土地や建物を売却する際、人気のエリアならすぐにでも売れるので心配はないでしょうが、地方の土地等では思っていたより買いの需要が少なくて、思ったように売れずにあたって頭を抱えている人も多いのではないでしょうか。
需要が少ない土地や建物はどうしても買主有利になってしまいがちなので、相場よりも高い物件は見向きもされません。
要するに、買いたい物件を選べる『買主』と、売りたい物件が選べない『売主』では初めから売主の方が不利な状況になっています。
不動産を売りたいと思っている人は少しでも高く売りたいと思っていますが、購入したいと思っている買主はできるだけ安く買いたいと思っています。
高く買いたい買主なんてこの世の中に1人もいないわけですから、いくら高く売りたいからと言って、いつまでも高い金額で販売するわけにもいきません。
物件が売れ残ってしまうと固定資産税や管理費などによって、少しずつ資産は目減りしていきます。
もちろん高く売る事ができれば成功と言えるでしょうが、早く売る事もまた成功と言えるでしょう。
現状のままで売れなければ、何もしなければ売れるはずがなく、何か行動を起こすべきです。そんな売れない土地や建物を売る場合に見直すべき点を解説していきます。
目次
不動産会社を会社の媒介契約
不動産が売れないのは、不動産会社の責任とも言えますが、不動産会社には得意不得意がありますので、一概に不動産会社だけのせいとも限りません。
不動産会社との媒介契約の結び方でも力の入り方が変わります。
見直しをする前には必ず現状の確認をしてから、問題を突き止めるようにしましょう。
問い合わせがあったかどうかをまめに確認
媒介契約を結んだ際に、どういった条件で買主を募集しているのか、いつまでにいくらで購入して欲しいかなど、条件を不動産会社に伝えているはずです。
条件を伝えていないと、全く条件の合わない購入希望者との交渉は単なる無駄に終わってしまうからです。
そこで、不動産会社が会社に問い合わせがあったのかを確認しましょう。
問い合わせがあれば、興味を持っている人がいるという事になりますので、問い合わせがなければ大問題です。
全く需要がない、不動産会社の営業力がない、また相場から大きく外れていて相手にされていないなどが考えられますが、全く需要がない以外は手の打ちようがあります。
不動産会社との媒介契約を確認
不動産会社と結ぶ媒介契約には3種類あり、『一般媒介契約』『専任媒介契約』『専属専任媒介契約』それぞれ特徴が違います。
また、媒介契約の種類によっては、法令に定められている義務も違い、法令を遵守して依頼主に対応しているかを確認しておいた方が良いでしょう。

一般媒介契約
- 複数の不動産会社と契約が可能
- 自ら買主を見つけてくることが可能
- 不動産流通サイト(レインズ)に登録義務がない
- 定期報告義務がない
専任媒介契約
- 1社とのみ契約可能
- 自ら買主を見つけてくることが可能
- 不動産流通サイト(レインズ)に登録義務あり(契約から7日以内)
- 2週間に1度以上の定期報告義務あり
専属専任媒介契約
- 1社とのみ契約可能
- 自ら買主を見つけてくることができない
- 不動産流通サイト(レインズ)に登録義務あり(契約から5日以内)
- 1週間に1度以上の定期報告義務あり
現在の媒介契約がわからない場合は、契約書に記載されていますので一度確認してみましょう。
1社との契約なら『専属専任媒介』か『専属専任媒介』のどちらかであることが多いですが、一般媒介契約となっている場合もあります。
一般媒介契約を結ぶのは、複数の不動産会社と契約する意図がある場合のみです。
1社としか契約していないのに一般媒介契約になっていれば専任に切り替えても問題ないですが、それ以前に結果の出ていない不動産会社との契約更新をどうするかを判断しましょう。
また、専属専任媒介や専任媒介で結果が出ていなければ、不動産会社の変更も考えておきましょう。
定期報告がきちんとされているかを確認
専任媒介と専属専任媒介には定期報告義務があり、依頼主に対して販売活動の状況報告をしなければなりません。
この連絡はメールなどでも可能なため、簡単な定型文などで進展がないことを伝える程度で終わらせているような不動産会社は、変更することも検討しておきましょう。
一般媒介契約なのに定期的に報告してくれる不動産会社なら、良心的といえ反対に専任媒介契約と専属専任媒介なのに報告をしてこなければ法令違反になりますので、不動産会社を変えることをお勧めします。
登録証明書があるかどうかを確認
登録証明書とは、不動産流通サイト(レインズ)へ物件情報を登録したことを証明するものです。
レインズに登録された物件情報は、登録をされると不動産会社を通じて登録証明書が依頼者に渡されます。
レインズに登録されると、全国の不動産会社がその物件情報を見ることができ、買主を探すためには非常に重要になってきます。
しかし、登録義務があるにも関わらず、登録をしない業者もいます。
その理由としては、広く流通させることで、別の不動産会社が間に入ってしまい、買主からの仲介手数料がもらえなくなる可能性があるからです。
不動産会社は、買主からも売主からも仲介手数料をもらえる(両手取引)で利益を伸ばそうとしています。
その為、レインズに登録義務があってもわざと登録せずに違反行為をする業者がいるわけです。
また、一般媒介契約ではレインズに登録義務はないですが、依頼主の事を考えれば言われなくても登録するべきでしょう。

悪質な業者はすぐにでも変更しよう
報告義務違反や登録義務違反などは、容易に判断できる確認方法で、それ以外にも巧妙に依頼主の不利益を誘う事もあります。
不動産会社は通常範囲で行う広告費を請求することは認められておらず、別途依頼された広告や、依頼主が支払いを了承した広告費だけしか請求できない事となっています。
しかし、頼んでもいない広告費を請求してきたり、頼んだ広告を水増ししたり広告内容を変更したり、こうした不正を働く不動産業者はなくならないようです。
悪質な業者は法律や制度に詳しくないからと言って、それをいいことにお金を巻き上げようとしてくるので、判明したらすぐに変更するようにしましょう。
適正な売却価格と相場を見極める
価格を下げて売りだしたくないという気持ちはわかりますが、その結果売れずに時間がかかってしまう事の方が負担が大きくなってしまう事もあるので、「絶対に値下げしたくない」という姿勢は改めた方が良いでしょう。
住宅ローンの残債などの事情で値下げしたくないという事情はあるでしょうが、長引いて全く相手にされないことの方が後々の損失は大きくなります。
価格を下げて素早く売却してしまう方が将来的に損失を小さくすることに繋がります。
不動産会社からしても、物件の価格が高いほど、もらえる仲介手数料は多くなるので高く売りたい気持ちは売主と一緒ですが、売れなければ話になりません。
その為、売れないと判断すれば不動会社は値下げの提案をしてきます。
どんな商品でも同じですが相場ずれしているものはもちろん売れ残ってしまいます。
以下の点に注意して価格の見直しをしてみましょう。
- 周辺物件と相場は一致しているか
- 買いたいと思う価格か
- 不動産会社の査定額を鵜呑みにしない
- 手数料や税金を把握しているか
- 利益目的で高すぎる価格を設定していないか
不動産売買は買い手がいて初めて成立するもので、売主が利益を得ようとすればするほど買主は損をすることになります。
買い手が付かない理由はいろいろありますが、お互いが譲歩することも大事で意地を張り続けても仕方がありません。
立地は悪くないのに売れない理由のほとんどは価格です。
売主にとっては唯一の物件だとしても買主にとっては他にも候補があるうちの一つにすぎません。
相場を把握して適正な価格を
不動産は相場の2割ほど下げれば大抵の不動産は買い手が付くと言われております。
その為にはまずその相場を正しく知ることが大事です。
相場を知る方法はいくつかありますが、簡単に価格帯を知りたければ、不動産一括査定を利用すると良いでしょう。
簡易査定であれば、インターネット上でデータを入力していくだけで複数の不動産会社の査定額を知ることができます。
対面することもないので手間やその後のしがらみなども少なくてすみます。
しかし、売れない土地は地方のケースが多く、特に掲載社数が多いサイトでもその地域の査定に対応していない場合が多いです。


広すぎる土地は売れにくい
事業用の土地の場合などは広い土地の方が投資の効率が上がりますので、需要はありますが、個人で所有する場合にあまりにも土地が広すぎても使い道がありません。
戸建て住宅の敷地は全国平均で280㎡にすぎない為、それを超える土地は買主の手に余ってしまいます。
田舎では広くなるとしても400㎡までで、それを超えてくると買い手が制限されてしまいます。
他の地目でも買主にとっては広さが関係してくるので、分筆できれば買い手も現れるでしょう。
そのことを不動産会社に伝えておけば、間口が広くなりより関心を集められます。
土地の分筆時には接道義務に注意
『摂動義務』とは、建物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければ建物を建築してはいけないというものです。
土地が広すぎるからといってむやみに分筆しても建物を建てられない土地になってしまうため、分筆する際は注意が必要です。
なので、分筆する際は道路に接している面に対して垂直方向に区切らなければなりません。
水平方向に分筆すれば奥の土地は道路に面していない土地になり、建物が建てられません。

角地の分筆は評価額が下がる
角地なら水平方向や垂直方向に分筆しても2本の道路のどちらかに接していることになりますが、この2本の道路の路線価が異なる場合は注意が必要です。
分筆してできた2つの土地がどちらも路線価の高い道路に面するように分筆した場合、路線価の高い土地とその隣地ができます。
しかし、2つの土地が路線価の低い道路に面するように分筆をすれば、路線価の高い角地と、路線価の低い隣地ができます。
この土地を分筆しなければ、路線価の高い角地が一つとして存在しますが、分筆後の路線価の高い角地と、路線価の低い隣地の価格を足しても一筆の土地には及びません。
こうした方法は相続対策として評価額をわざと下げるために使われる方法でこれから土地を売却しようとしている人が使い方法ではありません。
角地の面積が広すぎる場合は仕方がありませんが、分筆をして価値が下がるのなら値下げをして一筆のまま購入してもらった方がお互いに利益が大きいはずです。

土地の管理がしっかりしているか
空き地はしばらく放置しているとすぐに雑草が生えてきてしまい除草作業などが必要になってきます。
また、人気のない空き地だった場合は、ごみの不法投棄などをされてしまい近所迷惑になったり、行政から撤去指導が入ったりします。
雑草が生い茂っているような管理のできていない土地は、買主から見れば間違いなく印象が悪くて、整地や整備にコストがかかると予想されます。
多少の雑草なら仕方ありませんが、地面が見えないぐらいまで雑草が生い茂っているような土地は売れません。
土地の近くに住んでいて、自分でしっかりと管理できているなら良いですが、遠隔位置に住んでいて管理が出来ていない土地もあります。
土地の管理は建物の管理と違って、年に数回の草刈り程度で、管理委託をしたとしてもコストはそんなに高くありません。
また、空き地に管理業者の名前の入った看板を立てるだけでも、私有地である事をアピールできますので一定の効果がみられます。

境界線の確認と測量
自分の土地と隣地の土地との境目は非常に重要で、この境界線が不明確なために隣地の住民とトラブルになるケースも少なくありません。
自分の土地と隣地との境を示す『境界標』には以下のような種類があります。
境界線に確定には土地家屋調査士に測量をしてもらうことで決定します。
また、隣地の所有者との境界の確認をして、全員から合意をもらう必要はあります。
こうして作成された図面を確定測量図と呼び、確定測量図が提出できる土地は、協会に関してのトラブルがないという証拠になるので買主の購買意欲を刺激します。
確定測量図の作成は売主の義務で、土地家屋調査士の報酬も安くはないです。
通常ですと数十万円から、広ければ100万円以上することも考えられますので、測量をお願いする前にはしっかりと報酬額の打ち合わせもしておくことをお勧めします。
物件資料に『境界線確認済』と一言入れるだけでも、買主の安心感が違いますので費用をかけてでも境界線の確認をしてみるのも良いでしょう。
また、登記上と実測の面積が異なることも良くある話ですから、地積更正登記によって登記簿を変更する場合にも役立ちます。

自ら買い手を探す
土地は高額なので親せきや知人などでもすぐに買ってくれる人を見つけるのは容易ではありません。それが特に必要のない土地ならなおさらです。
しかし、それでも土地を購入しても無駄にならない人がいます。
それは、隣地の住民で隣地の所有者からしてみれば、特に必要としていなくても自分の土地と繋がっているので邪魔になりませんし、土地が繋がるので境界を意識することもありません。
トラブルに発生するリスクが少ないので、買主として筆頭候補です。
しかし、隣地の住民は特に必要としていなければ、通常を相場で購入してもらう事は難しく、相場から大きく値下げをするか、諸費用を売主が負担するという気持ちで交渉してみましょう。
その他には、買取専門業者に買取をしてもらう方法があります。
買取業者の価格は安いので、値引きをした場合の価格と比較して利益の多い方を選びましょう。
損切りという考えを持つ
投資の世界では損切りという考えがあり、投資が回収できないとわかれば将来の損失を広げてしまう前に売却をして取引を終わらせてしまう事です。
敢えて損切りをする理由は、いつまでも売れない土地を所有している場合の損失を考え先に売却をしてしまおうという考えです。
売れない土地と損切りの必要性
売れない土地をいつまでも所有していると、資産として全く生かされていないばかりか、保有し続けることで発生するコストから少しずつ損失が広がってしまいます。
反対に、もしかすれば明日にも買主が現れて希望額で売れるかもしれませんし、地価が上がり含み益に転じる可能性もあります。
その判断は所有者次第ですが、損切りを実行して安値で売却し次の投資にチャレンジしていくのも立派な戦略です。
例えば、1000万円で売り出ししている土地を保有していて、固定資産税が毎年10万円だとすると、10年後に売れても900万円しか残りません。
ですが、今すぐ900万円で売却できれば10年後の状況は同じです。
更に800万円で売ると、10年後よりもさらに100万円損をしておりますが、800万円というお金が今すぐ手に入り、10年という期間で900万円以上に増やすためのチャンスを得ることができます。
中間利息控除と損切り
損切りをするのは自らで損失を出してしまうようで受け入れがたいかと思います。
そこで将来受け取るべきお金を今すぐに受け取ると仮定した場合、生じている利益を控除する考えがあり『中間利息控除』と呼びます。
中間利息控除は、特定の利率で複利運用した時の利息を控除します。
先ほどの例を挙げて説明すると、10年後の900万円をすぐに受け取った場合、552万円にしかなりません。
このようにすぐに土地を売却して552万円を受け取るのと、10年後に売却をして900万円を受け取るのでは同じ価値を持つという事になるのです。
ただし、中間利息控除に使われる法定利率は年5%で、これを10年間維持できる商品は限られております。
そこで利率を年1%として、中間利息控除すると900万円が814万円に減り、800万円までねさげをして損切りをしたつもりが、10年後の900万円で売れるのとかわらないと考えれば、損切りの有効性がわかってもらえると思います。
まとめ
不動産を売却するには不動産会社に任せていればうまくやってくれるとは限らず、任せても売れない場合は自分でも何か工夫をしなくては、事態は進展せず、税負担が積み重なっていくだけです。
値下げをしたり、費用をかけて売り出したりするのは悔しいですが、放置して損失を大きくしてしまうよりは良いので、売れないと判断したら値下げを検討してみましょう。
売れない原因はいくつか考えられるにしても、土地の場合は住宅建築以外にも需要があり、まったく価値のない土地ばかりではありません。
安く買いたいと考えている人が一定数いることは事実なので、価格を下げることにより購入を希望する人は現れるはずです。
損切りという考えでは現在生じている僅かな損失を軽視せずに、更にひどい状況に陥る前に手を打たなければなりません。
売れない土地をいつまでも高値で売ろうとせずに、思い切った行動で将来発生するであろう損失を未然に防いでいくことが大事です。

空き家隊長

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