「隣地境界」の問題は空き家不動産の売却障害になる




あなたの空き家、隣地との境界はきっちりと登記されていますか?

空き家に限らず、不動産の難しいところというのは、人と人との関係や約束事を、いちいち登記しておかないといけないというもの。しかし義理人情や、近所のよしみなどもあり、やはり全部が全部登記されてはいない空き家と土地も珍しくありません。

特に空き家物件が古ければ古いほど、隣地との境界に曖昧さが存在している可能性が捨てきれません。

それは登記をするという作業そのものが面倒なこともありますし、ちょっとした便宜のために役所や隣人を巻き込んでまでたいそうなことをする必要もないだろうという、人間関係が絡んだ近所同士の気持ち的なものが原因だったりします。

過去の約束に関係している人がみんな未だに生きていれば問題ありませんが、そのようなことがあったことすら知らずに、あなたが登記事項証明書を上げてみて初めてその事実を知ったり、なんとなく聞き知ってはいたけれど、隣人と境界の話題に触れるのが億劫だなと思っているうちにお隣さんも亡くなってしまい、その子供や孫といった家族との攻防に発展してしまうようなこともあります。

「おじいちゃんが生きているときは、本人が別に問題ないと言っていたから」という理由だけで、自分の土地を隣地と分け合って使うことをよしとする人ばかりではありません。

きちんと区画がされ、それ一つで独立した要件を満たし作られているものですから、それは当たり前のことなのです。

従って、空き家の隣地境界の問題は、「普通に居住して使い続けるならば問題ないが、いざ相続をしたり、空き家や土地を売却するとなった時に深刻化する問題」の代表例なのです。

空き家の相続タイミングによっては、相続人がそれぞれ既に別途の場所に住居を持っているため「仕方なく実家の空き家を相続することになったから、すぐに売却したい」というケースもあるでしょう。

このような場合、お隣さんとの隣地境界についての話は「土地を売却しようとして利益を得ようとしている側」に弱みがあります。

境界に均等にブロック塀などが経っている場合などは、その取り壊しや修繕費用にまで話が及ぶため、人間関係次第では「ウチは今更コストをかけて境界線をはっきりさせたりはしたくない」と協議そのものを拒まれたり、下手をすると「コストは全て空き地を売りたいあなたが出してください」と、想定外の条件を出させる可能性も考えられるでしょう。

この空き家を売る際の隣地境界問題についてどのように解決するか。はたまた解決ができない場合どうしようかを考えてみたいと思います。

隣地と境界に問題が生まれる過程

そもそも境界の問題というのは、なぜ、どのようにして起こるのでしょうか。まずその原因を例示して当時の人の土地に対する考え方を見てみましょう。

空き家の境界問題が時とともに複雑化する事例

事例1:空き家を所有していた父(故人)が、庭に納屋を建てようと考えたが、地型の問題で一部隣地をまたいでしまうので、お隣さんに相談したところ、了承をいただいたのでそのまま建てた。尚、この納屋は登記していない

事例2:従来の玄関よりも便利のいいところに勝手口を設けたら、そこから家に入るルートが隣地をまたいでいる。しかし隣人にその旨を申し出ても特にどうにかするようには言われず、「理解はしていただいた」ので数十年このままになっている。

事例3:旧来の杭に準じてお互いの境界を決めて塀を建てたものの、地積調査で実測してみるとわずかにずれていて我が家の塀がお隣の敷地に食い込んでしまっている。境界確認の時に「とりあえずこのままでよいでしょう」ということになり、数十年そのままになっている。

どの例も大昔のことであり、では実際に「空き家になったから土地を売りたい」との考えが出た際に、隣人と大きくもめる可能性がでてきます。

意外と浅い、不動産所有権の登記

日本の不動産登記の制度は、第2次世界大戦後急激に変わりました。戦後の焼け野原からの復興と、国の成長を目指し、国土を高度利用する必要があったからです。

国土の状況を正確に把握し、どこをどのように活用するか都市計画を進めていくうえで、所有者個人個人の不動産所有の内容をデータ化する必要があったのです。

それ以前、例えば広く個人に対して土地の所有が認められたのは、実は明治時代からだったのです。

それ以前、江戸時代より前のお話ですね。その頃は各地方を納める藩主や豪商など一部の人しか土地の所有はしておらず、臣民である百姓や商工人等は、藩主や豪商から土地を預かり、その土地で耕作をしたり商工業を営み、その土地を使用収益して得た果実の決まった割合を年貢(税金)として納めていたのです。

年貢から税金に、でも実質どう違うの?

その後江戸幕府は実権を天皇に返し、日本は三権分立国家として新たな道を歩んでいくことになります。その後廃藩置県で藩のあったところに県という行政体を置き、さらに地域によって町や村などの自治体で統括することにより国民主権のシステムが整備されたのです。

このような状態でもともと藩の田畑を耕して年貢を納めていた人が、形として自分の持ち物となったには間違いないが田畑を耕して年貢を納める代わりに、預かった田畑の面積に応じて税金を払わなければならなくなったのです。

これでは実質的な違いというものがない上に、生産性のないヘタ地などどうでもいい扱いになるのは無理ありませんね。隣の倉庫がからもうが、家の通路がからもうが、本当にどうでもいいお話です。

実際お金を出して土地を購入しているわけでは、当時の人はありませんからね。管理の手間ができた分、面倒だったのではないでしょうか。

高度成長期で都市部の地価は急騰

その後、二回の世界大戦を経て焼け野原から数十年で目覚ましい発展を遂げ、先進国の仲間入りをした日本のサクセスストーリーは、日本人であれば当たり前のように教育され、皆さんご存知のところでしょう。

しかしこの頃から、人口や税収による格差は広がり始め、産業の集中するところは潤沢な税収で都市化が進み、産業に乏しい地方では担い手を失い産業が衰退し、税収も乏しく過疎化が進みます。

マイホームを夢見て大きく成長する都市部の企業でモーレツに働いたお父さんは、やがて地価が急騰した都市近郊部の大規模造成宅地に大枚をはたいて自宅を新築します。このような流れのなかで、都市部の人には不動産に対する価値観が芽生えたのです。

土地が持つ価値の違いと区画整理の正確さが感覚にも格差を産む

都会では土地の値段が1㎡で何万円もします。塀の間が10センチ内に入っていても、前から奥まで10メートルあれば、その差で何万円も値段が変わるのです。購入するときの税金は購入した金額にかかるし、固定資産税は路線価にかかってくるし、そのその違いが大きいからこそ、問題がシビアになります。

対して田舎の土地なら、そもそも実測をしていないから謄本に記載されている通りの固定資産税を払っていれば大丈夫です。地価が安いから、固定資産税も気にならないくらいの金額なので問題はありません。もし実測するとなれば費用は大きくかかるし、隣地との境界が現実的に両方の便宜のためにバラバラになっている。今これで不便がないし、わざわざ費用をかけて面倒な話をするのも嫌だなあ。と考えるのが普通の流れです。

田舎の古家・古民家が売れにくいという問題は、このような土地の所有における諸問題について、都市部の人には考えられないくらい常識がかい離しているせいではないか。と筆者は思います。

常識の違いを理解していない業者にも間違いがある

そして田舎暮らしを進める一部の宅建業者やNPO法人の中には、(別に無駄とは言いませんが)都会の人が好むような表面的な空き家改装のみをして、隣地境界問題について放置したままそこそこ高値を付けて販売しようとしている傾向がみられます。

不動産の価値に対して感覚がシビアな都会の人を相手にするには、ちょっと田舎の不動産に対する落としどころを見誤っているような…ともすれば消費者をなめているのではないかと思わざるをえませんね。実際に都市部でも同じように隣地境界に問題のある空き家不動産が表に出ることもあります。

そのような隣地境界問題を抱えた空き家物件には、周辺の売買事例と比較して20%~30%程度の値しか付きません。20%~30%引きではありません。例えば平均1,000万円のところなら、200~300万円の値しかつかないということです。

こういうところを行く理解して、もう少しかけるところにお金をかけて都市部並みに整備をしてみれば、少し高くても空き家物件が流動的に売買されるようになるのではないでしょうか。

結局、隣地境界問題がおきたらどうすればよいのか?

境界の問題は、はっきり言って現所有者同士の話し合いでしか解決しません。そして問題解決がなされなければ、該当の空き家不動産をまともな値段で売ることはできないでしょう。

問題解決のお願いをする方(口火を切ったほう)が、相談された側(隣人等)の条件をまるっと飲めば一瞬で解決しますが、最終的にはお金の話になることは必至です。

「別に私たちは今さら境界線を測量したり、建築物を壊したりするためにお金を出す必要性はありません」などと、コスト的にあうあわないも問題として指摘される可能性がありますし、総体的に隣地問題の話し合いは難しい交渉になることが予想されます。

お金の話さえ解決すれば、測量を依頼した上で正確な境界線をお互いに把握して、もしも境界をまたぐ形で建屋や通路などが存在した場合に「どうするか(解体するか、維持するか)」を決めればよいことになりますが…解体コストなどは非常に高額ですので、話を進めるうちに更にひと悶着して裁判沙汰に…ということも珍しくありません。

かといって、相談もなしに勝手に測量を行ったり、法律家がしゃしゃり出てくるなどという手段をとれば、隣人との人間関係が崩壊してしまって、解決できる問題も解決できなくなるでしょう…。
このように、空き家の隣地境界問題は、非常にセンシティブな問題なのです。

しかしながら、まずは正しい測量をすることは、空き家オーナーのあなたと隣人双方にとってデメリットは全くありませんので、測量代金だけをまず折半し、その後はじっくりと話し合いの場を設けるように説得する事から始めるべきでしょう。

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正確な境界線の測量調査は、国もそれを望んでいる

平成28年の11月現在で、国策として推進されている地積調査の事業が60周年を超えたそうです。この特措法は時限立法で、延長が繰り返されていて、現在全国土の50%が実測を終えているようです。全部終わるまでに単純計算であと60年かかりそうですが、全制覇を目指して事業は続けているようなので、実測を行われていない集落などで、役場に提案してみるのもいいのではないでしょうか。

この事業では、国、県、役場の負担で実測を行い、所有者は境界立ち合いに協力するだけで変更登記や地図の備え付けまでを全部公費で行ってくれるという大きなメリットがあります。でも田舎の方ではそれが原因で隣家ともめるのを嫌って、立ち合いを拒否した家もあるそうです。

考え方によっては、悪い慣行を断ち切るいいチャンス

反対にいい加減に扱ってた境界問題に解決の糸口が見えて、このような事業が進められるのはいいチャンスになると思います。また、現実的に実測されていないということはこの事業が未実施、又は合意が得られない状態で断念されている可能性があるので、周囲の隣人と話し合ってこの事業を再施行してもらうよう嘆願すれば、次年度当たりの予算に組んでもらうことは可能でないかと思います。

こうして時を経た境界の問題を外から埋めて、実際に境界を侵している部分について修正をすることで、これから伸びていくであろう地方回帰に合わせて、地方の空き家をはじめとした中古不動産に正当な価値がつくことも考えられるのではないでしょうか。

トラブルの局面に達してからではなく、平時の事前に準備を

境界の問題を抱える空き家不動産は、地籍調査60周年を超えて、圧倒的に地方に集中しています。実際に古い空き家が多いのは地方に集中していますから、隣地境界問題が複雑なのも「古い家」であるから、それも当たり前でですね。

これから創生によって伸びるであろう地方にも、実際に震災復興から日本を代表する地価の上昇を見せ、成熟した魅力的な発展を続ける宮城県仙台市の市街地近くにも、このような境界の問題を抱える土地はあります。

日本の人口は減少基調にすでに入っており、これからの各都市の人口増減は大都市圏に居住する人口の切り崩しによって生じます。つまり、どんどん小さくなるパイを各地で取り合いするという構図になるのです。

冒頭に述べた通り、大都市圏に居住している人にとって不動産の所有権というのは重要な問題です。その問題が残っている状態の土地では、不動産の流動化は進みません。そのことでせっかく流れてきた人口が、数年後定着できずに流出するということも考えられます。

出来るだけ早く、空き家の隣地境界問題に向き合い解決をしている方が、地方の発展において先の展開が読める状態を作ることができるということなのです。

人間関係や金銭的問題が邪魔をして、どうしても早期に解決できないことは仕方がありませんが、こうしてパーソナルな問題として解決の余地のある問題は、どんどん積極的に解決した方がよいと、筆者は特に考えます。

地方に住む人にとって、空き家問題を解決することは、自分たちの町がこれからメジャーになる可能性を含むことを知るべき

また、海外の投資マネーが、近ごろ日本の田舎を物色しています。日本の不動産投資は都市部においてもうすでに頭打ちしているからです。地価は急騰し新築の場所はなく、供給率はすでに150%を超えそれこそパイの取り合い状態。投資に対する長期的な利回りが期待できないのです。

その点田舎の空き家不動産への投資は、安上がりなうえ大きく収益を上げることができる可能性もっています。

外国からの旅行者が持っているガイドブックには、その近辺で何十年も生活してきた人でさえすぐにはわからない不可解な史跡や名所が記載されています。

そこを目指して旅行をするには、滞在する場所が誰でも知っている都市部では不便が生じるのです。これからインバウンド需要が上がっていくと、そのような今はマイナーな場所に海外資本が流入して、大きくビジネス展開される部分が出てくるかもしれません。

隣地境界問題の解決はムダな空き家を減らし、地域経済の回転に寄与することを知る

外資が入った時に一番困るのが、その地域にビジネスのルールがないこと。これでは考えて実行うしたもの勝ちになってしまうので、外資が入ったらその人たちのやりたい放題、町は外資に乗っ取られてしまいます。

それを未然に防ぐために、自分たちの街の魅力を自分たちが把握しそれを生かしたビジネスモデルを形だけでも作り、協力してやっているという既成事実のルールが必要です。

実際北海道のニセコ周辺は、従来その地でビジネスをしていた日本人のコミュニティに、その姿に魅せられた外資系ビジネスマンたちが調和し、お互い協力しあいながら独自の文化を作り、発展に成功しています。

話は境界から大きくそれましたが、これからの地方の発展には、こういった空き家不動産の価値意識に対する地方の所有者の気持ちを改革する必要があるのです。そうしないと不当に安く乗っ取られた土地が、どんどんよそ者のカラーに染められて自分たちの居場所がなくなっていく実感を、地方の不動産所有者が体験することになるかもしれません。

そのためにも、隣地境界問題が原因で売るに売れない空き家問題を刻も早く解決することは、何気に地方経済にとっても非常に重要なアクションの1つでもあることを、私たちみんなが知っておくことは大事だと思います。

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空き家隊長

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実家の相続をきっかけに空き家問題に直面。すったもんだの末に何とか売り抜ける。その際に経験したこと、様々な外部のプロに教えて頂いた空き家問題、土地活用問題について記事にしていきます。
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