空き家再生のための屋根リフォーム、修繕のポイント




はじめに

普段はあまり気をつけて見る事がない屋根ですが、屋根は家の中でも最も厳しい環境にさらされているので、とても傷みやすい場所です。

また屋根は、家を風雨から守ってくれる重要なパーツでもあります。

本来あるべき位置から屋根葺き材が移動や欠損していたり、屋根葺き材を貫通するひび割れや、金属屋根に赤さびや腐食の発生などがあると、雨水の侵入による建物の劣化が促進されます。

そして屋根には、雨水の侵入を防ぐ役割だけでなく、万一近所で火災が発生した時に、飛び火が燃え移らないように家を火災から守る役割もあります。

また屋根が軽量であるほど建物への負担が少なく、地震の際にも揺れが少なくなるので、建物の強度が同じであれば、重い屋根よりも被害が小さくなります。

この様に、防水、防火、耐震などの住宅性能の面で、屋根の役割は非常に重要なのです。

一方、屋根は点検や補修作業がしにくい箇所なので、不具合があっても見逃されてしまいやすい場所です。そこで今回は、屋根の修理やリフォームのポイントについてご紹介したいと思います。

屋根の種類

屋根の形状は、勾配屋根(傾斜のある屋根)陸屋根(ろくやね:平らな屋根)に大別できます。

陸屋根は、ルーフバルコニーとして利用されている事が多く、鉄筋コンクリート住宅や鉄骨造の住宅に良く見られますが、木造の一戸建て住宅ではそんなに多くありません。

一方、勾配屋根の形状には、片流れ(一方方向のみに勾配がある)、切妻(棟を中心に二方向に勾配がある)、寄棟(四方向に勾配がある)、入母屋(切妻と寄棟の組み合わせ)など様々な形があります。

屋根形状は、周辺の環境や地域性などによる影響を受ける事もあり、形状によって風雨による劣化の傾向も異なります。

ここでは主に、勾配屋根についてご説明します。

勾配屋根には、粘土瓦、セメント瓦、金属、アスファルトシングル、化粧スレートなどの多種多様な屋根葺き材があり、粘土瓦の中にも和瓦、フランス瓦、スパニッシュ瓦などの種類があります。

屋根葺き材は、それぞれを継ぎ目で重ね合わせて屋根全体を覆っていますが、継ぎ目は接着されておらず、重ねているだけで隙間がある場合がほとんどです。

つまり勾配屋根では、屋根葺き材の防水性能のほかに、勾配によって水の流れを確保する必要があるのです。

したがって、使用する屋根材によって、最低限必要な屋根勾配が異なります。屋根材のもつ水はけ能力がそれぞれ異なるためです。

通常、屋根のリフォームでは、屋根形状まで変更する事はないので、リフォームで使用する屋根材の選択の際には、注意する必要があります。

尚、屋根勾配は「寸」を用いて表示します。

3:10の勾配を3寸勾配、4:10の勾配なら4寸勾配といいます。
主な屋根材の必要勾配の目安は下記の通りです。

  • 瓦…4寸以上
  • 化粧スレート(コロニアル)…3寸以上
  • ガルバリウム鋼板…2.5寸以上
  • 瓦棒(カラー鉄板)…1.5寸以上

したがって、現在の屋根が瓦棒葺きであったら、瓦や化粧スレートで葺き替える事はできません。

ただし、実際に必要な勾配は、屋根の長さや積雪地域によっても異なりますので、屋根材メーカーなどのカタログで確認する必要があります。

また、屋根で雨漏りが発生しやすい場所としては、屋根材の重ね部分、屋根同士の取り合い部分、屋根と他の部位との取り合い部分などがあり、屋根を点検する際には雨漏りしやすい部分がどこなのかを、あらかじめ把握しておく事が重要です。

そして屋根勾配が急勾配なほど、水はけ能力が高いので、雨漏りリスクが低くなります。

屋根に生じる不具合

最上階の屋根は通常見る事ができないので、不具合に気付きにくく、雨漏りが発生して初めて修理が必要だと気付く事が多いと思います。

しかし、実際に雨漏りしてからでは、すでに建物の傷みが激しくなっている事が多く、酷い場合には、柱や梁などの構造上主要な部分まで腐食してしまっているケースもあるので、特に長い間人が住んでいない空き家などでは注意が必要です。

定期的な点検を心がけ、不具合を見つけたら早めに修理する事が建物を長持ちさせる秘訣です。

また屋根材の種類によって、発生する不具合も異なるので、ここでは屋根材の種類ごとに発生しやすい不具合をご紹介しておきたいと思います。

1.瓦屋根の不具合

  • 瓦のひび割れやずれ、剥がれ
  • 棟瓦の波打ち、崩れ
  • 漆喰のはがれ、欠落
  • コケの発生

2.化粧スレートの場合

  • スレート瓦のひび割れやずれ、反り
  • 瓦の欠損
  • 変退色(色褪せ)
  • コケや藻の発生
  • 棟板金の外れ、浮き
  • 板金部分のサビ

3.板金屋根(金属屋根)の場合

  • 屋根材の浮きやはがれ
  • 赤サビ、腐食の発生
  • 変退色
  • 屋根形状の変形
  • シーリングの劣化やはがれ

上記が代表的な屋根材ごとの、劣化や不具合の事例になります。

長期間空き家になっている家などでは、これらの不具合以外にも、雨漏りにつながるような原因を併発している事があります。

しかし、素人が屋根に登って調査するのは、転落事故などを起こす危険があるので、双眼鏡やオペラグラス、デジタルカメラのズーム機能などを上手に使って点検する様にしましょう。

ホームインスペクターなどの建物調査の専門家に調査を依頼して、メンテナンスのアドバイスを受けるのも良いと思います。

屋根材選びで注意するポイント

屋根は重要なパーツなので、葺き替えを行う際の素材選びでは、耐久性やメンテナンス性を十分に検討したいものです。

また前述した様に、リフォームでは既存屋根の屋根勾配に適したものを選ぶ必要があります。屋根材を選ぶポイントは、大きくは次の6つになります。

  1. 耐久性
  2. 防火性
  3. 耐震性(重さ)
  4. メンテナンス性
  5. デザイン
  6. コスト

屋根材の重さ(屋根面積1坪あたりの重量)については、下に代表的なものを挙げておくので参考にしてください。

  • 和瓦…160㎏/坪
  • セメント瓦…140㎏/坪
  • 化粧スレート(コロニアル)…68㎏/坪
  • アスファルトシングル…30㎏/坪
  • カラー鉄板…20㎏/坪
  • ガルバリウム鋼板…20㎏/坪

屋根材にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
全て100点満点の屋根材はありません。

何を重視するのかによっても選択肢が変わるので、よく検討する様にしてください。
次項では主な屋根材の特徴についてご紹介します。

代表的な3種類の屋根材の特徴

さて、屋根の葺き替えを検討しているのなら、どの屋根材を選べばよいのでしょうか。瓦、化粧スレート、金属屋根の3つに分けて、それぞれの特徴をご説明したいと思います。

1.粘土瓦・セメント瓦

粘土を高温で焼いたのが粘土瓦で、セメントと砂などを練ったモルタルをプレス・脱水・成形して、塗料で着色したものがセメント瓦です。

また粘土瓦には、粘土そのものの色の素焼き瓦、炭のように色付けしたいぶし瓦、ガラス質の色付けをした陶器瓦(釉薬瓦)があり、セメント瓦の中にも洋瓦型や平型、日本瓦型など様々な形やデザインがあります。

種類が多く、重いのが特徴です。

その重さゆえに、瓦から瓦への葺き替えは問題ないのですが、他の屋根材から瓦に葺き替える場合には、屋根の重さが増して、建物への負担が増えるので、容易には葺き替える事ができませんので、注意が必要です。

また近年では、瓦職人が減っているため、新築住宅で採用されるケースは少なくなりました。

耐久性は高く、衝撃を受けると割れてしまう事を除けば、釉薬を使った陶器瓦の寿命は半永久的、セメント瓦でも寿命は30年以上といわれています。

セメント瓦は、紫外線や風雨、気温差等で塗膜の劣化が進むとセメント部分がむき出しになってしまうので、劣化も早くなります。

15年~20年に1回の頻度で塗り替えが必要です。

一方、粘土瓦は、瓦自体にはほとんどメンテナンスの必要はありませんが、漆喰の定期的な塗り替えや、棟の積み直し、板金部分の点検などが必要です。
断熱性や防火性にも優れていますが、価格が高いのがデメリットです。

現在は施工する業者も少なくなり、施工には高い技術を要するため、施工費や修理費用も高くなる傾向があります。

また、緩い勾配の屋根には施工できないので、他の屋根材から葺き替える場合には注意が必要です。

2.化粧スレート

スレートとは薄くて平べったい屋根材の事をいいます。

もとは天然石を薄く加工したものでしたが、現在はセメントと人工繊維や天然繊維を薄く加工して着色したものが主流です。

カラーベストコロニアルなどと呼ばれています。

軽量で比較的安価、施工もしやすいので、対応できる職人も多く、現在最も多くの新築住宅で採用されています。耐震リフォームで、瓦屋根からの葺き替え工事でもたびたび採用されています。

一方、メンテナンスコストは高くなります。

化粧スレートの寿命は20年から30年程度といわれ、薄いので台風や突風などであおられて飛んでしまったり、飛来物があたって割れてしまう事などもあります。

また、塗膜によって屋根材としての機能を保っているので、10年~15年に1回の塗装は欠かせません。その他、棟板金など板金部分の点検や交換も必要になります。

30年以上経過していたら、葺き替えの検討が必要です。

現在の屋根材の主流ですが、初期コストは抑えられても、定期的なメンテナンスを怠るとトータルコストは高くなってしまうので、注意が必要です。

3.金属屋根

一口に金属屋根といってもアルミや銅板、昔からあるカラー鉄板(トタン)など様々です。なかでも、近年多くの住宅で使われているのがガルバリウム鋼板です。

ガルバリウム鋼板とは、アルミニウムと亜鉛とシリコンで鉄板を両面から加工した鋼板で、アルミニウムの耐食性と亜鉛の防蝕機能で錆びを防ぎます。

寿命は30年~50年といわれ、基本的にメンテナンスの必要がないとされています。そしてもうひとつのメリットは、とにかく軽いという事。重量は瓦の約1/8、軽いとされる化粧スレートの1/3以下で、屋根材の中では最も軽量です。

一方、軽量で加工はしやすいのですが、施工には技術が必要なので、経験豊富な板金職人に依頼する事が大切です。

また、夏場には屋根直下が高温になりやすい事と雨音が響きやすい事がデメリットになるので、建築本体の工夫でカバーする必要があります。

コストは瓦よりも安く、化粧スレートよりも高いといったところですが、人によっては、昔のトタン屋根の様で安っぽいと感じる事もある様です。

他には、金属屋根と瓦の長所を併せ持つ、金属やFRPで作られた軽量で耐久性の高い、重厚感、高級感のある瓦なども商品化されています。

屋根材を選ぶ上では、メンテナンス性も重要な要素になります。

また、つい耐久性などの機能面やコストを優先して屋根材を選びがちですが、屋根材によって建物の外観も大きく変わってしまうので、デザイン性も軽視できません。

近年では屋根材の種類や色も豊富になり、選択の幅もずいぶん増えているので、自分の好みに合う屋根材を探して欲しいと思います。

屋根のリフォームの方法

屋根をリフォームする方法には、主に部分的な補修と塗り替え、葺き替えがあります。

部分的な補修では、破損瓦の差し替えや、瓦のずれ直し、漆喰の詰め直し、棟板金の交換、シーリングの打ち替えなどの方法がよく行われています。

比較的、劣化度が低い場合や、部分的に不具合が生じている場合などの応急処置として行われる方法です。

また、セメント瓦や化粧スレート屋根、トタン屋根の場合には、塗り替える事も可能です。これらの屋根材は、塗膜によって保護されているので、塗膜が劣化すると防水性が失われ、屋根の寿命を縮めてしまいます。

計画的(一般的には10年~15年が目安)に塗り替えを行う事で、屋根材の寿命を延ばす事が可能になります。

しかし必要なメンテナンスを怠って、屋根の劣化が進みすぎてしまうと、塗装工事では対応できず、葺き替えが必要になってしまう事もあります。

また近年では、建物の耐震性向上のために、屋根の軽量化を目的に葺き替えを行うケースも増えている様です。

葺き替えには、既存の屋根材の上に新規の屋根材を重ね張りするカバー工法(重ね葺き、被せ張りなどともいわれます)と、既存の屋根材を撤去して新しい屋根材を葺く方法があります。

一般的には、費用は「塗り替え」、「カバー工法」、「葺き替え」の順に高くなります。

また、屋根が陶器瓦などの場合には、瓦自体の寿命は半永久的ともいえるので、一度瓦を撤去して、野地板の補強や下葺き材(アスファルトルーフィング)を張り直し、元の瓦を使って葺き直す事もできます。

屋根リフォームでは、既存の屋根材の種類や劣化度合い、リフォームの目的、予算などによって、最適な改修方法も異なるので、十分検討した上で、計画を立てる必要があります。

カバー工法のメリット、デメリット

既存屋根が瓦の場合には、カバー工法による葺き替えはできませんが、化粧スレート屋根や金属屋根の場合にはカバー工法が良く行われています。

特に、既存の屋根が初期の化粧スレートの場合には、リフォーム会社からカバー工法による葺き替えをすすめられる事が多いと思います。

化粧スレート屋根は、それまで日本の住宅の主流だった瓦に代わって、30年程前から急速に普及しました。

軽量で安価、施工が容易で、かつ洋風の外観にも合うので、洋風住宅の人気と共にたちまち多くの住宅会社が積極的に採用する様になったためです。

しかし初期の化粧スレート屋根は、色あせや塗膜の劣化による美観の低下が著しく、約10年ごとの塗装工事が必要で、30年近く経過したものは再塗装が難しくなり、葺き替えが必要になるケースが多いのです。

そして当時の化粧スレートには、人体への有害物質であるアスベストを含んでいて、その撤去や処分方法が法律で規制されているので、工事費が割高になります。(現在の化粧スレートには、アスベストは含まれていません)

この様な中で生まれたのが、カバー工法による改修方法です。

カバー工法の最大のメリットは、既存の屋根を解体しなくてよいので、廃材が出ない事、それにより工期も短く、費用を抑える事ができる事です。

他にも既存屋根材撤去時の近隣へのアスベストの飛散防止、工事中の雨養生の面などでもメリットがあります。

また屋根を2重にするので、断熱性や遮音性が向上するのもメリットといえるでしょう。

しかし、既存の化粧スレートの上に化粧スレートを重ね葺きすると、メーカー保証が受けられなくなるので注意が必要です。

化粧スレートは、下地材の段差が3mm以上あると割れやすくなるためです。

カバー工法を行う際には、金属屋根やアスファルトシングルなどのカバー工法に適した屋根材を選ぶ必要があります。

アスファルトシングルは、アメリカの住宅の80%以上で使われているといわれる屋根材で、アスファルトを主な原料としています。

表面に天然石を付着させたものもあり、耐久性・耐候性にもすぐれています。

一方、カバー工法にはデメリットもあります。

1.屋根が重くなる

カバー工法に適した屋根材は、金属屋根やアスファルトシングルなどの軽量な屋根材ですが、現状よりも屋根が重くなってしまう事に変わりありません。

耐震性の面では、多少不利になってしまうのは否めません。

2.屋根の湿気の滞留

古いスレート屋根には、多少の水分を含んでいる可能性があります。また、スレート屋根の重ね部分には、雨水が滞留している事もあります。

新しい屋根材を被せてそれらを覆ってしまえば、湿気がこもり、最悪の場合は屋根の下地材(野地板)まで腐食してしまう事にもなりかねません。

3.雨漏りの原因特定が難しくなる

屋根が二重になるので雨漏り対策としては有効ですが、反面では万一雨漏りが発生してしまった時には、その原因特定が難しくなる傾向があります。

4.心理的な嫌悪感

表面が綺麗になっても、すぐ下には古くなった以前の屋根がある事に嫌悪感を持つ方もいると思います。

ましてや、人体に有害なアスベストを含んだものを家の一部に残しておく事が気なる方は多いかもしれません。

将来家を解体する事になった時には、産業廃棄物処理費が余分にかかる事を理解しておく必要があります。

以上の様に、カバー工法もメリットばかりではありません。

また、既存屋根の傷みがひどく、下地として適さなくなってしまった場合には、古い屋根材を撤去して葺き替えるしかありません。

現状を良く確認して、リフォーム会社と相談しながら最も希望に合った施工方法を選択する様にしてください。

まとめ

今回は屋根の修理やリフォームのポイントについてご紹介させていただきました。屋根のリフォームでは、現在の状態や劣化具合、以前のリフォームからの経過時間、将来の計画などを考慮して、最適な工法や屋根材を選ぶ必要があります。

屋根は家の中でも最も過酷な条件下にあるので、特にこの点が大事です。

また、屋根のリフォームには足場を組む必要があるため、外壁塗装や外壁の張り替えと併せて行う事が多くなります。
外壁材となるべく修繕の周期が同じになる様にすれば、長期的なコスト削減にもつながります。

そして、定期的な点検やメンテナンスが難しい場合には、メンテナンス周期が長く、耐久性の高い素材や工法を選ぶなど、それぞれの事情にあった判断をして欲しいと思います。

最後に業者の選び方です。

屋根のリフォームでは、総合リフォーム会社に依頼するよりも瓦屋さんや、板金屋さんなどの専門工事業者へ依頼した方が安いのは以前ご紹介した通りです。

しかし、瓦屋さんに依頼すると瓦屋根、板金屋さんだと金属屋根など、屋根材選びの選択肢がなくなってしまう可能性もあります。

様々な屋根材を比較検討して、ベストな屋根材を提案してもらいたいのであれば、リフォーム会社に相談するのが良いでしょう。

この様に、目的によってリフォームの依頼先を上手に使い分ける事も必要です。予算やリフォームの目的に応じて、最適なリフォーム会社を選んでください。

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益子公博

益子公博

住宅会社で20年以上リフォーム事業の責任者経験があり、リフォーム業界、住宅建築業界の裏事情やリフォーム現場には精通。ホームインスペクション(住宅診断)の専門会社を経営、住宅診断、欠陥住宅相談、リフォーム会社への社員研修など実施しています。
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