空き家不動産の相続税計算と税回避の知恵8選

空き家を相続したばかりのあなたはいま、「相続税はどうなるのだろう」と悩んでいることでしょう。実際「相続税が高くなったらしい」「今まで無関係だった人からも、無慈悲に相続税をむしり取るらしい」という話は、メディアのあちこちから聞こえてきます。

確かに税務署は相続税を厳しく監視していますので、もしいい加減な事務処理をすると「ペナルティ」という手痛いしっぺ返しを受けることになりかねません。

空き家の相続については、筆者も個人的に実家を相続する際に相続登記や相続税対策の経験をしましたが、故人の遺産を相続すると膨大な事務作業が発生します。
その中でも相続税に関する事務処理は、もっとも面倒でわかりづらい手続きといえますが、実は不動産の相続税回避で知っておきたいことは大きく8つに整理することができます。

その1つひとつは、難しくありません。

8つの要素を1つひとつ確実に知ることで、不要な相続税を回避することもできますし、めんどうな不動産の相続登記、相続税の納付作業も案外スムーズに終了します。




目次

空き家の相続税回避知識1:相続税を払う人の税額と、払わなくていい人の税額を知る

「空き家不動産を相続したが、そもそも自分は相続税の課税対象者なのか?」

空き家を相続した人がまず最初に感じる疑問かと思います。
実際、散々メディアが「これからは庶民からも相続税を国はとりはじめています」と脅すものですから、空き家不動産を相続した人の誰もかれもが相続税対象になってしまうと感じがちですが、実際はそうではありません。

まずは誰が相続税課税対象になるのか?その条件を正しく知ることから始めましょう。

その上で、自分が相続税の課税対象者になるとわかったならば、具体的な科税金額の計算に進めばよいわけです。

まずは相続と相続税の基本から

そもそも相続税とは「富の集中」を防止するための仕組みです。
両親の莫大な遺産を子供がそのまま受け継ぐことは、社会的な公正さに欠けるといったところでしょうか。
そこで遺産を引き継ぐときに、相続税という大きな税金を徴収し、個人の資産格差を調整すると同時に社会経済発展の原資へと還元するのです。

つまり、遺産が大きければ大きいほど相続税は高くなり、遺産が小さかったり、親の借金のような負の遺産があれば相続税はかからないという点は誰もが何となくご存じだと思います。

相続税は被相続人が死亡した日(厳密には死亡したのを知った日)の翌日から10か月以内に、死亡した方が住んでいたエリアの所轄税務署に申告、納税しなければなりません。

この10か月間だけが相続税対策の猶予期間であるということですね。

財産より債務のほうが多く、相続人が損害を被るような場合、相続人は相続を放棄することもできます。その際一部の相続人のみが相続放棄すると残りの相続人に債務が回ることになるので注意してください。

遺言状は相続の法定相続に優先する

サスペンスドラマ等の定番ではありますが、親の急な死亡などによる突然の相続の場合、法で決められた相続割合よりも被相続人が生前したためた書面(遺言状)が優先します(恐らく誰もがご存じでしょう)。
何はともあれ、正式に空き家不動産(および他財産)の相続人となったあなたは、法定相続人という呼ばれ方をすることになります。

法定相続人と相続の割合(民法による法定相続分)

法定相続人は通常あなたの他にも数名いる事かと思います。
亡くなられた方(被相続人)の配偶者やご兄弟、親戚などですが、簡単にだれがどれくらいの相続割合を得ることが出られるのかを図にしてみましたので、簡単にチェックしてください。

尚、被相続人の配偶者は常に相続人で最優先されます。
また、内縁関係者(要は愛人です)は相続人には通常なれません
(※遺言書がない限り)。
したがって、亡くなられた方の奥様や旦那様が相続対策の主人公となるはずです。

内縁関係者に認められた唯一の相続権利は「賃借権」のみです。
被相続人にアパートやマンションを借りてもらっていたなどという場合、被相続人がなくなってもそのまま居住地に住み続けてもよい、というだけの権利です。

ほかの親族は3つの順位に別れ、

第1順位:子・孫
第2順位:父・母 祖父・祖母
第3順位:兄弟・姉妹 甥・姪

となっており、順位の高いものが不在の場合、順位を繰り下げて相続の権利が発生するのが基本となっています。

法定相続人の範囲と順位

法定相続人の範囲と順位

相続の割合(民法で定められた「法定相続分」)については以下に表でまとめます。
順位が繰り下がると割合が変わってくるのがわかります。

特に遺言書などがない場合は、下記の法定相続分の割合に従う形で被相続人の全遺産が配分されていきます。

配偶者と子・孫
配偶者
2分の1 2分の1÷人数
配偶者と父母・祖父母
配偶者 父母 祖父母
3分の2 3分の1÷人数
配偶者と兄弟姉妹
配偶者 兄弟姉妹・甥・姪
4分の3 4分の1÷人数
相続人に未成年がいる場合は、その未成年の法定代理人(弁護士等)か家庭裁判所で選任される特別代理人が協議に加わることになります。

A.相続税の支払いが不要なケース…基礎控除額より相続税額が小さい場合

まずは相続税を支払わなくてよいケースを解説します(ここは相続税額の算出方法にも深く関係するので、注意して読み進めてください。また、この記事では相続物が空き家不動産のみであるケースを想定していますので、他にも現預金などを相続される方はご注意ください)。

相続した空き家や土地の金額を「課税価格」と言いますので、以下の説明では文字数が少ない「課税価格」を使います。

相続税額の算出方法の原則はこのようになります。

相続した空き地不動産の金額基礎控除額より小さければ、相続税は支払い不要。

簡単な公式を使うとこうなります。

相続税発生可否の判定式

・課税価格<基礎控除額…相続税が発生しない
・課税価格>基礎控除額…相続税の納付義務が発生する

したがって「1.課税価格」と「2.基礎控除額」について、それぞれが自分の場合はいくらになるのかを判断する事さえできれば、まずは簡単に空き家不動産の相続についての漠然とした不安がなくなってくるはずです。

早速それぞれを算出してみます。

1.「課税価格」は負の遺産を差し引いて算出する

課税価格は別名「正味の遺産額」とも呼ばれています。

亡くなった人から引き継ぐことになる空き家や土地や現金などの「正の遺産」から、借金や葬儀費用など「負の遺産」を引いたものが正味の遺産額であり、課税価格となります。

例えば、相続した空き家と土地の価格が5,000万円もあったとしても、一緒に相続した借金が4,500万円で葬儀費用(※葬儀費用は相続財産から一定のルールで控除が認められています。)に500万円かかった場合、課税価格はゼロ円になり相続税を支払わなくていいのです。

この場合の計算式は次の通りとなります。

正の遺産(5,000万円)-負の遺産(4500万円+500万円)=課税価格(0円)

そこで次に「空き家と土地の課税価格」の算出方法を見てみます。

[相続税の計算方法] 相続サポート名古屋 
相続税はまず課税価格を計算。課税遺産総額、相続税の総額、各人の算出税額、各人の納付税額の順で計算します。はじめての相続で安心できる税理士をお探しなら、名古屋市の柳和弘税理士まで。

課税価格の算出には「路線価」と「固定資産税評価額」が必要

引用:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4602.htm

空き家不動産の課税価格を計算するには、相続する不動産の「路線価」「固定資産税評価額」の具体的金額を調査することが必要になってきますが、空き家不動産の相続においては、土地と家屋それぞれの計算方法が異なることに注意してください。

空き家不動産トピックス|路線価とは何か?
不動産は「一物五価」と言い、一つのものに対して五つの価格があるという不思議な品物です。不動産には定価と言うものが無く、その値段は売主...

  • 土地の課税価格(路線価が定められている場合)…路線価×土地の面積×補正
  • 土地の課税価格(路線価が定められていない場合)…固定資産税評価額×一定倍率
  • 家屋…固定資産税評価額と同額

上記計算式で「空き家(家屋)」と「土地」それぞれの課税価格がでたら、両課税価格を合算します、それが最終的な課税価格となるのです。

土地の計算式に付いている「×補正率」や「×一定倍率」は、細かすぎる話になってしまうので今回は割愛いたします(税理士や弁護士による計算ではきっちりと算出してくれます)。

大まかにいうと、私道などの路線価がつかない道路に面している土地の課税価格計算や歪な形などの不整形地の課税価格計算を行う際に、補正率や倍率を使った計算を行います。

まずは概算を把握して相続税課税の有無を判断するために、ここでは次のことだけを理解しておいてください。

相続税額の算出基礎「相続した空き家不動産の課税価格」は、路線価固定資産税評価額を基に決定される

路線価と固定資産税評価額は、市区町村に問い合わせると分かります。
また税務署でも路線価図は閲覧できますし、国税庁のウェブサイトでも路線価図を閲覧・印刷することができるようになっています。

相場を知ってお得に空き家を売る -空き家不動産価格の調べ方-
例えば皆さんが買い物に行かれたとき、スーパーに売っているものがみんな時価だったとしたら、いつものようにショッピングカートに欲しいもの...
財産評価基準書|国税庁
財産評価基準は、相続、遺贈又は贈与により取得した財産に係る相続税及び贈与税の財産を評価する場合に適用します。ただし、法令で別段の定めのあるもの及び別に通達するものについては、それによります。

市区町村は固定資産税評価額を「固定資産課税台帳」で管理していますので、閲覧を申し出て調査してください。

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2.「基礎控除額」の計算は単純

「課税価格」の次は「基礎控除額」を算出します。
基礎控除額の出し方は非常にシンプルで下記のようになります。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

もし空き家不動産を相続する法定相続人が3人いる場合は、下記の計算式に基づいて基礎控除額は4,800万円と算出することができます。

  • 3,000万円+600万円×3=4,800万円(基礎控除額)

ここまでの結果、相続した空き家と土地の課税価格がもしも4,800万円より上回っていたら、この3人の相続人たちは相続税を納付しなければならなくなりますし、下回っている場合ならば相続税を支払う必要はありません(一安心しますね)。

基礎控除額を課税価格が上回っていたら…

問題は基礎控除額よりも課税価格が上回っているとき(上記だと4,800万円を超える価格が、相続した空き家不動産に認められてしまったときです。

このケースは当然、相続税を支払わなければならなくなります。
このステップに(残念ながら)突入すると、今度は「結局、いくら払わなければならないのか?」と新たな疑問がわいてきます。

B.相続税の支払いが必要なケース…基礎控除額より相続税額が大きい場合

ここからは多少ややこしいのでステップバイステップで説明していきます。
先の計算で「課税価格」と「基礎控除額」が判明するところまで計算ができました。
その次は相続税の総額計算に入ります。

1.課税遺産総額を計算します

課税価格から基礎控除額を引くことで「課税遺産総額」を算出します。

課税価格-基礎控除額=課税遺産総額

2.法定相続人の数に従って課税遺産総額を按分します

法定相続人が一人の場合は不要ですが、他に法定相続人がいる場合は、一人ひとりの課税価格を相続割合に従って算出する必要があります(例えば配偶者ならば、2分の1が課税遺産総額の按分額になります)。

3.各法定相続人の相続税額と合計相続税額を計算します

法定相続人それぞれに按分された課税遺産総額に、相続税率をかけます。
更にもう一度控除(基礎控除額と区別するために「控除B」とします)を行うことで最終的な法定相続人それぞれの相続税額を算出します。

各相続人の相続税額=按分された課税遺産額×税率-控除B

くどいようですが、ここで行う控除は基礎控除額とは別のものです。
新たに「相続税計算において控除は2度ある」と覚えておいてください。
また、2015年以降の相続税法改正によって税率が変更されている点にも注意です。

税率と控除額は以下の表に掲載してあります。

 2015年以降(改正後)の相続税率と控除額
課税遺産総額(法定相続分に応ずる取得金額) 税率 控除額(基礎控除額とは別の控除額)
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
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したがって、もし相続税額全ての合計額を出したいならば、法定相続人でそれぞれ按分した上で算出した額の相続税額を足せばよいことになります。

全相続税額=上記で算出した全法定相続人の税額を足す

4.節税のために取得割合按分を思案する

ここまではあくまでも、法で定められた相続割合で計算を進めてきました(配偶者は2分の1等)が、節税のためには取得割合の按分で納付税額が変わってくることも知っておくべきでしょう。

簡単なシミュレーションを下記で行いますが、より詳細は相続に強い税理士を味方に入れたうえで、どういった答えが一番あなたにとって利益を生むのかをパターンシミュレーションしてもらうべきだと思います。

例えば配偶者の税額軽減措置を利用すれば、法定相続分の課税価格と1億6000万円いずれか多い方までを相続しても相続税がかかりません。
これを知っておけば、子供の相続を行わないで配偶者のみの単独相続を行うことで、1億6000万円以下の課税価格ならば、相続税が不要になるわけです。

相続税額の計算シミュレーション例

これで相続税額を計算するためのすべての要素が出そろいました。
それでは相続税の額を、次の事例に基づいてシミュレーションしてみましょう。

事例:男性のAさんがなくなり、配偶者と3人の子供(成人)が1億8千万円の不動産(+他財産)を相続した。両親は債務が3,000万円あり、葬式費用には300万かかった。
税理士と協議の上、全遺産の5分の2を配偶者が、残りを子供たちに等分した。

Step1:課税価格(正味の遺産額)の計算

公式:正の遺産-負の遺産と葬儀費用=課税価格(正味の遺産額)

1億8,000万円-(3,000万円+300万円)=1億4,700万円

Step2:基礎控除額の計算

公式:3,000万円+600万円×法定相続人の数

3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円

基礎控除額5,400万円より、土地付き空き家を含む相続財産の課税価格1億4,700万円のほうが大きいので、この相続人は相続税を支払わなければならないことが分かります。

Step3:課税遺産総額の計算

公式:課税価格-基礎控除額=課税遺産総額

1億4,700万円-5,400万円=9,300万円

となります。
これは法定相続人4人分の課税遺産総額です

Step4:各法定相続人の相続税と相続税総額の計算

まずは相続割合に基づいて、それぞれ法定相続人の課税遺産額を按分算出します。

配偶者…9,300万円×2分の1=4,650万円(課税遺産額)
子供1…9,300万円×6分の1=1,550万円(課税遺産額)
子供2…9,300万円×6分の1=1,550万円(課税遺産額)
子供3…9,300万円×6分の1=1,550万円(課税遺産額)

更に、法定相続人各人の相続税を算出します。

公式:各相続人の相続税額=按分された課税遺産額×税率-控除B

配偶者…4,650万円×20%-200万円=730万円(個別の相続税額)
子供1…1,550万円×15%-50万円=182.5万円(個別の相続税額)
子供2…1,550万円×15%-50万円=182.5万円(個別の相続税額)
子供3…1,550万円×15%-50万円=182.5万円(個別の相続税額)

全員分の合計相続税額を算出します。

730万円+182.5万円+182.5万円+182.5万円=1,277.5万円(合計の相続税額)

Step5:実際の相続割合に従って計算し、配偶者の税額軽減措置と比較する

今回のケースでは税理士と協議の上、全遺産の5分の2を配偶者が、残りを子供たちに等分しています。従って、各法定相続人の実際の相続税計算は下記のようになります。

配偶者…1,277.5万円×5分の2=511.0万円
子供1…1,277.5万円×5分の1=255.5万円
子供1…1,277.5万円×5分の1=255.5万円
子供1…1,277.5万円×5分の1=255.5万円

尚、配偶者の税額軽減措置が適用されれば、課税価格か法定相続分のどちらか多い方が1億6000万円以下の場合、税負担がなくなります。

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上記シミュレーション例では、下記のようになります。

A:配偶者の課税価格(相続割合分)
1億4,700万円×5分の2=5,880万円

B:配偶者の法定相続分
1億4,700万円×2分の1=7,350万円

A,B双方が1億6,000万円以下なので配偶者のみは税負担なし。
最終的な納税額は下記の通り。

配偶者…=0円
子供1…1,277.5万円×5分の1=255.5万円
子供1…1,277.5万円×5分の1=255.5万円
子供1…1,277.5万円×5分の1=255.5万円

全ての相続税総額=255.5万円+255.5万円+255.5万円=766.5万円

配偶者の税額軽減措置以外にも、小規模住宅地の評価減の特例など、土地の評価額を下げることによって相続税額を小さくする方法があります。
個別ケースによって状況がことなるので、相続税に強い税理士に味方になってもらったうえで、空き家不動産相続の節税対策を行うべきでしょう。

空き家の相続税回避知識2:相続税の2015年改正は重要

相続税は2015年1月に基礎控除額が引き下げられるなどの大幅な改正が行われ、課税対象者が増えてしまう結果となりました。
更に、相続税の納付義務対象者の1人あたりの税額も増えるという増税の嵐という結果になってしまいました。

空き家不動産を相続された方の中には「以前の相続税制だったら課税されなかったのに…」と悔しがっている方がいるかもしれません。

しかしその一方で、未成年者控除および障害者控除の控除額が増額されるなどの措置が加わっており、改悪の部分と改正の部分双方を知ることは、空き家不動産相続で節税を目指すあなたのような方には必須事項となっています。

「基礎控除額引き下げ」+「税率改正」で、納税者数を増やすと同時に個別の納税額を増やす結果に

2015年改正の相続税制改正ポイントは、「基礎控除額の引き下げ」と「税率改正(税率アップ)」の2台柱となっており、相続税を納付しなければならない人の数を増やし、1人あたりの相続税額をアップさせたことです。

基礎控除額はこう変わりました。

改正前(2014年以前):5,000万円1,000万円×法定相続人の数

改正後(2015年以降):3,000万円600万円×法定相続人の数

また法定相続人が1人の場合、基礎控除額は改正前の6,000万円から3,600万円に減額されてしまいました。

改正によって基礎控除額がかなり減額されたことが分かります。
基礎控除額は「相続税を減らす効果」があるので、基礎控除額の減額は相続税の増額をそのまま意味しています。

そして改正における更に重要な点は税率が変わったことです。
以下に改正前後の税率を表にしました。
先の計算で「2度目の控除」である「控除額」も掲載しています。

2015年相続税制改正前と改正後の税率と控除額比較
改正前 改正後
課税遺産総額(法定相続分に応ずる取得金額) 税率 控除額(基礎控除額とは別の控除額) 税率 控除額(基礎控除額とは別の控除額)
1,000万円以下 10% 10%
3,000万円以下 15% 50万円 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円 30% 700万円
2億円以下 改正前は設定なし 40% 1,700万円
3億円以下 40% 1,700万円 45% 2,700万円
3億円超
50%
3億円超
4,700万円
改正後は「3億円超」の設定が撤廃
6億円以下 改正前は設定なし 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

資料「相続税の税率」(国税庁)

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この表から分かることは課税遺産総額が1億円以下の人は、税率と控除額については変更していないということです

一方、2億円以上の遺産を相続した人はかなりの増税が見られます。
6段階だった税率区分が8段階となり、2億円~3億円は40%から50%に税率引き上げ、6億円超の方は50%から55%へ税率が引き上げられ増税のあおりを正面から受けています。

政府が「おカネ持ちの人の相続は、より厳しく取り立てよう」と考えた結果の改正であるといえます。

2億5千万円の相続税は2,460万円、改正前の460万円アップ

相続税の金額が改正後にどれくらいアップしたのか実例でみていきましょう。
次の事例を元に、改正前と後での相続税額を算出してみました。

事例:両親が亡くなり、子供2人が、課税価格2億5千万円の土地付き空き家を相続した。子ども2人は相続を2等分した

【改正前】子供1人当たりの相続税額2,000万円

  • 基礎控除額=5,000万円+1,000万円×相続人2人=7,000万円
  • 課税遺産総額=課税価格2億5千万円-基礎控除額7,000万円=1億8千万円
  • 子供1人分の課税遺産総額=1億8千万円÷2=9,000万円
  • 9,000万円の税率30%、9,000万円の控除額700万円
  • 子供1人分の相続税=課税遺産総額9,000万円×30%-700万円=2,000万円

よって改正前の子供1人分の相続税額は2,000万円でした。

【改正後】子供1人当たりの相続税は2,460万円(460万円増税)

  • 基礎控除額=3,000万円+600万円*相続人2人=4,200万円
  • 課税遺産総額=課税価格2億5千万円-基礎控除額4,200万円=2億800万円
  • 子供1人分の課税遺産総額=2億800万円÷2=1億400万円
  • 1億400万円の税率40%、1億400万円の控除額1,700万円
  • 子供1人分の相続税=課税遺産総額1億400万円×40%-1,700万円=2,460万円

改正後の子供1人当たりの相続税額は2,460万円となります。
都合、改正前より460万円多く納付しなければならなくなったのです。

それにしても改正前後を見比べてみると、基礎控除額の減額と税率アップが相乗効果を発揮して、納税者に非常に大きなダメージを与えているのがよくわかりますね。

税額控除には増額されたものもある

先にふれたように、一部税額控除の中には控除額が増えたものもあります。
必ずしもあなたに適応する控除とは限りませんが、少しでも節税を目指すならば、頭の片隅に置いておきたいものです。
「払わなくて済むのなら1円でも」の精神です。

未成年者控除

2015年改正の前は1年につき6万円の控除額が、改正後は1年につき10万円(ただし20歳まで)と増額されました。

障がい者控除

2015年改正の前は85歳まで毎年6万円の控除額(特別障がい者のみ12万円)でしたが、改正後は1年につき10万円(特別障がい者は20万円)に増額されました。

小規模住宅地の特例

こちらは控除額ではありませんが、相続でしばしば利用されている小規模住宅地の特例が、2015年改正の後は適用範囲面積が拡大しました(ただし居住地の宅地に限ります)。改正前は限度面積が240㎡(減額割合80%)でしたが、改正後は適用限度面積が330㎡(限度割合80%)に拡大しています。

同時に、事業用の宅地と居住用の宅地の合計適用面積も、330㎡から740㎡に拡大しました。

空き家の相続税回避知識3:相続税の申告に必要な準備

相続税の金額が判明したので、次は実際の納付手続きに着手しましょう。
必要な書類をそろえて、申告書を添えて税務署に提出します。

ここではその「必要な書類」について見ていきますが、遺言書が存在する場合は(ご想像の通り)その取扱いには重々注意してください。
せっかく遺言書にそって相続税を払っても余りあるような有利な遺産配分ができる予定だっとしても、家庭裁判所の検認知識がないためにひどい目にあった人を個人的に知っています(勝手に遺言書の封をあけて、遺言内容が無効になってしまったという笑えない話です)。

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相続税申告に必要な書類は5種類

相続税の申告書に添付種類は主に5種類あります(5枚ではなく5種類です)。
1種類の書類中には、複数枚の書類が含まれることがあります。

基本的に書面作業は淡々と確実に1枚ずつそろえることが、事務処理のコツです。

必要書類1.被相続人と相続人それぞれの戸籍謄本

亡くなられた被相続人の戸籍謄本は、生まれたときから亡くなるまでのことが分かるものが必要になります。そして遺産を引き継ぐ相続人となる人の戸籍謄本も必要です。

税務署はこの書類によって、相続人に「被相続人の遺産を引き継ぐ正当性がある」ことを確認します。

必要書類2.遺言書

被相続人が遺言書を残している場合、開封前に家庭裁判所で遺言書に「検認」をしてもらわなければなりません。

開封してしまった遺言書は、家裁は検認してくれませんので注意してください。
遺言書に特定の相続人について有利な内容がかかれてあっても、検認されなければ効力を発揮できません(ただし、公正証書による遺言書は、家裁の検認は不要です)。

必要書類3.遺産と債務の一覧表

亡くなった方から相続することになる空き家と土地が1億円の価値(遺産)があったとしても、その亡くなった人が1億円の借金(債務)をしていたら相続はゼロ円、つまり相続税は発生しません。

そこで相続人は、「遺産-債務」の金額が分かる、遺産と債務の内容を記した一覧表を作成しなければなりません。

必要書類4.遺産の評価を示す書類

相続することになる空き家、土地、そして他の財産が「いくらになるのか」という評価をしておかなければなりません。

先ほど「課税価格を知るには『固定資産税評価額』を知る必要がある」の章で解説したように、空き家と土地の課税価格を、市区町村に問い合わせるなどして調べておく必要があります。

必要書類5.遺産分割協議書

これまで見たように、法定相続人が複数存在する場合、遺産を分割しなければなりません。
遺言書があればそこに遺産分割の内容が書かれてあるはずなのでそれに従いますが、遺言書がない場合は相続人全員で協議して合意しなければなりません。

その協議内容を記したのが、遺産分割協議書です。
話し合いの議事録のようなものです。

遺産分割協議書には参加者全員が実印を押印した上で、参加者全員の印鑑証明を添付する必要があります。

遺産分割協議書(引用:http://www.mf-realty.jp)

空き家の相続税回避知識4.「小規模宅地等の特例」は相続税を減額させるための空き家オーナー必須特例

あなたが納付すべき相続税は、減らせるかもしれません。
既に何度かお話にあげている「小規模宅地等の特例」に該当する場合、相続税を支払わなくて済む可能性もあります。

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「小規模宅地等の評価減特例」具体的な内容

ここでは、住宅を相続したケースを紹介します(事業用地等は除くという意味です)。
まず、この特例を受けられる相続人ですが、

  1. 被相続人(亡くなった方)の配偶者
  2. 被相続人と同居していた親族
  3. 被相続人に配偶者がいない場合で、被相続人と同居していない親族

などに限られてきます。

配偶者は被相続人と同居していなくても対象になりますが、配偶者以外の家族は被相続人と同居していることが条件になります。

※被相続人に配偶者がいない場合は、同居していない親族も対象となります。

この場合、相続した「土地」のうち330㎡までの課税価格を80%を減額してくれます。
例えば、住宅とともに500㎡の土地を相続し、その土地の1㎡あたりの価格が30万円だった場合、相続した課税価格は1億5千万円になります。

500㎡×30万円=元の課税額1億5千万円

ところがこの特例の対象になると、土地の課税価格が7,080万円にまで下がります
この場合計算式は以下の通りです。

・減額分:330㎡×30万円×80%=7,920万円
・特例後の課税価格:元の課税価格1億5千万円-減額分7,920万円=7,080万円

特例計算式で算出した課税価格7,080万円をもとにして相続税を計算します。
先に説明した相続税額の計算式を覚えていらっしゃいますか?

・相続税=(課税価格-基礎控除額)×税率-控除B

相続税の計算式は上記ですので、課税価格が小さくなれば相続税の金額も自ずと低くなるのです。これが「小規模住宅地等の特例」における節税効果です。更に、2015年の相続税改正で減額対象となる適用範囲面積が拡大したのは、既にふれたとおりです(240㎡から330㎡に拡大)。

空き家の相続税回避知識5.相続税を速やかに支払うことで余計な出費や控除適用除外を免れる

これは相続税に限ったことではありませんがある意味一番の節税方法とはしっかり速やかに税金を支払うことです。
しかし実際には、驚くくらいに多くの人は相続税の納税期間に遅れて納付して延滞税を食らったり、特例が使えなくなったりするという目に遭っています。

相続税の申告期間に間に合わないと…

・小規模住宅地等の評価減特例が受けられなくなります。
・配偶者の税額軽減適用ができなくなります。
・物納ができなくなります。

相続税を支払わないとどうなるのか。
答えは明白です、本来の納税額より多い金額を支払わされることに繋がります。

「相続税を払わないつもりはなかった。しかし相続税の支払い手続きが大変だから先延ばしにしていたら、期限をすぎていた」

このような言い訳は税務署には通じません。

両親が亡くなり、他に兄弟がいない人が親の空き家と土地を相続しても、売却したりしなければしばらくは何事も起きないでしょう。
最初は気にしていた税務署からの連絡も、当面は全くその気配すらないので、いつしかすっかり不動産相続のことなど失念してしまうかもしれません。

そのまま年月が過ぎたとしても、今まで通りに被相続人宛の固定資産税支払い通知がきて、それを相続人がしれっとコンビニか銀行で支払ってしまえば、これまた暫くは何も起きません。

しかしこれは立派な脱税です。

そして「何も起きない」のはいまだけで、いずれ必ず税務署に見つかります。
脱税の意図がなくても、うっかりミスでも重いペナルティを受けることになりますので、相続税の申告と納付は必ず速やかに行ってください。

相続税の延滞税

延滞税は、相続人が相続税を支払う申告をしたのに、実際に現金を納付しなかったときに発生します。

延滞税は1日ずつ日割りで増えていきます。
2カ月以内の延滞の場合は7.3%、2カ月を超えると倍の14.6%となります。

例えば、500万円の相続税を期限までに納付せず、3カ月後に支払ったとします。
このときの延滞税は以下の通りです(ここでは3カ月の各月の日数を30日、31日、30日とします)。

・最初の2か月分の延滞税
…(500万円×7.3%×61日)÷365日=61,000円…A

・最後の1か月分の延滞税
(500万円×14.6%×30日)÷365日=60,000円…B

・3か月分の延滞税合計
A+B=121,000円

本来納付すべき500万円にプラスして、121,000円を納付しなければならなくなります。

節税節税と騒ぐ以前に、まずはしっかりと納税意識を持つことがいかに自分自身のメリットになるかということがよくわかりますね。

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相続税の過少申告加算税と無申告加算税

本来納付しなければならない相続税を納付しなかった人が、税務署からの税務調査の通知を受けてから納税手続きを行うと、「延滞税」とは別に「加算税」が課されます。

税務調査の通知のことを「調査通知」といいます。
調査通知を受け取った納税者が「税務署が税務調査に来るということは、適正に税を納付していなかったことが発覚したのではないか。仕方がない、正確に申告しよう」と思ったとします。

そもそも意図的に納税をしないということは「あってはならない行為」であり、延滞税に加えて、さらに「加算税」というペナルティが課せられるのです。

加算税には、一応相続税を納めたけど、課税価格などを不適切に見積もって申告した場合の「過少申告加算税」と、そもそも相続税の申告をしていなかった「無申告加算税」の2つがあります。

加算税のペナルティ金額は、本来納付すべき額に、以下の表の率(5~20%)をかけた金額となります。

修正申告の時期 過少申告加算税 無申告加算税
申告期限の翌日から調査通知前まで なし なし
調査通知以後から調査による更正予知前まで 5~10% 10~15%
調査による更正予知以後 10~15% 15~20%

申告期限がすぎても、税務調査の調査通知を受ける前に修正申告を行えば、加算税のペナルティはありません(ただし、延滞税はかかります)。

表の中の「更正の予知」については、少し詳しすぎる話になってしまいますので、次に詳しく説明いたします。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/kasan.pdf

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過少申告加算税と更正の予知 | 目からウロコ?元国税調査官の税務調査と税務実務 | 税務調査対策を中心とした税理士向けサービス KACHIEL
今回は「過少申告加算税と更正の予知」です。税務調査の連絡があり、事前に過去の取引等をチェックした結果、重大なミスが発見され、否認指摘される前に修正申告する場合があります。この場合、基本的には過少申告加算税は課されない訳ですが、この理屈を過去の裁決、判決を挙げながら、整理してみたいと思います。

強い悪意があるとみなされると加算税が増える

前項表の中に「調査通知以後から調査による更正予知前まで」と「調査による更正予知以後」という聞きなれない言葉ありますので、解説を加えます。

修正申告の時期 過少申告加算税 無申告加算税
申告期限の翌日から調査通知前まで なし なし
調査通知以後から調査による更正予知前まで 5~10% 10~15%
調査による更正予知以後 10~15% 15~20%

この「更正予知」の意味ですが、平たくいうと「脱税がバレるとあなたが思ったかどうか」です。例えは次のようなケースです。

相続人の手元に調査通知が届いた時点で、相続人が「税務調査が来ることになった。
ならばもう一度、相続税の金額を洗い直してみるかな」と考えて、納付済みの相続税の金額を調べてみた結果、相続税の申告金額が少なかったことに気付いたとします。

この時点で修正申告を行った場合は、「調査通知による更正を予知していなかった」となります。

「更正の予知をする前」に修正申告をすることは過失が少ないと考えられので、加算税が低くなっているのです。
それでも調査通知が届くまで納めた相続税の額が適正であったかどうかの確認をしなかったので、加算額は課されます。

その一方で、相続人が調査通知を受け取ったときに、「税務調査が入るということは、相続税の申告をしたときに不適切だったところがバレたってことだな、仕方がない、修正申告をしよう」と思ったら、これは「調査通知によって更正を予知した」ことになります。

悪意があるので加算税が高くなるのです。

税務署は「悪意」については厳しく見ていて、もし修正申告をして延滞税や加算税を納付したにもかかわらず、その修正申告も不適切だった場合、加算税は最大30%にまでアップします。

最も悪質とみなされた場合は「重加算税(最大50%税額増)」

この「不適切だったかどうか」というレベルではなく、「隠蔽や虚偽」といったさらに強い悪意がある人には、さらに重いペナルティである「重加算税」が課せられます。

その率は最大50%です。

つまり、重加算税を課せられると、「本来の相続税」+「本来の相続税×50%」を支払わなければならず、正直に納めていた場合の1.5倍も支払わなければならないわけです。

実際は税務調査に訪れる調査官次第

この「悪意あり」と「悪意なし」の関連についてなのですが、非常に境界線があいまいだと思いませんか?実際の税務調査現場で、どのようにこれらが判断されれているのかというと、はっきり言って税務調査にやってきた調査官次第(その人の性格、経歴、調査方針)だなと結論づけています

私は事業を経営しているので、数年に一度は定期的に会社に税務調査が入ります(脱税などしていませんが、どの企業も5年に1度は税務調査があります)。その際に何度も痛感しているのが、どうしてやってくる調査官によって判断基準がイチイチ異なるのだろうか?という点です。

もちろん、税務署全体の方針というのもありますが、前回調査では問題なかったことが、急に「これは重加算税対象です」と言われて仰天してしまうこともありました。

結局はヤリ手の税理士を雇って、喧々諤々の議論の末に税務署と企業双方が納得する点で「手打ち」をするのが通例となっていますが、そもそもはっきり基準があるならば「手打ち」などはありえない訳です。

これを不動産相続に置き換えますと、運悪く厳しい調査方針のベテラン堅物税務調査官があなたの家にやってきたとするならば、本来グレーなものも黒にされてしまうかもしれませんし、「手打ち」などは全く望むことができなくなると思われます。

反面、全くこちらの弁明に突っ込みも入れず、あっさりと事務的に調査を終わらせてさっさと帰宅してしまう税務調査官も過去にはいました。

兎にも角にも…ああ、恐ろしい、恐ろしい。

空き家の相続税回避知識6.相続税の支払い期限「10か月ルール」を正確に把握する

相続税の納付には10か月の支払い期限があります。その期限までに納付を終えないと、前項目で触れたペナルティ(延滞税)が課せられてしまいます。

ここ注意していただきたいのは「10カ月ルール」を正確に知ることです。
ただ単に「10カ月以内に納付すればいいと聞いている」といった知識では、意外な落とし穴にはまってしまうかもしれません。

相続の申告期限と納付期限は「同日」であることに注意

相続税には2つの期限があり、それは「申告期限」「納付期限」です。

納付とは、税金を支払う行為のことです。
この記事の冒頭でも少し説明いたしましたが、申告期限も納付期限も、相続開始を知った日(要はあなたが被相続人の死亡を知った日)の翌日から10カ月以内と定められています。

つまり、10カ月後の期限日に相続税の申告を行ってその申告が受理されても、その日のうちに相続税を全額支払わなければ延滞税の課税対象者となります。
これが「申告期限日と納付期限日が同じ日であることの恐さ」です。
したがって、相続の申告はできるだけ早めに処理し、余裕をもって納税額を用意するというスケジュールを組むべきでしょう。

会社の決算など、一般的な行政への手続きでは、先に申告手続きの期限が訪れ、その後に支払い期限が到来する順序のものが多いのですが、相続税は申告の期限日と納付の期限日が同日だということを決して忘れてはいけません。

また「あなた相続開始を知った日(10か月のカウント開始前日)」にも注意してください。

うっかり10か月の期日計算を失敗しても「被相続人が死んだことをしばらく知らなかった」という言い訳を、税務署は簡単には信じません。
通常、税務署は「相続開始を知った日」を「被相続人が亡くなった日」として考えます。

また「相続した日」と「相続開始を知った日」の双方を混同している人もいますので注意してください。

一般的には「空き家(遺産)を相続した日」の事を「空き家所有者の名義を相続人に変更した日(≒相続登記日)」のことと理解されますが、これは「あなたが相続開始を知った日(≒被相続人が死亡した日)」と同じではありません。

正直、この辺の日本語の意味については非常にややこしく混乱しやすいの一言です。法律家を雇っての相続手続きをするならば問題ないでしょうが、相続人だけでのやりとりや書面作成時には、個別の言葉の意味するところを十分理解して手続きを進めてください。

ほんの小さなうっかり行為を防ぐことが、結局は延滞税回避などの的確な節税行為につながっていくのです。

相続税の申告は「被相続人」居住エリアを管轄する税務署へ

相続税を申告する行政機関は、亡くなった方(被相続人)が亡くなったときの所在地にある税務署と定められています。
どの税務署でも申告を受け付けてもらえるわけではありませんので、被相続人が遠方に居住していたという方は十分に注意してください。

尚、申告さえ受理してもらえれば、実際の相続税の納付は、相続人の居住地近くにある税務署でも金融機関でも郵便局でもOKです。
相続税の納付は、現金一括が原則ですが、例外もあります(※後述します)。

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空き家の相続税回避知識7.相続税が支払えない場合の対処方法を知る

相続税がその他の税、たとえば所得税や消費税などと異なるのは、実際に現金が動いていないのに税金を支払わなければならないことです。
普通は「沢山儲かったから、その利益の一部を納税する」という論理がほとんどです。

ところが相続税の場合、相続人が空き家を相続したら、税務署は「その空き家の価値に相当する現金が手に入ったとみなすので、相続税を納付しなさい」と言う論理です。
特に今現在の預金通帳の数字が増えるわけでもないのに、かなりまとまった金額を国に治める必要があるわけですから、これは本当に尋常ではない出来事なのです。

※多額の現預金や有価証券を合わせて相続すれば話は別ですが、そういったケースは非常に少ないため、先祖代々の相続不動産を処分してでも納税しなければならない…という悲劇が頻発するわけです。

そこで、相続人に「相続税分の現金の持ち合わせがない」という事態が発生することがあります。特に空き家は、流動性に劣る資産ですから、すぐに売れるものではありません。

相続税の納付期限の10カ月以内に買ってくれる人を見つけ、その人に空き家の購入代金を支払ってもらうというところまで進まないと、相続税は相続人の手持ち資金で支払うよりないのです。

そこで相続税制度にはある種の救済制作ともいえるべき「延納」「物納」という例外規定が存在しています。

相続税の「延納」とは

相続税を含む税金は現金一括払いが原則ですが、相続税額が10万円を超えて、一括払いが困難であると税務署が認めると、年賦(ねんぷ)で支払うことができます。

年賦とは、1年にいくらと決めて支払っていく分割払いの方法です。

ただし、一般的なローンの分割払い同様に利子が発生することと、担保を差し出さなければならないという2つのデメリットがあります。

担保は、国債、地方債、有価証券、土地、そして保証人による保証などです。
普通に考えてもかなり厳しい条件といえるでしょう。

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相続税の「物納」とは

更に将来的にも相続税を支払える見込みがない人は、相続した「モノ」そのものを税務署に納めることで、相続税を支払ったこととみなされる制度があります。
それが相続税の「物納」と呼ばれる制度です。

つまり、土地付きの空き家を相続したときに相続税を払えない人は、その空き家と土地の権利を国に譲ればよいということになります。

また、相続税額のうち、現金で支払える分は現金で支払い、残りを物納することも可能です。
相続した土地の相続税が1,000万円だった場合、500万円を現金で支払い、残りの500万円分の土地を税務署に納めることもできます。

ただし申告期限までに相続税申告を行わないと、物納そのものが認められなくなってしまいますので注意してください。
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「延納や物納」と「相続物件の売却」どちらが得なのか?

空き家を相続したあなたが、すぐに相続税の支払いに必要な現金を用意できない場合、相続税の延納・物納を選択したほうがいいのでしょうか?それとも空き家を売却して現金をつくり、その上で相続税を支払ったほうがいいのでしょうか。

「思い出や思い入れ」を一切無視して、経済合理性だけを考えるなら、使う予定がない空き家は売れるときに売ってしまうほうが得策でしょう。

空き家はすぐに老朽化します。
そして現在、政府と地方知自体は老朽化した空き家の撤去に力を入れています。

また空き家を持っているだけでも固定資産税が発生しますし、自治体から「不良空き家」に認定されてしまうと、その固定資産税が6倍に跳ね上がる可能性もあります。

空き家不動産の固定資産税を6倍も払わなくて済む4つの方法
空き家の固定資産税を6倍も払わなくて済む4つの方法 人が住まなくなってだいぶたつ空き家をお持ちのあなたは、「固定資産税の額がこれまでの...

しかしながら「安値でもいいから売り急ぐ」ことは禁物です。
最低でも、複数の不動産会社に見積もりを取るなどの相談をして、賢い売却先を見付ける努力は必ずするべきではないでしょうか。
そうでないと、愛する肉親から相続した不動産が、意味もないような値段で買いたたかれた上、その売却代金ですらお上に召し上げられてしまう…こんな悲しい結末、なんとかして避けるべきではないかと私は考える次第です。

空き家の相続税回避知識8.物件「相続登記」を先に終え、次に「相続税処理」に取かかると2度手間とコストが抑えられる

相続税の納付で難しいのは、相続人の最終決定と課税価格の確定です。
しかしこれがトラブルなくすんなり片付けば、10カ月以内に処理することは案外容易いです。

通常の場合、私は遺産に含まれる空き家不動産を名実ともに相続するには、法務局(もしくは出張所等)において該当不動産の相続登記を何よりもまず行う必要があると考えています(この相続登記の事務作業も、相続税の支払い並に大変だったりします)。

相続登記には期限が定められていないのですが、できれば先に相続税の納付の手続きを済ませてみてください。

なぜならば、相続登記を受け付ける登記所は関係書類の原本を返却してくれますが、相続税の手続きをする税務署は原本を返してくれないからです。

相続登記を終わらせてしまえば、返却してもらった各書類の原本を税務署に渡すことができますので、公的書面の取得に2度手間がかからず、効率的に作業が進みます。

原本の入手は直接役所に出向くなどの手間がかかって大変ですし、(少額ですが)租税公課としての費用もかかりますので、最初に「相続登記」、次に「相続税手続き」という順番で進めることを私はお勧めしています。

とはいえ、現実は小説より奇なり。
私の実母のケースみたいに、相続人の間でトラブルが起きてしまうと10カ月はあっという間にすぎてしまいます。
そうなると相続人一同あたふたしながら「まずは相続税を何とかしよう」と一致団結して、その後に再度揉め事のリスタートを始めるという可笑しな状況に出くわします。相続登記と相続税手続きは状況によってどちらを先に行うかが大きくかわってくるともいえるのですね。

まとめ 空き家不動産の相続は「知識ある者」が得をし「知識ない者」は損をするようにできている

税収が毎年下がり続ける現代日本の国庫状況を反映する形で、国は税金集めに躍起になっています。しかもいわゆる「おカネ持ち」から取ろうとしています。
相続は格好の標的なのです。

空き家を相続したあなたは節税と脱税をきちんと区別して、「脱税はしない」「極限まで節税する」という2つの意識はぜひとも持ち続けてください。
そのためにはくれぐれも、自己判断や税に関する法律に詳しくない人を頼ることだけは避けてください。

私自身も自ら経験して知った不動産相続の方程式は「知っている人が得をして、知らない人は徹底的に損をする」という、日本の税制そのものを明文化したようなものでした。

流石、頭の良い官僚のみなさんが長年かけて考えて、我々国民から税金を吸い上げるために構築してきたシステムです。
国にとっては相続税のカラクリなど、わからない人には永遠にわからないままでいてほしいんだなあ、と強く感じる次第です。

そんな国の考え方に少しでも対抗するために、まずあなたがすべきことは、自分自身で空き家不動産相続に関する知識を付ける事。
そして、プロフェッショナル(法律家、相続専門不動産会社等)の力を遠慮なく借りる事です。海千山千の空き家分野を得意とする不動産会社は、様々な特殊ケースの不動産の相続を見ています。空き家オーナーは、こういったプロの力を上手に使いこなすことで、年々厳しくなる相続税徴収に、節税という知恵で対抗してみてください。

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空き家隊長

空き家隊長

実家の相続をきっかけに空き家問題に直面。すったもんだの末に何とか売り抜ける。その際に経験したこと、様々な外部のプロに教えて頂いた空き家問題、土地活用問題について記事にしていきます。
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