専業主婦など、扶養家族が空き家不動産を売却した時の税金や社会保険への影響は?

会社員や公務員が、専業主婦(夫)やパート主婦(夫)の配偶者を扶養にすると、税金、医療保険、年金、給料について経済的な恩恵を受けることができます。

しかし、扶養になっている配偶者が両親などから空き家不動産を相続し、その空き地と土地を売却することにより一時的な利益が一定額以上生じると、扶養が外れてしまい経済的恩恵を失うことに繋がります

空き家不動産を売却する場合、売却益という「プラス要素」だけでなく、扶養の恩恵を失う可能性という「マイナス要素」も知っておかないと、家計に与える影響を正しく予測できません。

今回は扶養となっている配偶者や家族が空き家不動産を売却した場合に、起こりうる経済的なプラス面とマイナス面についてをじっくり見極めてみましょう。




扶養の恩恵が受けられるのは「所得税」「医療保険」「年金」「給料の扶養手当」の4項目

扶養とは、家族の中の経済力のある人が、経済力のない家族を養うことです。
「経済力がある」とはいえ、扶養する家族がいる場合は経済力が落ちるため「税金や保険料を下げてあげますよ」という処置をとるのが扶養制度の狙いです。

こうした扶養の仕組みは、

  1. 税金
  2. 医療保険
  3. 年金
  4. 給与

の4つの面に関与する形となっています。

医療保険と年金は、双方あわせて「社会保険」と呼ばれます。

上記4つにおいては、それぞれの扶養ルールが微妙に異なるため、扶養の理解を複雑にしている原因となっています。
ただし「扶養の原則」はとても単純明快です。

扶養の原則は次の4つです。

  1. 「所得税の扶養」は税額を減らす「配偶者(特別)控除」という恩恵がある
  2. 「医療保険の扶養」は「保険料を支払わなくても保険が使える」という恩恵がある
  3. 「年金の扶養」は「年金保険料を支払わなくても将来年金がもらえる」という恩恵がある
  4. 「給与」には「扶養手当」という恩恵がある

扶養の具体的な経済的恩恵
税金 配偶者(特別)控除
保険 保険料支払いなしで保険が使える
年金 年金保険料支払いなしで年金がもらえる
給与 扶養手当がもらえる

そして、それまで扶養の対象だった配偶者や家族が空き地不動産の売却で一時的に利益を得ると、それまでは「経済力がない家族」だった扶養内家族が一時的に大きな経済力を得ることになるので、国から「経済力を持つこの人は扶養で恩恵を与える必要がないのでは?」とみなされてしまう可能性がでてきます。

もちろん、不動産を売却しても利益がでなかったり、一定金額以下の利益でとどまった場合は引き続き扶養を受けることが可能ですので、扶養家族による空き家売却には2つのパターンが存在するということになるわけです。

パターンA:売却益を得ると扶養が外れて「扶養の恩恵」を失うことになる

パターンB:売却益を得ても扶養が外れず「扶養の恩恵」を受け続けられることもある

つまり専業主婦(夫)のような扶養家族名義の空き家不動産売却は、1.税金 2.保険 3.年金 4.給与のそれぞれのテーマで、A「負担が増加する条件(扶養が外れるパターン等)」とB「扶養による恩恵が維持できるパターン」の条件を調査し、それぞれへの対策を練っていけばよいということになります。

税金 保険 年金 給与
負担が増加する
条件
扶養の恩恵維持の条件

では、それぞれの条件と対策を調べて「」を埋めていくことにしましょう。

1.扶養と税金(所得税)の関係

それではまず、扶養と税金(所得税)の関係を見ていきましょう。

ここでは話をシンプルにするために、夫婦2人の世帯で、働いて生計を支えているほうをAさんとし、扶養されている専業主婦(夫)または少額収入のパートをしている配偶者をBさんとします。

Aさんの立場は、会社員または公務員または自営業者と仮定します。

所得税の扶養の仕組み

所得税の扶養の仕組みは、Aさんが会社員でも公務員でも自営業者でも同じです。
具体的な扶養家族のメリットは「配偶者(特別)控除」です。

配偶者(特別)控除を使って税金を下げる

所得税の扶養制度では、配偶者(特別)控除によってAさんが支払う税金は減額されます。
Aさんが支払う所得税を減額する方法は具体的には、次の計算式によります。

・所得税=(Aさんの所得-配偶者控除または配偶者特別控除)×税率

Aさんの所得から「配偶者控除または配偶者特別控除」という金額を差し引いた額に税率をかけていることから、「配偶者控除または配偶者特別控除」には所得税を減額する効果があることが分かります。

つまり配偶者Bさんを扶養しているAさんの所得税が減額されるのは、配偶者控除または配偶者特別控除を受けられるからです。

配偶者控除と配偶者特別控除は、「特別」という言葉の違いはありますが、内容としては同じであり、所得額によって適用範囲がことなります。それで税務署でも両方を合わせて「配偶者(特別)控除」という表現を使っています。この記事でも、配偶者控除と配偶者特別控除の両方を表現するときは「配偶者(特別)控除」を使います。

配偶者特別控除のみの説明には()を外した「配偶者特別控除」を用います。

「収入」「所得」「給与所得控除」「基礎控除」の解説

ここで「Aさんの所得」や「Bさんの所得」といったように「所得」という言葉を使っていることに注意してください。「収入」と「所得」の関係は、次の計算式で表せます。

所得=収入-必要経費

仕事をして会社から給料をもらった場合、会社が支払った金額が会社員の「収入」になります。しかし収入を得るためには、さまざまな「必要経費」がかかります。
そこで収入から必要経費を差し引いて「所得」を算出し、その所得に税率をかけて所得税を出しています。

会社員Aさんやパート扶養配偶者Bさんにも必要経費が認められていますが、会社員やパートは自分で税務署に「これが必要経費です」と申告することはできません。

法律で「会社員やパートなど、事業主に雇われている労働者の必要経費は○円」と決まっているからです。
労働者の必要経費のことを「給与所得控除」といいます。

さらに働き方に関わらず、納税者全員に適用される「基礎控除」があります。
従って先ほど示した収入と所得の関係の計算式は、会社員やパートでは次のようになります。

・所得=収入(給料)-給与所得控除(必要経費その1)-基礎控除(必要経費その2)

さらに配偶者Bさんを扶養している会社員Aさんの所得税の計算式はこのようになります。

所得税=(収入-給与所得控除-基礎控除-配偶者(特別)控除)×税率

控除が3つも並びました。「控除が増えると税金が減る」という構図になっていますので、控除の数や額が増えるほど、家計はより助かるというのが基本的な仕組みです。

税控除の種類 内容
給与所得控除 給与所得者に一律に認められてる税控除
基礎控除 納税者に一律に認められている税控除
配偶者(特別)控除 配偶者を扶養している人に認めらる税控除

空き家不動産を売却すると配偶者控除が外れる可能性がある

家計が助かるのは、配偶者Bさんが会社員Aさんの扶養に入っているからです。
配偶者Bさんが会社員Aさんの扶養になることができるのは、配偶者Bの収入が一定額以下に抑えられていたり完全に0円だったりする場合です。

すなわち配偶者Bさんが自分名義で相続した空き家と土地を売却して、一時的に多くのおカネを手にしてしまったら、BさんはAさんの扶養ではいられなくなり、Aさんは扶養の恩恵を得られなくなる可能性があります。
つまりAさんの所得税は減額されません。
Aさんは「配偶者(特別)控除」を使えなくなるからです。

税務署から「空き家不動産の売却で儲けたのだから、所得税を減額する必要はない」と言われるわけです。

それでは、実際にBさんの空き家不動産の売却益がいくらになったら扶養が外れるのかを、詳しく解説します。

所得税の配偶者(特別)控除が外れる条件

配偶者控除と配偶者特別控除は、「特別」という言葉の違いはありますが、内容としては基本的に同じですが、対象となる年収額が異なります。

扶養配偶者Bさんの所得額が38万円以下の場合のみ「配偶者控除」と呼びます。
Bさんの所得額が38万円超から123万円未満までは「配偶者特別控除」といいます。

給与所得控除65万円、基礎控除38万円

まずは、Bさんが「パートはしている」が「空き家は売却していない」ケースを考えてみましょう。その方が「Bさんの所得額」と「Aさんの給与額」と「Aさんの所得税の配偶者(特別)控除」それぞれの関係が見えやすいからです。

Bさんが「空き家を売却したケース」は後ほど考えることにします。

先の計算式のとおり、所得とは収入から必要経費を差し引いたものです。
税務署はパートの必要経費を65万円と定めています。
この65万円のことを「給与所得控除」といいます。

またパートを含む納税者全員には「基礎控除」が適用されその額は38万円です。

所得=収入(給料)-給与所得控除(65万円)-基礎控除(38万円

Bさんのパートの年間収入(会社が支払う給料の額)が103万円以下ですと、そこから65万円の給与所得控除と38万円の基礎控除を差し引くので、Bさんの所得はゼロ円またはマイナスになります。

Bさんの所得がゼロ円ですので、下の表を見ると、会社員Aさんの所得税の計算では最も高い「配偶者控除」の38万円が適用されますので、所得税圧縮には非常に効果的と言えます。

また、配偶者(特別)控除の額はAさんの年収そのもので多段階に変化するように2018年より細かく改正されました。新税制では配偶者Bさんの所得が123万円を超えてしまうと、全く控除がなくなってしまう事に気づくでしょう(旧制度では73万円でした)。

更に、配偶者控除が一律38万円ではなく、給与所得者であるAさんの年収によって38万円、26万円、13万円と3段階に格差がつけられることとなった上に、年収1000万円以上の方は、一切配偶者(特別)控除を受けることができなくなってしまいました。

配偶者の
合計所得
配偶者
の給与等の収入金額
給与所得者の合計所得金額
(給与所得だけの場合の給与所得者の給与等の収入金額)
900万円以下(1,120万円以下) 900万円超950万円以下(1,120万円超
1,170万円以下)
950万円超1,000万円以下(1,170万円超1,220万円以下)
配偶者控除 38万円以下 103万円以下 38万円 26万円 13万円
配偶者特別高所 38万円超
85万円以下
103万円超
150万円以下
36万円 26万円 13万円
85万円超
90万円以下
150万円超
155万円以下
36万円 26万円 12万円
90万円超
95万円以下
155万円超
160万円以下
31万円 21万円 11万円
95万円超
100万円以下
160万円超
1,667,999 円以下
26万円 18万円 9万円
100万円超
105万円以下
1,667,999 円超
1,751,999 円以下
21万円 14万円 7万円
105万円超
110万円以下
1,751,999 円超
1,831,999 円以下
16万円 11万円 6万円
110万円超
115万円以下
1,831,999 円超
1,903,999 円以下
11万円 8万円 4万円
115万円超
120万円以下
1,903,999 円超
1,971,999 円以下
6万円 4万円 2万円
120万円超
123万円以下
1,971,999 円超
2,015,999 円以下
3万円 2万円 1万円
控除なし 123万円超 2,015,999 円超 0円 0円 0円
尚、給与所得者であるAさん自身の所得が1,000万円以上の場合、配偶者(特別)控除は使えなくなります。
2018年より配偶者控除の年収上限額は103万円から150万円に、配偶者特別控除の年収上限額は141万円から201万円に変更となりました。

Bさんの所得はパート所得と空き家譲渡所得を足して計算する

ここまでの基本を押さえたうえで、「Bさんが空き家不動産を売却して売却所得(譲渡所得)を得たとき」のケースを考えてみましょう。

Bさんがパートをしていた場合、パートの所得と空き家不動産の譲渡所得の合計が38万円を超えたとき、Aさんには配偶者控除が適用されなくなり、更に123万円以上になると、配偶者特別控除も適用できなくなります。
Bさんが無職の場合は、空き家不動産の譲渡所得だけで123万円を超えれば、Aさんは配偶者(特別)控除が当然使えなくなることになります。

※2018年以降は所得合計が76万円でなく123万円で控除適用が一切なくなる

1つ注意が必要なのは、ここの計算で使うのは「Bさんの空き家などの売却収入」ではなく「Bさんの空き家などの売却所得(譲渡所得)」であることです。

譲渡所得は次のように計算します。

譲渡所得=売却収入-取得費-売却費用

つまりBさんが空き家などを売ってお金を得たとしても、購入したときの金額(取得費)や売るときに不動産会社に支払った仲介手数料など(売却費用)が高額になり、譲渡所得がマイナスになれば、空き家などの譲渡所得はゼロ円として計算されます。

相続した空き家不動産の売却 = 譲渡所得税で後悔しないための6つの知識
亡くなった親から相続した空き家と土地を売却して収入を得た場合、その所得に対してかかる税金を「譲渡所得税」といいます。 どのよう...

出典

国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁
国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁
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Bさんがパートで働く場合…給与所得控除の詳しい説明

ちなみに、先ほど「パートで働くBさんは、パートの収入額から必要経費として65万円の給与所得控除が差し引かれてパート所得額を算出する」と説明しました。

このことを詳しく説明すると、給与所得控除の金額は以下の計算方法によって算出します。
当然、パートでより高額の給料を得ることは、税金圧縮の効果が薄まっていくことを意味しています。

年間収入金額 給与所得控除額
1,625,000円まで 650,000円
1,625,001円から1,800,000円まで 年収×40%
1,800,001円から3,600,000円まで 年収×30%+180,000円
3,600,001円から6,600,000円まで 年収×20%+540,000円
6,600,001円から10,000,000円まで 年収×10%+1,200,000円
10,000,001円以上 2,200,000円

※2017年9月現在

2.扶養と医療保険の関係

社会保険のうち、医療保険のルールと年金のルールは非常に似ているのですが、ところどころ違っています。そのため、医療保険と年金に分けて、それぞれの扶養との関係を見ていきます。

医療保険の扶養の仕組み

医療保険の扶養の仕組みは、Aさんが「会社員(公務員含む)」か「自営業者」かで、内容が大きく異なってきます。
それは、職種によって加入する医療保険の運営主体が異なるからです。


医療保険の主な運営母体

  • 自営業者:国民健康保険
  • 会社員:健康保険組合または協会けんぽ
  • 公務員:共済組合

Aさんが自営業者の場合:扶養概念がない国民健康保険では、月々の保険料が増額される可能性がある

Aさんが自営業者のケースを見てみましょう。

自営業者Aさんが配偶者Bさんを扶養して、所得税の配偶者(特別)控除を受けていたとしても、医療保険では「扶養の恩恵」を受けることはできません。

ここでは、Bさんが空き家を売却してもしなくても何も変わらないのです。
それは、自営業者が加入する医療保険が国民健康保険だからです。
国民健康保険にはそもそも扶養の概念がありません。

つまりAさんが自営業者の場合、配偶者Bさんも独自に国民健康保険に加入しなければならず、AさんもBさんもそれぞれ毎月保険料を支払う必要があります。

ただし、配偶者Bさんが自分名義の空き家不動産を売って多額の所得を得てしまうと、Bさんが加入している国民健康保険の月々の保険料が跳ね上がります。

Aさんが自営業者の場合、Bさんを実質的に扶養している状態だとしても、扶養制度の恩恵は受けられないのにも関わらず、Bさんの所得増によるBさんの保険料の増額というデメリットだけを受ける結果となります。

Aさんが会社員(公務員)の場合:配偶者Bさんは国保に入り保険料を負担しなければならない可能性がある

続いてAさんが会社員または公務員のときの、医療保険について見てみましょう。

Aさんが大企業の社員ならば、Aさんが加入するのは「健康保険組合」が運営する医療保険です。また、Aさんが中小企業の社員ならば「協会けんぽ」が、Aさんが公務員ならば「共済組合」が、それぞれ運営する医療保険に加入します。

健康保険組合、協会けんぽ、共済組合、この3つが運営する医療保険では、Aさんの扶養配偶者であるBさんは、自動的に医療保険に加入します。

「Bさんが自動的に医療保険に加入する」とは、Bさんは毎月の保険料を支払わず、「実質無料」で医療保険を使えるという意味です。

医療保険の扶養が外れる条件

Aさんが会社員または公務員の場合、扶養配偶者の収入がどれくらい増えれば医療保険の扶養から外れるのか見てみましょう。

つまり健康保険組合、協会けんぽ、共済組合が運営する医療保険のケースを見てみます。

配偶者Bさんの「収入130万円」が境界線

これら3つの医療保険において、配偶者を扶養できる条件は、配偶者Bさんの収入が130万円未満であることです(広く一般に「130万円の壁」などと呼ばれます)。

※ここでは「所得」ではなくBさんの「収入(=年収)」で判断します。

Bさんがパート勤めをしていて、勤め先の会社から給料が年間130万円以上出てしまったら、BさんはAさんの医療保険の扶養から外れます。
そのうなるとBさんは自分で国民健康保険に加入しなければなりません。
当然、今まで実質無料だった保険制度に対し、Bさんには月々の保険料支払い義務が発生することになります。

一時的な空き家不動産の売却収入による扶養可否の判断は、保険運営団体次第で結論が異なる

そこで問題になるのが、配偶者Bさんに一時的な空き家不動産の売却収入が出たときです。

Bさんのパート収入とBさんの空き家不動産の売却収入を合算して、Bさんの収入が130万円を超えているかどうか判定する――わけではないのです。

Bさんの空き家不動産の売却収入を扶養可否の判定材料として用いるかどうかは、「医療保険を運営する団体によって異なる」のです。

例えば協会けんぽは、Bさんの空き家などの売却収入は、「一時的なもの」とみなして、扶養の可否の判断材料にしません。
それはBさんの空き家などの売却収入は一時的なものだから、それをもって扶養をはずしてしまうのは酷すぎる、と判断するからです。

このように「一時的な不動産収入をどうするか」のルールは医療保険の運営団体によって異なるので、配偶者が空き家などを売却したら、Aさんは自分の勤め先の総務部に確認したほうが無難です。

Bさんの空き家不動産売却の結果…国民健康保険の加入が必要となった場合の保険料負担は月5千~7万円

それではこの章の最後に、配偶者Bさんが安定的な収入を得ることになり、会社員または公務員Aの医療保険の扶養から外れた場合のことを考えてみます。

このときBさんは独自に国民健康保険に加入しなければなりません。
国民健康保険の保険料は収入額や世帯数によって異なり、月額では最低5千円代から最高約7万円と、かなり大きな幅があります。

会社員や公務員のAさんにおける「医療保険における扶養の恩恵」とは、配偶者Bさんがこのような保険料を全く支払わなくてよいということなのです。
この「医療保険の扶養」のルールは、元々は年金のルールから来ています。
医療保険と年金は密接にリンクしているのです。

それでは次に扶養が年金にもたらす影響を見てみましょう。

出典

3.扶養と年金の関係

医療保険の仕組みを見た後なので、年金の仕組みは理解しやすいと思います。

年金の扶養の仕組み

ここでもAさんが「自営業者の場合」と「会社員または公務員の場合」で異なるので、別々に見ていきます。

Aさんが自営業者の場合:国民年金にも扶養の概念がない

Aさんが自営業者の場合、Aさんは国民年金に加入するのですが、国民年金にも「扶養」の概念は元々ありません。

配偶者Bさんに収入がなければ、自営業者Aさんは所得税においてBさんを扶養にすることで配偶者(特別)控除という恩恵を受けることができます。

しかし国民年金の制度には扶養の概念がないばかりか、そもそもAさんが自営業者の場合、Bさんも独自に国民年金に加入しなければなりません。
つまりBさんが空き家を売っても売らなくても、国民年金に関しては変化がありません

Aさんが会社員(公務員)の場合:厚生年金の「扶養は恩恵」は大きい

会社員の厚生年金と公務員の共済年金は、2015年に「厚生年金」に一元化されました。

その厚生年金は2階建てになっています。
1階部分は国民年金(老齢基礎年金)で、これは自営業者が加入する国民年金と同じです。
2階部分は厚生年金(老齢厚生年金)で、これは自営業者は加入できず、会社員と公務員だけが加入できます。

ここで混乱しないでいただきたいのは、「1階と2階を合わせたものを厚生年金と呼ぶ」こともありますし、「2階部分だけを厚生年金と呼ぶ」こともあるということです。

用語を整理するとこうなります。

会社員と公務員の年金

2階部分 厚生年金部分(老齢厚生年金) 1階部分と2階部分を合わせて「厚生年金」と呼ぶこともあります
1階部分 国民年金部分(老齢基礎年金)
自営業者の年金
1階部分のみ 国民年金(老齢基礎年金)のみ

厚生年金における扶養はとても手厚く、会社員または公務員Aさんに扶養されている配偶者Bは、毎月の年金保険料を支払わなくてよいのです。

Bさんは年金保険料を支払わなくても、年金受給年齢に達したら、国民年金をもらえるのです。つまり「無料で国民年金がもらえる」ということです。

Bさんの空き家不動産売却収入は判断材料にならない

ただし、配偶者Bさんに一定金額以上の収入が発生すると、BさんはAさんの扶養から外れることになり、独自に国民年金に加入して毎月保険料を支払わなければなりません。

では、Bさんが空き家などを売って収入が大きくなってしまうと、BさんがAさんの扶養でなくなるのかというと、そうではありません。

厚生年金の場合は、扶養配偶者Bさんの一時的な空き家などの売却による収入は、扶養の対象となるかどうかの判定に使われません。

BさんをAさんの扶養にできるかどうかを判断するときのBさんの収入の額に、一時的な不動産売却の収入は足さないのです。

ただしBさんが本格的に商売として不動産売却を行い恒常的に収入を得ていれば、その収入が多くなると扶養の対象から外れ、Bさんは自分で国民年金に加入しなければなりません。

出典

国民年金保険料|日本年金機構

年金の扶養が外れる条件

配偶者Bさんが会社員または公務員Aさんの厚生年金の扶養から外れる条件は、Bさんが年間収入130万円以上を得たときです。

しつこいようですが「所得が」ではなく「収入が」です。

国民年金保険料は月16,490円

ただし、Bさんが相続した空き家などを売却した収入は一時的な収入とみなされ、Bさんの年間収入には加算されないことは先にご説明いたしました。

130万円の収入があったかどうかは、パート収入などの恒常的な収入のみで判断されます。
恒常的な収入が発生したBさんがAさんの厚生年金の扶養から外れてしまうと、その後はBさん自身で国民年金に加入しなければなりません。

国民年金保険料は2017年度は月額16,490円です。

つまりAさんがBさんを扶養にすることの恩恵とは、この月額16,490円の保険料を支払わなくてもBさんが将来国民年金をもらえること、といえるでしょう

4.扶養と給料(扶養手当)の関係

公務員や会社員の給料には、住宅手当や通勤手当など様々な手当があります。
給料の手当の1つである扶養手当は、扶養している家族の人数によって金額が変わることがあります(会社規約等により様々)。

ここでも説明を分かりやすくするために、配偶者を対象とした扶養手当のみ(子供などへの扶養手当は除く)を見てみます。

公務員は法律に規定、企業は原則ルールなし

国家公務員の給料は「一般職の職員の給与に関する法律」によって定められています。
地方公務員もほぼこの法律に準じています。

公務員の扶養手当にも「130万円の壁」

公務員の給料の中には、扶養手当があります。
配偶者や子供、親などを扶養している公務員にだけに支給されるお金です。
公務員の配偶者分の扶養手当は月額13,000円で、そのほかの扶養家族分は月額6,500円となっています。

配偶者分の扶養手当が出る条件は、配偶者の年間収入が130万円未満の場合です。
これは医療保険の収入条件と同じです。

公務員の給料の扶養手当の場合でも、扶養配偶者が空き家などを売却して一時的に得たときの収入は、扶養になれるかどうかの判定に使いません。

一般企業の扶養手当への影響

一般企業にも扶養手当を支給しているところがあります。

扶養のルールを公務員給与に合わせている企業もありますが、ただ企業の場合は法律で「扶養手当を出しなさい」と決まっているわけではないので、原則的なルールは存在せず、すべては会社の就業規則次第となっています。

したがって、空き家不動産の売却で一時的な利益を配偶者が得ることがあったとしても、多くの場合は扶養手当に影響が歩かないかは一概には言えません。

また、社員の能力に関係なく支給される扶養手当に疑問を持つ企業も少なくなく、大手ではトヨタ自動車が2021年までに配偶者分の扶養手当を廃止すること決めています。

出典

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO095.html
http://www.town.nagano-takamori.lg.jp/d1w_reiki/426909210005000000MH/426909210005000000MH/426909210005000000MH.html

まとめ

さて、ざっくりですが冒頭で問いかけをしました専業主婦(夫)のような扶養家族名義の空き家不動産売却におけるA「負担が増加する条件(扶養が外れるパターン等)」とB「扶養による恩恵が維持できるパターン」の条件一覧表をまとめましょう。

Aさんが自営業者の場合
税金 保険 年金 給与
負担が増加 所得123万円以上(※) 扶養概念なしだが保険料アップ 扶養概念なし 無関係
扶養恩恵を維持 所得123万円未満(※) 無関係
Aさんが会社員と公務員の場合
税金 保険 年金 給与
負担が増加 所得123万円以上(※) 収入130万円以上 収入130万円以上 会社次第
扶養恩恵を維持 所得123万円未満(※) 収入130万円未満 収入130万円未満
※税金控除は2018年以降、Bさんの所得合計が76万円でなく123万円以上、もしくはAさんの年収が1000万円超で控除適用が一切なくなることになります。

扶養は家計に大きく関わる制度ですので、空き家不動産の売却などで突然に大きな利益が出てしまった場合などは、給料や税金などのどのような影響がでるか「かえって不安」に感じる方が少なくないようです。

そもそも、空き家と土地の売却による一時的な利益は家計収入に大きく貢献するはずなのに、それが原因で保険料が高くなってしまったり、税金が高くなってしまうのではあまりにもったいないといえます。

しかし現実的には「扶養のメリット」と「空き家売却のメリット」の2つを獲得することは非常に難しいケースも存在していますので、結局はどちらが得なのかを冷静に見極めた上で、どのように空き家不動産を取り扱うかを考えるべきでしょう。

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空き家隊長

空き家隊長

実家の相続をきっかけに空き家問題に直面。すったもんだの末に何とか売り抜ける。その際に経験したこと、様々な外部のプロに教えて頂いた空き家問題、土地活用問題について記事にしていきます。
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