相続した空き家不動産の売却 = 譲渡所得税で後悔しないための6つの知識

相続した空き家の売却 「譲渡所得税」で後悔しないための6つの知識

亡くなった親から相続した空き家と土地を売却して収入を得た場合、その所得に対してかかる税金を「譲渡所得税」といいます。

どのような空き家不動産をどのような条件で売却したかによりますが、時には非常に高額になりがちな課税所得税を、後から「もっと節税できたのに」と悔やまないためにも、譲渡所得税に関する最低限の知識実際の税額計算シミュレーションを、空き家不動産の売却前に自らしっかりと実施しておく必要があります。

譲渡所得税は税務署が厳しく監視していますので、仮に税の申告にミスがあると悪意がなくてもペナルティを課せられることがあります。

今回は空き家不動産を売却した際の「譲渡所得税の最低限知識」と「税額計算シミュレーション」について、6つの項目を切り分けてわかりやすく説明いたします。

この6項目をチェックしてもらえば、譲渡所得税の理解や計算方法だけでなく、空き家相続時の3,000万円特別控除の適用方法等の具体的な節税方法ペナルティ回避の両立が可能になってきます。

譲渡所得税とは…空き家不動産を売却した際にかかる税金のこと
特別控除とは…ここでは空き家対策特別措置法(空き家法)を活用して3000万円を所得から控除する方法をご説明いたします。

基本的な考え方として、空き家不動産(住宅)を買ったときのお金と売った時のお金を比べて、利益が出ていないなら譲渡所得税は支払う必要がありません。

ただし、利益が出ているかどうかの計算方法に各種ルールがあるので、そのルールに則る形で、利益有無の判断をしましょうというお話しです。




目次

譲渡所得税の知識1:4つの重要キーワードを抑え、実際の税額をシミュレーションする

譲渡所得税は一見すると複雑な制度に見えてしまいます。
税金の額が確定するまでに複数のルールが存在し、その1つひとつのルールに複数の例外が定められているからですが、噛み砕いて理解をすると実は案外単純です。

  1. 譲渡所得
  2. 譲渡収入
  3. 譲渡費用
  4. 取得費

という4つのキーワードのみを抑えれば、実際の空き家不動産売却に関する譲渡所得税のシミュレーションが可能になります。

これら4つの式は下記の形でこれから何度もでてきますので、ちょっと覚えておいてください。「譲渡所得税」を算出するために、その他3種のキーワードがあるという考え方になります。

譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

厳密にいうと、譲渡所得税は「所得税」と「住民税」に分かれるのですが、この説明は記事後半で詳しく説明します(所得税も住民税も、具体的金額を算出する際にはこの譲渡所得税を元に計算することになります)。

したがって、とりあえずは空き家売却時の税金を「譲渡所得税」という呼び方でひとくくりに考えて頂ければOKです。

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譲渡所得税の考え方は極めてシンプル

「譲渡所得税=空き家売却時の税金」は、一見複雑に見えるだけで、基本的考え方はとてもシンプルです。

空き家売却時の税金=空き家と土地を売って最終的に手元に残ったおカネ×税率

基本式はこれだけで、税金の額が算出できます。
したがって、空き家不動産を売却等しても「手元にお金が残らない場合」には譲渡所得税は不要ということになります。
まずは「いくら手元にお金が残ったのか」が重要です。

ただし「空き家と土地を売って最終的に手元に残ったおカネ」を正確に計算するには、いくつかのステップを踏む必要があります。

※「税率」だけでも複数種類があるので、注意です(後述)。

譲渡所得税の計算に必要なのは、先にふれた4つのキーワード

  1. 譲渡所得
  2. 譲渡収入
  3. 譲渡費用
  4. 取得費

ですが、それに加える形で「5.建物の減価償却」というキーワードもあります。
こちらは考え方が(いかにも税務署らしい考え方で)少々理解をするのに複雑な思考が必要ですので、後回しで考えることにいたします。

企業経営や不動産投資をやっている方ならば「減価償却」の概念はよくご存じかもしれませんが、一般的には、減価償却の概念はなかなか理解が複雑なものといえるでしょう。

1.譲渡所得を算出する式

空き家と土地を売って最終的に手元に残ったおカネのことを「譲渡所得」といいます。
この場合の「譲渡」とは空き家や土地を売るという意味です。
また「所得」とは空き家などを売った金額から、売るために使った費用を引いた金額です。

譲渡所得の出し方は、先に説明した次の計算式となります。

譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

この計算式には次のような意味があります。

譲渡所得(空き家不動産売却で最終的に手元に残ったお金)を算出するために、「相続した空き家などを売った金額(譲渡収入)」から「売るために使った費用(譲渡費用)」と「そもそもその空き家などを買ったときの費用(取得費)」を差し引く

この計算によって、空き家不動産所有者の手元に、不動産売却を通じて最後にいくら残ったかが分かります。こうして算出した譲渡所得に税率をかけることで、納めるべき譲渡所得税の金額を出すことができます

◆課税譲渡所得×税率=譲渡所得税

節税のための特別控除

しかし、できるだけ税金支払い額を少なくするためには、特別控除を計算に加える必要が出てきます。それは特定条件にあてはまる人のみに適用される「3,000万円特別控除」です。

この3,000万円特別控除を考慮した計算式はこのようになります。

◆課税譲渡所得=譲渡所得-3,000万円特別控除

譲渡所得にそのまま税率をかけるのではなく、先に譲渡所得から3,000万円を値引いて算出した「課税譲渡所得」に税率をかけましょう、ということです。

税額を下げる効果がある「3,000万円特別控除」の正式名は、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といい、節税対策上とても重要ですので別の章を使って適用条件などを詳しく解説します。

なお、譲渡所得も課税譲渡所得も、いずれも「分離課税」といい事業所得や給与所得とは別に計算する必要があります。

つまり、仮にあなたが自営業者だとして、事業で赤字が出た場合状態の時に空き家不動産を売却したとしても、譲渡所得税額が減額されることはありません。

分離課税とは「それはそれ、これはこれだから一緒に計算するな」という、我々納税者にとっては厳しい考え方であるといえるでしょう。

2.譲渡収入を算出する式

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

次は式の中から「譲渡収入」の出し方について見てみましょう。
譲渡収入は「空き家などを売った金額(買主が売主に支払ったおカネ)」と「固定資産税などの精算金」を足した金額です。

譲渡収入を計算式はこのようになります。

譲渡収入=空き家などの売却金額+固定資産税などの精算金

固定資産税などの精算金とは?

ここでの「固定資産税など」は、固定資産税都市計画税のことです。
いずれの「精算金」も同じルールで計算します。

空き家不動産トピックス|固定資産税とは?都市計画税とは?
固定資産税と都市計画税について 固定資産税とは、全ての固定資産と呼ばれるものにかかる市町村税で、毎年1月1日時点の所有者に対して課税さ...

固定資産税などは、その不動産を1月1日の時点で所有している人がその年の1年分の税金を納めなければならない、と法律で定められています。

ところが実際の不動産売買では習慣上、年の途中で空き家を売却した場合は売却した後の日数分の固定資産税などは買主が負担すべとされています

そこで実際の不動産売買では、買主が売主に対し「本来は買主が負担すべき固定資産税分の金額」を売主に渡すことになり、この金額のことを固定資産税などの精算と呼びます。

しかしこれはビジネス慣習にすぎず、税務署としては「あずかり知らぬこと」になります。
そして税務署は固定資産税の精算金についてはこのように考えます。

税務署
「本来は1月1日時点での所有者である売主が固定資産税などを負担しなければならないところ、不動産売買によって『買主の固定資産税分のおカネ』が売主にわたっているのだから、それも譲渡収入に含めなさい」

従って「譲渡収入=空き家などの売却金額+固定資産税などの精算金」という計算式がなりたってきます。

固定資産税の精算金とは、本来は買主が負担すべき固定資産税額を売主に手渡すことによるビジネス慣習の1つである。

出典

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3.譲渡費用として認められている項目

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

空き家や土地の売買は取引価格が高額になりがちな上に、行政機関や不動産会社などの中間業者等が商取引に深く関わってくるので手数料や税金が発生します。
こういった不動産売却に関わる経費を「譲渡費用」と呼びます。

譲渡費用として計上できる費用は次の通りに国税局で定められています。

  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 印紙税
  • 測量費用
  • 広告料
  • 抵当権抹消のための登記費用

譲渡所得税は、販売額から各種費用と控除額を差し引いた最終金額にかかる税金なので「譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費」という計算式で譲渡費用分を差し引きます。

譲渡費用は譲渡所得の額を小さくするので、譲渡所得税額を低くする節税効果があります。不動産会社に売買を依頼した場合の仲介手数料や、空き家の買手を募集するために新聞広告などを出したときの広告料も譲渡費用には含まれるので、算入を忘れないようにします。

出典

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4.取得費として認められている項目

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

ここまで何度も出ている上記の課税所得計算式の4つ目「取得費」ですが、これはその空き家不動産を買ったときの費用となります。

空き家相続のケースで、亡くなった親(=被相続人)から空き家不動産を相続した場合の取得費は、被相続人である両親がその住宅などを買ったときの費用となります。

当然ですが、取得費も譲渡所得税額を低くする節税効果があります。

取得費に計上する項目は次の通りです

※これまでに建屋を増改築していたとしたら、その費用も取得費に含まれます。
※ただし取得費は亡くなった親が住宅を取得したときに発生するので、以下では「空き家」ではなく「住宅」と呼びます。
取得費として認められる項目例
  • 対象となっている住宅などを購入したときの代金、建築代金、購入手数料
  • 住宅を建てるときに行った土地の埋め立てや地ならしなどの造成費用
  • 土地を取得したときに支払った土地の測量費
  • 住宅などを購入したときの登録免許税、登記費用、不動産取得税、特別土地保有税、印紙税
  • 住宅を増改築したときの改良費
  • 住宅などを訴訟を経て取得したときの訴訟費用
    (ただし、相続財産の遺産分割のために争った訴訟費用は計上できない)
  • 住宅などに借主がいたときは、借主を立ち退かせた立ち退き料

つまり取得費とは、住宅と土地を取得するためにかけた「一切の費用」といえます。

出典

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譲渡所得の計算シミュレーション

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

ここまでで、上記式のキーワード4つ全てを使って、実際の譲渡所得の額を算出シミュレーションできるようになりました。
では下記の条件下で、譲渡所得額を算出してみましょう。

・亡くなった親が3,000万円で買った住宅と土地を、1人の子供が相続し、その後に空き家と土地を4,000万円で売ったとします。
・親が住宅と土地を買ったときに、諸費用が110万円発生しています。
・子供が空き家と土地を売ったときの諸費用は120万円でした。

この場合の譲渡所得は770万円になります。
状況条件から各要素は次の通りとなります。

Step1:譲渡収入の計算

譲渡収入:4,000万円

Step2:譲渡費用の計算

譲渡費用:▲120万円

Step3:取得費の計算

取得費(3,000万円+110万円):▲3,110万円

Step4:譲渡所得の計算

4000万円(譲渡収入)-120万円(譲渡費用)-3110万円(取得費)=770万円(課税所得)

以上から譲渡所得の額は770万円となることがわかりました。

さて、ここまでで「譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費」の内訳と算出方法を説明したことになるのですが、実は「取得費」の中に「減価償却」という、とても難しい概念が含まれています。

国税庁は「取得費」について「建物の取得費は購入代金と建築代金の合計額から減価償却費を引いた金額となる」と解説しています。

この少々ややこしい「減価償却」についてを次の章で見ていきます。

出典

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譲渡所得税の知識2:建物の減価償却について

これまで何度も出てきた

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

の譲渡所得算出の計算式ですが、これだけ見ると次の疑問がわきます。

あなた
「両親が4,000万円で買った住宅と土地を相続し、それを売った売却代金が2,000万円だったら、譲渡所得はマイナスになるのではないですか?」

本来ならば譲渡所得がマイナスになれば、譲渡所得税は発生しません。
しかし、ところが簡単にそのようにはならないルールが「減価償却」です。

減価償却とは「買ったときは4,000万円の価値があった住宅と土地でも、住宅は年数が経てば価値が減るので、取得費のうち住宅分については『価値が減った状態の金額』を計上する」というルールです。

上記で「減った価値の金額」を減価償却相当額といいます。
土地は「年数による価値の減り」が起きないので、減価償却しませんが、建物に関しては減価償却対象になるので、物件が古くなればなるほど、その建物価値は基本的に減少していくと考えてよいでしょう。

いわば「価値の経年劣化」に近い概念です。

その経年劣化によって、住宅価値が減れば減るほど取得費の金額が小さくなってしまいます。その結果、譲渡所得は増えてしまうので、譲渡所得税額が大きくなるのです。

慣れていないと混乱してしまいがちな話ですが、かいつまんで結果から言いますと、減価償却には税額を押し上げる効果があるということを、頭の片隅に入れておいてください。

減価償却における「耐用年数」「償却率」「経過年数」

正確な減価償却を不動産の素人が出すのは少々ややこしいかもしれませんが(計算方法が複数パターンあります)、せっかくですから可能なところまで減価償却の計算方法を書いておきます(※定額法による計算)。

そもそも減価償却の計算の目的は、空き家の価値がいくら減ったかを現在の価値で算出することです。

計算式は

◆減価償却費=住宅の取得費×0.9×耐用年数の1.5倍の償却率×経過年数

となります。
この式もそれぞれの項目ごとに分解して見てみましょう。

Step1:住宅の取得費

上記式のうち「住宅の取得費」は、おおまかに「被相続人などが住宅を買ったとき当時の値段」ととらえてください。

Step2:0.9の意味

上記式のうち「×0.9」は減価償却計算の際に法律で定められた固定数値となります。

Step3:耐用年数と償却率

上記式のうち「耐用年数の1.5倍の償却率」は「耐用年数」「1.5倍」「償却率」に分けて見ていきましょう。

耐用年数

耐用年数とは「その建物が何年で使い物にならなくなるか(=何年で価値がなくなるか)」という「国が定めた想定上の基準数字」です。

例えば、法律では木造住宅の耐用年数は22年と定めています。
つまり国は「木造住宅は22年も経てば住宅の価値がほぼなくなる」と考えているのです。

しかし現実的には22年目以降も人が住み続けることはできますし、実際に築100年の古民家に住んでいる人もいるわけです。
それで耐用年数は「税計算目的で想定された数字」なのです。

建物の耐用年数
構造・用途 細目 耐用年数
木造・合成樹脂造のもの 事務所用のもの 24年
店舗用・住宅用のもの 22年
飲食店用のもの 20年
旅館・ホテル・病院・車庫用のもの 17年
公衆浴場用のもの 12年
工場・倉庫用のもの 15年
木骨モルタル造のもの 事務所用のもの 22年
店舗用・住宅用のもの 20年
飲食店用のもの 19年
旅館・ホテル・病院・車庫用のもの 15年
公衆浴場用のもの 11年
工場・倉庫用のもの 14年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの 事務所用のもの 50年
住宅用のもの 47年
飲食店用のもの(延面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%超の場合) 34年
飲食店用のもの(その他) 41年
旅館・ホテル用のもの(延面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%超の場合) 31年
旅館・ホテル用のもの(その他) 39年
店舗・病院用のもの 39年
車庫用のもの 38年
公衆浴場用のもの 31年
工場・倉庫用のもの 38年
れんが造・石造・ブロック造のもの 事務所用のもの 41年
店舗・住宅・飲食店用のもの 38年
旅館・ホテル・病院用のもの 36年
車庫用のもの 34年
公衆浴場用のもの 30年
工場・倉庫用のもの 34年
金属造のもの 事務所用(骨格材肉厚 4㎜超) 38年
事務所用(骨格材肉厚 3㎜超、4㎜以下) 30年
事務所用(骨格材肉厚 3㎜以下) 22年
店舗・住宅用(骨格材肉厚 4㎜超) 34年
店舗・住宅用(骨格材肉厚 3㎜超、4㎜以下) 27年
店舗・住宅用(骨格材肉厚 3㎜以下) 19年
飲食店・車庫用(骨格材肉厚 4㎜超) 31年
飲食店・車庫用(骨格材肉厚 3㎜超、4㎜以下) 25年
飲食店・車庫用(骨格材肉厚 3㎜以下) 19年
旅館・ホテル・病院用(骨格材肉厚 4㎜超) 29年
旅館・ホテル・病院用(骨格材肉厚 3㎜超、4㎜以下) 24年
旅館・ホテル・病院用(骨格材肉厚 3㎜以下) 17年
公衆浴場用(骨格材肉厚 4㎜超) 27年
公衆浴場用(骨格材肉厚 3㎜超、4㎜以下) 19年
公衆浴場用(骨格材肉厚 3㎜以下) 15年
工場・倉庫用(骨格材肉厚 4㎜超) 31年
工場・倉庫用(骨格材肉厚 3㎜超、4㎜以下) 24年
工場・倉庫用(骨格材肉厚 3㎜以下) 17年

その他、建物だけでなく付属物(アーケードや日よけ、電気設備等)にも材質によって細かく耐用年数が定められています。
それにしても耐用年数表を見てみると、同じ鉄骨造りの住宅でも骨格材の太さによって、建物の寿命(耐用年数)が2倍近く異なる(と仮定)されていることに驚きますね。

出典

耐用年数表
1.5倍

次の「1.5倍」ですが、これも法律で定めたものです。
非事業用の建物の減価償却計算の際に定められた数値です。

償却率

最後の「償却率」は1年間に物件の価値が減る率です。
建物の構造別に以上の内容を簡単に表にするとこうなります。

建物の構造 耐用年数の1.5倍 償却率
木造 33年(22年×1.5) 0.031
軽量鉄骨 40年 0.025
鉄筋コンクリート造 70年 0.015
Step4:減価償却の計算シミュレーション

◆減価償却費=住宅の取得費×0.9×耐用年数の1.5倍の償却率×経過年数

それでは上記の減価償却費を求める公式(※定額法)を用いて、相続した空き家の取得費が2,000万円で、建築から15年が経過した場合、どれくらい価値が減ったことになるかを計算シミュレーションしてみましょう。

この場合の計算式は、

2,000万円(住宅取得費)×0.9(定数)×0.031(償却率)×15年(経過年数)=837万円(減価償却費)

したがって、この住宅は15年の間に837万円分の価値が減価償却費として失われたことになります。

つまり、

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

のうちの「取得費」に計上する「対象となっている住宅を購入したときの代金」は、2,000万円ではなく、2,000万円から減価償却相当額837万円を差し引いた1,163万円となります。

例外編1:購入金額不明な場合「取得費」をどう算出する?

相続した空き家がかなり古い場合、購入したときの金額が分からない場合があります。
それでは「取得費」が正しく算出できません。

住宅の取得費が不明な場合は「譲渡収入の5%を取得費とみなす」というルールがあります。
相続した空き家の売却代金が5000万円だった場合、取得費は250万円となります。

例外編2:実際の取得費と比較して有利な方を選んでもよい

更に、上記の売却価格5%を取得費と換算する方法と、本来の売却価格から取得費を計上する方法を相互比較して、どちらか有利な方を選んでもよいことになっています。

譲渡所得税の知識3:相続した空き家不動産の売却には「3,000万円特別控除」適用で税金が安くなる

亡くなった親から相続した空き家や土地を売って収入が発生しても、譲渡所得税が大幅に減税されることで、空き家物件を売りやすくなる特例税制が誕生しました。

条件としてまずは下記に当てはまることが必要です。

  1. 親(被相続人)が生前にその住宅に一人で住んでいた
  2. 相続した人がその空き家と土地を2016年4月1日から2019年12月31日までの間に売る
  3. その譲渡収入が3,000万円以下であること
  4. なおかつ「さらなる条件(※後述)」に当てはまる場合

この制度の正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、略称は「3,000万円特別控除」と呼ばれます。

この制度は相続した不動産の売却においてとても大切な話になってきますので、上記の「さらなる条件」を含め詳しくお伝えします。

3,000万円特別控除の仕組み

3,000万円特別控除の基本構造は、

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

の公式において、更に特別控除分3,000万円を引き算したものになります。

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費-3,000万円

この計算式ですと「譲渡収入が3,000万円以下だと譲渡所得がマイナスになり譲渡所得税が発生しない」という理屈が理解しやすいと思います。

3,000万円特別控除を受ける条件

3,000万円特別控除は税額に与える効果が大きいだけに、適用される条件が少々厳しくなっています。
まずは次の項目にすべてあてはまらなければなりません。

1.まずは下記10項目をクリアすること

  1. あなたはその空き家と土地の前所有者の相続人である
    (「前所有者」とは、例えば亡くなった親のことです。被相続人ともいいます)
  2. あなたはその空き家と土地の両方を相続した
  3. あなたがこの3,000万円特別控除制度を利用するのは初めてである
  4. その空き家は1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された
  5. その空き家はマンションなどの区分所有登記された建物ではない
  6. その空き家は被相続人が住まいとして利用していた
  7. 被相続人は相続の直前までその住宅に1人で住んでいた。被相続人と同居している人はいなかった
  8. その空き家と土地の譲渡先は第三者であり、配偶者や親族ではない
  9. その空き家と土地の譲渡は2016年4月1日以降2019年12月31日までに行われた
  10. その空き家と土地の売却価格は1億円以下である

これをすべてクリアするだけでも相当難しいのですが、「条件」はまだあります。

2.誰も空き家に住んではいけない

空き家と土地の相続を受けた日から売却するまでの間に、誰かがその空き家に誰かが住んでしまうと、3,000万円特別控除は受けられません。
誰かに貸すだけでなく、相続人が住んでも対象から外れてしまいます。

空き家と土地を相続した後にその空き家を取り壊してしまっただけなら、3,000万円特別控除の対象からは外れずにすむのですが、相続後から取り壊すまでにその空き家に誰かが住んでいたり、更地になった土地を駐車場などに使用してしまった場合は、対象から外れてしまいまうという条件がもうけられています。

また、3,000万円特別控除の対象になるには、その空き家を耐震基準に適合させなければなりません(更地にして売却をする場合は除きます)。

出典

国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁

http://www.nta.go.jp/tokyo/topics/check/h28/pdf/13.pdf

3.亡くなった親が老人ホームに入居していたら適用外

最後の壁は、「老人ホーム」です。
先の10項目の表の中に次の項目がありました。

  • その空き家は被相続人が住まいとして利用していた
  • 被相続人は相続の直前までその住宅に1人で住んでいた

この条件があるため、被相続人が亡くなる前に老人ホームなどの介護施設に移っていて、そのまま自宅に戻らず亡くなられた場合、3,000万円特別控除の対象から外れてしまいます。
非常に厳しい条件ですが、控除額が大きいゆえに止むかたないのかもしれません。

3,000特別控除の申請に必要な書類

3,000万円特別控除の適用を受けるためには税務署に申請する必要があります。
そのとき用意する書類は以下の通りです。

  • 譲渡所得金額が分かる書類
  • 売買契約書のコピー
  • 売却した空き家と土地の登記事項証明書
  • その空き家にかつて被相続人が1人で住んでいたことを示す「被相続人居住家屋等確認書」
  • 空き家の「住設住宅性能評価書」または「耐震基準適合証明書」のコピー
住宅性能評価書って何? | 住まいのお役立ち情報【LIFULL HOME'S】
皆さんは設計・建設住宅性能評価書の付いている物件情報を見たことがありませんか?そもそも、この【住宅性能評価書】って何なのでしょう? 今回の知って得する、不動産知識で【住宅性能評価書】について勉強しましょう! | 住まいのお役立ち情報【LIFULL HOME'S】
耐震適合証明書|日本木造住宅耐震補強事業者協同組合
耐震適合証明書|耐震診断および耐震補強を推進する木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)は、全国1,000社以上の組合員を持つ日本最大のリフォーム団体です。国土交通省の住宅リフォーム事業者団体として登録されており、木造住宅の耐震性向上を目指して活動しています。

上記のうち「被相続人居住家屋等確認書」なのですが、これは相続後確定申告の際に添付が義務付けられています。
被相続人=親が1人で空き家にかつて住んでおり、譲渡までの間は誰も居住していない空き家のままだったことを証明する書類です。

この確認書を申請する際は、下記のような所定用紙への記入に加えて、空き家の使用状況がわかる写真を時系列に並べて行政窓口に提出しなければなりません。
例えば、建屋は解体済である場合など、解体から譲渡までにいたる写真もきっちりと保存しておかないと、控除を受けることができなくなってしまうので注意してください。

被相続人居住家屋等確認書の例(埼玉県三郷市ウェブサイトより)

被相続人居住家屋等確認書の例(埼玉県三郷市ウェブサイトより)

譲渡所得税の知識4:最終的な譲渡所得税額の算出

ここまでくれば、かなりゴールに近づいてきました。

これまで、基本的な公式である

◆空き家売却時の税金=空き家と土地を売って最終的に手元に残ったおカネ×税率

のうち、「空き家と土地を売って最終的に手元に残ったおカネ」を算出するための各要素をそれぞれ分解して見てきました。

次は上記式の「税率」についてみてみます。

譲渡所得税を「所得税」と「住民税」に分けて考える

これまで便宜上「譲渡所得税」という用語を使ってきましたが、実は譲渡所得税は「所得税」と「住民税」に分かれるという点に記事冒頭でも触れました。
住民税はさらに、都道府県民税市区町村民税に分かれます。

ここでは次のように理解しておけばよいでしょう。

  • 所得税:国に納める所得税
  • 住民税:都道府県と市町村に納める所得税(「市民税」「県民税」とも呼ばれる)

2つの税は、それぞれ納める先が違うということです。

所得税も住民税も所得にかかる税金ですので、合わせて譲渡所得税と呼ばれています。
しかし「税率」は所得税と住民税で異なってくるので、ここで譲渡所得税を所得税と住民税に分離して考えなければならないのです。

さらに細かいルールを説明すると2037年まで所得税に復興特別所得税が加わるのですが、この税の税率は小さいので、ここでは復興特別所得税の詳細説明は割愛します。

復興特別所得税額=所得税×2.1%

復興特別所得税とは

平成25年分の所得税から適用される復興特別所得税が創設されました。平成23年12月2日に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布され、「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」が創設されました。

出典

個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁

税率は不動産物件の「短期所有」と「長期所有」で異なる

所得税と住民税の税率は、さらに「短期所有の場合(5年以内の所有)」「長期所有の場合(5年超の所有)」に分かれます。
短期・長期とは、不動産の所有期間のことです。

短期所有の税率が高いのは、いわゆる「土地転がし」をしている人には多くの税金を納めてもらおう、という狙いがあるからです。

相続においては、被相続人が所有した期間と相続人が所有した期間を合算しますので、亡くなった親が5年超所有していたら、相続人が相続直後に売却しても「長期扱い」となります。

税率は以下の通りです。

所得税(A) 住民税(B) 譲渡所得税(A+B)
短期所有の税率 30% 9% 39%
長期所有の税率 15% 5% 20%

つまり空き家不動産を売って得た譲渡所得に39%か20%のいずれかの税率をかけた金額が、あなたが支払うべき譲渡所得税額となるのです。

出典

国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁

売却対象が空き家不動産ではなく、主に居住を目的とした家(つまりマイホーム)の場合は、10年以上所有した場合に更に税率軽減措置を受けられる可能性があります。

国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁

閑話休題:ここでいったん計算式のおさらいと整理

さて、税率が出たところで、面倒な計算は終了しました。
そこで、「知識5」に進む前に、これまで出てきた計算式をおさらいしてみます。

◆空き家売却時の税金=空き家と土地を売って最終的に手元に残ったおカネ×税率

最初に登場したのがこの計算式でした。
この計算式が意味するのは、手元に残ったおカネには税金がかかる、ということです。
そして税率は、所得税、住民税、短期所有、長期所有に分かれるのでした。

◆空き家と土地を売って最終的に手元に残ったおカネ=譲渡所得

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費

空き家と土地を売って得たおカネのことを譲渡収入といいます。
譲渡収入がそのまま手元に残るわけではありませんので、このまま税率をかけるわけにはいきません。

そこで譲渡費用や取得費を差し引き、税金の対象額となる譲渡所得を算出しました。

◆取得費には住宅の取得費が含まれる

◆減価償却相当額=住宅の取得費×0.9×耐用年数の1.5倍の償却率×経過年数

取得費の金額の算出が複雑になるのは「住宅は年数とともに価値が目減りしていく」という減価償却の考えがあるからでした。

◆譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費-3,000万円特別控除

極めて例外にはなるのですが、譲渡収入が大幅に減る制度があります。
それが3,000万円特別控除でした。

計算事例:譲渡所得が300万円だったとしたら税額は?

このように算出した譲渡所得の額が300万円だったと仮定して、具体的な税額をそれぞれ算出してみましょう(物件の長期保有と短期保有それぞれの税率を計算してみます)。

物件短期保有のケース
  1. 所得税:300万円×30%=90万円
  2. 住民税:300万円×9%=27万円
  3. 復興特別所得税:90万円×2.1%=1万8900円
  4. 合計:118万8,900円
物件長期保有のケース
  1. 所得税:300万円×15%=45万円
  2. 住民税:300万円×5%=15万円
  3. 復興特別所得税:45万円×2.1%=9,450円
  4. 合計:60万9,450円
物件保有期間 所得税 住民税 復興特別所得税 合計税額
短期保有
(5年以下)
900,000円 270,000円 18,900円 1,188,900円
長期保有
(5年超)
450,000円 150,000円 9,450円 609,450円

これで最終的に空き家不動産を売却した際に収める税額がわかったわけです。
次は具体的な納税のプロセスに移っていきましょう。

譲渡所得税の知識5:譲渡所得の申告の仕方

それでは実際の譲渡所得税納付方法を見てみます。
譲渡所得税を納付するには、譲渡所得の確定申告を行わなければなりません。

確定申告の具体的な方法

確定申告を行う期間は、空き家などの譲渡をした翌年の2月16日から3月15日までです。
確定申告は3月15日までに譲渡所得を確定させ、自宅のパソコンで用紙をダウンロードして必要事項を記入し、それを税務署に持参します。

譲渡所得税の確定申告で使う用紙は

  1. 確定申告書B第一表
  2. 同第二表
  3. 同第三表
  4. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

となっています。
これらの用紙に、これまで見てきた内容や算出した数字を記載していけばよいのです。

実際の申告書Bの第一表

実際の申告書Bの第一表

譲渡所得税は他の所得(給与、雑所得等)と合算してはいけない

税務用語でいうと、譲渡所得税は「分離申告制」という形をとっているために、給料や投資で得た利益、その他臨時収入等(雑所得)とごちゃまぜにして計算をすることはできません。

したがって、例えば個人的なビジネスをやっている方が大きく損失を出してしまったからと言って、不動産売却の譲渡所得税の支払額と、個人ビジネスの損失額を相殺するということは不可能です。

損得を相殺して良い対象は、同じ年に取り扱った別途不動産の譲渡所得となります。

譲渡所得税の知識6:確定申告は「うっかり忘れていた」で許されない

いよいよ最後になりました。
しかし、もしかしたらこの章が最も重要かもしれません。
譲渡所得税はしっかり納めないと大きなペナルティを受けます。

「納税国民の義務」これは誰もが知っていることです。

しかし譲渡所得税の計算をすると、空き家などの売却で得たおカネが減っていく様子がリアルに感じられるわけです。

「こんなに支払わなければならないのかあ」と愕然とすることでしょう。

しかし悪い誘惑に負けてはいけません。
税務署は「譲渡所得の不正申告の手口」を熟知していますし、もしそれが発覚すれば大きなペナルティが待っています。

納税額が増えてしまうペナルティ

譲渡所得税が恐いのは、申告制であることです。
申告しなくても、しばらくは何の音沙汰もありませんし、誰からも申告は促されません。
脱税した人はこのとき、「正直に申告しなくてよかった」と思うでしょう。

しかし1年後や2年後に、税務署からある通知が届きます。

「税務調査を行います」という内容です。

延滞税7.3%~14.6%

この通知が届かなくても、税を納める期日までに納めなかったら、毎日「延滞税」がかかります。本来納める税に「実質上の利子」が付くのです。

2カ月以内の延滞なら7.3%、それを超えると一気に14.6%に延滞税は跳ね上がります。

加算税 最大20%、重加算税 最大50%

そして税務調査の通知が来てから申告すると「延滞税とは別に」さらに加算税が課せられることになります。
加算税は最大20%にもなります。

そしてもし税の未納について隠蔽や虚偽といった相当の悪意があれば、重加算税が課せられます。そうなると最大50%増しになります。

つまり本来の税額が100万円だとしたら、総額150万円を支払わないとならないのです。

確定申告後の税金納付タイミングは?

確定申告後は税金を納付することになりますが、先に所得税と復興税を納付した後、住民税は遅れて5月に納付書が自宅に届きますので、その際に別途納付するという形になります。

税金の種類 納付時期
・所得税
・復興特別所得税
確定申告と同時に納付(物件売却翌年の2月16日~3月15日)
・住民税 確定申告後の5月に納付通知が到着する(支払いは6月、8月、10月、翌年1月末に分納)
住民税は、4期に分かれて分納することができます。
それぞれの支払い時期と期限は下記のようになっています(平成29年度)。

  • 第1期:6月30日まで
  • 第2期:8月31日まで
  • 第3期:10月30日まで
  • 第4期:翌年1月31日まで

住民税の支払い通知書例
※住民税の支払通知書例

まとめ:譲渡所得税は正しく計算して、早め早めの納税を済ませることが最も正しい節税となる

譲渡所得税を計算すればするほど、空き家や土地の相続の「ありがたさ」が減るような気持ちになって、滅入ってしまうかもしれません。

しかし、空き家不動産の相続において譲渡所得税は、相続税と同様に避けては通れない道なのですから、正しい計算方法に基づいてしっかりと対応したいものです。

そして何より3,000万円特別控除などの存在を忘れないことが節税のポイントになるのですが、最も重要なのは早め早めの納税を心掛けることです。
これにより、延滞税や加算税といった無用な納税を避けることができますし、何より、税務署は納税意識がある人に対しては、難しい控除関連の手続きも手取り足取り教えてくれます。

結局は納税意識が高い人ほど、最終的には支払う税金が少なくて済むというオチになるのは、不動産売却だけでなく、すべての税金対策に共通したロジックなのだと思います。

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空き家隊長

空き家隊長

実家の相続をきっかけに空き家問題に直面。すったもんだの末に何とか売り抜ける。その際に経験したこと、様々な外部のプロに教えて頂いた空き家問題、土地活用問題について記事にしていきます。
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