商業施設に改装したりするケースや、介護・福祉施設などへ転用(コンバージョン)する例もたくさんありますが、成功しているのはほんの一部だと思います。

しかし、改修工事にかけた費用の回収の目途が、立たなくなってしまう事が多くなっています。

空き家はそのほとんどが築年数が古く、傷みもあるので、活用するためには多額の改修費がかかるケースも少なくありません。
また、耐震強度不足などがあると、耐震補強工事にもコストがかかります。

空き家をリフォームして自ら居住する場合には、自分自身が満足できれば良いのですが、不動産収益を考えるとなると一筋縄ではいきません。

売ったり貸したりするためには、大きなリスクを負う可能性があるのです。
しかしリスクを避けて何もしない状態では、売る事も貸す事もできないので、結局放置され続けているのが現状です。

そこで今回は、空き家をリフォームして売却や賃貸を考えている方が、知っておくべきリフォームのメリットとデメリットを中心にお話したいと思います。

空き家リフォームのメリット

空き家を売るにしても貸すにしても、リフォームにかけた費用以上の利益を生み出す事ができなければ、空き家をリフォームする事にあまり意味がありません。

しかし、空き家を建て替えると15万円程度の固定資産税を毎年払う必要がありますが、リフォームですます事ができれば、古い家の固定資産税額のままですむ事がほとんどです。

これはリフォームのメリットといえます。

一方、前述した通り、市場には賃貸用の空き物件(429万戸)や売却用の住宅(31万戸)が、すでにたくさん溢れています。

この中から顧客に選んでもらうのは、簡単ではない事が容易に想像できます。

所有している空き家が、パッと見だけで古い、狭い、寒い、暗い、汚い、不便では、誰も住みたいとは思わないでしょう。

「床が抜けた」、「一日中電気をつけている必要がある」、「隙間風が吹く」、「お湯が出ない」、「シロアリがいる」、「設備が旧式」…長い間空き家になっている家では、こんな事も珍しくありません。

空き家リフォームの目的は、顧客を引き付けるセールスポイントを如何にして生み出すかに尽きます。リフォームで建物に新たな価値を付加できれば、買い手も借り手も探しやすくなります。

また、建物の倒壊や犯罪のリスク軽減にもつながり、近隣に迷惑をかけずにすみます。
さらに、将来自分が住む場合にも、「資産」としての価値が上がるのもメリットといえるでしょう。

そもそも空き家になっているのは、通勤に不便、生活に不便などの立地条件や居住者の転勤、死亡・相続などの特別な事情を除けば、建物に何らかの不具合があるからだと思います。

それを修理、改善し、人が住みやすい家にする事が、本来の空き家の活用方法といえるのではないでしょうか。

リフォームはそのための有効な手段になるのです。

空き家リフォームでは、まず「なぜそこが空き家になっているのか?」空き家の発生原因に目を向ける事が大切です。

そこに自分が住んで、生活する事を想像した上で、暮らしやすい様に変えていくのです。
自分が住みたいと思わない家に、他人が住みたいと思うはずがありません。

だからといって、最初から大きなコストを投入すれば、採算があわなくなるのは目に見えています。

空き家リフォームでは、自分が「住みたい」家を目指す前に、まずは「住んでもいい」家を目指す位の気持ちを持つ事が重要なポイントだと思います。

空き家リフォームを成功させるポイント

空き家を売ったり貸したりする場合に、顧客の目を引く様にリフォームするといっても、家全体に手を入れてまるで新築の様にリフォームしようと思ったら、1,000万円あっても足りません。

建て替えるのに近い費用がかかってしまいます。

そこで、顧客のターゲットを絞りこんで、メリハリを付けたリフォーム計画を立てる事は、ひとつの有効な手段となります。

リフォーム箇所を絞り、そこに重点的にコストを投入する方法です。
たとえば、

  • 収納を増やして他の物件と差別化する
  • 廊下に趣味の作品を展示できるギャラリーを造る
  • 車やバイク好きな人のために、部屋を一つ潰してビルトインガレージに改修
  • する
  • 車を2台所有している人向きに、庭に2台分の駐車スペースを確保する
  • 子供部屋にロフトを造る
  • サニタリー設備を充実させる
  • 女性に人気の高いアイランドキッチンを設置する
  • DINKs向きの間取りにする
  • 家庭菜園やバーベキューコーナーを造る
  • ホームパーティーができる様に、1階をワンルームにする
  • 茶室を造る
  • 屋根裏に書斎や趣味の部屋を造る
  • 太い梁を表しにする
  • 2階の寝室近くにトイレやシャワールームを新設する
  • 2階建の家を平屋に減築する(耐震強度上も有利になる)

などです。

他にも、中古住宅を仕入れてリフォーム後に再販を行っている、再販リフォーム会社の施工例などを参考にしてみるのも良いと思います。

また、はじめにある程度の費用をかけてプロに依頼してリフォームを行い、その後は少しずつ自分で改装する方法もあります。

あまりおすすめできませんが、中には全てDIYで改装しようとする方もいるでしょう。安く自分の好きなように改装するには、DIYはうってつけです。

しかし、家のリフォームは思った以上に大変で、危険も伴います。

必要な電動工具や仮設資材をそろえただけで、予想以上に高額な費用がかかってしまったという事にもなりかねません。

1年以上経っても、ほとんど何も進んでいないなどという例も珍しくはないので、良く考えてから実行する様にしてください。

一方、建物の老朽化がひどいのに、接道していないなどの理由で建て替えができない場合には、残念ながら大規模リノベーションするか、安く買いたたかれるのを覚悟して、不動産再販業者に売却する位しか選択肢がありません。(建物を解体して更地にして売却しようと思っても、再建築不可では余程のことがない限り売れません)

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そのまま放置しておくと、ますます老朽化が進んで、改修費用がかさんでしまいます。しかし、適切なリノベーション工事を行う事で、ボロボロだった物件が高収益物件に変身する事もあります。

ただし、綿密に計画を練らないと、リノベーション費用の回収も難しくなってしまうので、要注意です。

また、大がかりなリノベーションを行う際には、建設業許可を取得しているリフォーム会社に依頼する事が大切です。

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リフォーム会社の中には、本来なら500万円(税込)未満の工事しか請け負う事のできない、建設業許可を持たない業者も存在しています。

このような業者の中には、社内に建築技術者(建築施工管理技士、建築士)が在籍していない事もあります。

戸建住宅のリノベーション工事では、建物の構造躯体にまで手を加える事が多いので、建築技術者がいない業者では、施工不良や不具合が発生する可能性が極めて高くなるので、注意しなければいけません。

そしてリノベーション前には耐震診断を行い、耐震補強工事を併せて行っておくことをお奨めします。

近年では、制震ダンパーを使用した耐震補強なども行われていますが、耐震強度が低い建物に制震ダンパーを設置しても、効果が低いので注意してください。

リノベーション工事を行う際には、顧客の要望に親身になって応えてくれる、大規模リノベーションに手慣れたリフォーム会社に相談する様にしましょう。

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リフォームのデメリット

リフォームする事の一番のデメリットは、お金がかかる事
そして、かけた費用を必ずしも回収できるとは限りません。

費用をかけてリフォームしても、いっこうに買い手や借り手が現れないという可能性もあります。

さらに、2000年の建築基準法改正前の建物の多くが、耐震補強工事が必要とされる建物です。
耐震強度を確保して商品価値を高めるためには、さらに追加費用がかかってしまいます。

一方では、リノベーションして住むのを目的に、中古住宅を探す方もいます。
その様な顧客をターゲットにして売却する場合には、建物は古くても大丈夫なので、リフォーム費用を抑える事が可能になります。

しかし、見学に来た顧客に嫌悪感を与えない程度までの、最低限の修繕は行っておく必要があるでしょう。

他にもリフォームのデメリットとして、大規模リフォームによって老朽化が解消されると建物の価値が上がるので、固定資産税が上がるといわれる事があります。(固定資産税は3年に1度の見直しがあります。)

しかし、増築や用途変更などの建築確認申請が必要になる工事を行わない限り、リフォームで固定資産税が上がる可能性は低いと考えて良いでしょう。

空き家リフォームの費用

空き家をリフォームするには、いったいどれ位の費用がかかるのでしょうか。
リフォーム費用の大体の目安を知っておく事は、活用方法を検討する上で有効です。

そこで、空き家リフォームで必要になると思われる代表的な工事のリフォーム費用の目安についてご紹介しておこうと思います。

化粧スレート屋根と外壁の塗り替え(延床面積100㎡、2階建て、足場代共)

120万円~

システムキッチンに交換する(間口2400mm)

70万円~

在来工法の浴室をシステムバスにする(0.75坪)

100万円~

システムバスを交換する(0.75坪)

60万円~

洋風便器を交換する(温水洗浄便座付き)

20万円~

洗面化粧台セットを交換する(間口750)

15万円~

建物内部の給水、給湯配管を交換する

30万円~

全室の天井、壁のビニールクロスを貼り替える(延床面積100㎡)

40万円~

耐震補強工事

平均 約150万円

※価格は全て税別価格です

以上は、新築ローコスト住宅や賃貸住宅向けの商品を使用したケースです。
商品のグレードや仕様によって価格が大きく上昇します。

特に間取り変更や断熱改修、耐震補強などを行わなくても、屋根、外壁、内装、水回り設備などを全てをリフォームすると、30坪の2階建住宅でリフォーム費用は500万円を超えてしまいます。

こうした事を念頭に、空き家の活用計画を立てる事が必要です。

古民家空き家のリフォーム手法

空き家の中にも、「古民家」と呼ばれている木造軸組工法の「伝統構法」で建てられた築50年以上の住宅があります。

日本の住文化の象徴で、建築当時の生活が色濃く残されていて、伝統的な地域の文化に結び付いた間取りや造りが特徴です。

こうした古民家は年々少なくなっていますが、空き家として残されたものが全国にはまだまだ数多く存在しています。

昔の木造住宅には、丸太や太い梁、太い柱など、高品質な木材がふんだんに使われています。大工の木材加工技術も素晴らしく、歴史的価値が高いと思われます。

このような、我が国の住文化の原点である古民家を後世に残す事は、きわめて重要で、社会的意義も高いのではないかと思うのです。

基礎、土台や柱、梁以外を解体して工事し直す比較的大がかりなリフォームになる事が多いと思いますが、断熱性や耐震性などの性能向上リフォームと併せて行えば、資産価値の高い住まいになるのは、ほぼ間違いなさそうです。

内装や設備工事費が多少かかりますが、構造躯体がしっかりしている事が多いので、費用対効果が高い様に思います。

住宅以外にも、カフェや飲食店、物販店、事務所などとして使われるケースも目立ちます。近年ではこの様な古民家を購入して、フルリフォームする方も増えているようです。

まとめ

「転勤や住み替えなどで、以前住んでいた家がそのままになっている」、「親からの相続で不動産を手に入れたが、既にマイホームを所有している」などの理由で、以前は個人宅として活用されていた住宅が空き家になっているケースが空き家全体の2/3を占めているといいます。

そして全国の空き家の数は年々増加しています。

また、空き家となっている住宅の約68%が築20年以上で、33%が築36年以上というデーターもあります。

一方、空き家のまま放置していると思わぬリスクが発生します。また空き家として所有しているだけで、誰も住んでいなくても課税されていきます。

空き家の所有者の多くが売却なり賃貸なりに活用する事を考えているようですが、実態は厳しいものの様です。

建物の築年数が経過していて空き家期間も長く、老朽化が激しいため、そのままでは売却するにも賃貸するにも支障があるためです。

そこで、リフォーム・リノベーションによって新たな価値を生み出す事が重要になります。誰も住んでいない家は、どんどん劣化が進行します。

築年数が浅い物件ならば、それほどお金をかけなくても最低限のリフォームで活用できる場合もありますが、建物が古くなれば古くなるほど、家全体のリノベーションが必要になってしまいます。

そうなれば当然コストもかかるので、リフォームする気持ちにストップがかかってしまいます。まったくの悪循環です。

反面、中古住宅を求める方も少しづつ増えている様に思います。
リフォーム・リノベーションで新たな付加価値を加えられれば、中古住宅を魅力ある商品に変える事も可能です。

実際にそのような事業を行い、年々業績を伸ばしている不動産仕入再販業者もいます。
また、自治体によっては、空き家をリノベーションする事で、補助金が受けられるケースもある様です。

空き家を放置して問題を先送りせずに、できるだけ早いうちにアクションを起こす事が必要だと思います。

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益子公博

益子公博

住宅会社で20年以上リフォーム事業の責任者経験があり、リフォーム業界、住宅建築業界の裏事情やリフォーム現場には精通。ホームインスペクション(住宅診断)の専門会社を経営、住宅診断、欠陥住宅相談、リフォーム会社への社員研修など実施しています。
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